集会の宿題(2)
「形式卒業」という言葉を、久しぶりに見たのは、2冊の本でした。
「これからの日本、これから教育」と、「セーラー服の歌人 鳥居」の2冊。
鳥居さんは、母親の自殺、養護施設での虐待などのため、義務教育をまともに受けることができませんでした。
母親の自殺も大変な体験だが、それ以上に、その「子ども」をちゃんと受け止めない養護施設が私にはショックでした。
彼女は、養護施設でいじめられないために、自ら精神病院に入院し、その後、不登校が治っていないという理由で、施設は彼女の受け入れを拒否します。
その後、定時制高校に通ったが、「どの科目も、ひたすら丸暗記して、テストの点数を稼いだ」だけで、「それまで小中学校の勉強をろくにしてこなかったために、どの教科も体系立てては理解していない、…わかっていない、というむなしさ」を感じていたという。
祖母の介護のため、定時制を中退。
「施設から出たばかりで何も知らない、まだ16歳の自分を気にかけてくれる人は誰もいませんでした。」
彼女は言います。
「私は小学校“中退”者。義務教育から学びなおしたい」
しかし、彼女は中学校を「卒業」しているため、「夜間中学」に入学できないことを知ります。
「この問題をもっと多くの人に知ってほしい。…自分にできることを必死に考え抜いた結果、鳥居が手にしたのがセーラー服でした。」
セーラー服を大人になっても着続けること、そこには「形式卒業者にも、義務教育を学び直すことのできる社会を」という思いが込められています。
「2015年7月。文部科学省は、形式卒業者も夜間中学校へ入学できるようにするよう、全国の都道府県教育委員会に通知を出しました。」
この時、文部科学省で話を進めたのも、前川さんだったようです。
(つづく)
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《おまけ》
鳥居さんの歌集から、大好きな歌を紹介します。
◇
大きく手を振れば大きく振り返す母が見えなくなる曲がり角
帰る家失くして歩く通学路 絵具セットはカタカタ揺れて
爪のないゆびを庇って耐える夜 「私に眠りを、絵本の夢を」
休日は薬を飲まず過ごしてみるこんなに細い心をしていたか
手を繋ぎ二人入った日の傘を母は私に残してくれた
日曜日パパが絵本を読んでいる子供のとなり我も聴き入る
目を伏せて空へのびゆくキリンの子 月の光はかあさんのいろ
「キリンの子」より