《伊織くんと栞音さんとあーちゃんさきちゃんが教えてくれたこと》(その2)
《伊織くん》
《面接官の先生は、…伊織にわかる言葉を選んで質問ではなく、会話をしてくれたそうです。
それが嬉しかったのか、会話の流れをみて写真を選び、それを先生に見せることでまた会話が生まれる。面接が終わったあと、自分から先生たちにペコっと頭を下げて、『あぎがとおー(ありがとう)』と言ったそうです。》
《栞音さん》
《本人も寝ないように、おでこを上に引っ張って、まぶたを必死に開けようとしたり、目をこすりまくって・・・そこから県教委の方たちに変化が・・・栞音さんに「起こしてくれる人がいてよかったですね。」「どこの子も一緒ですよ。勉強は眠くなりますね。」「集中してるし、文字書くの疲れますもんね。」「75分間、自分たちでもしんどいですよ。頑張りましたね。」と。
2日目 。問題を見てじーっと考えてる栞音さんを見て県教委の方たちもじっと待つ。その空間は「わからないんだろうな」ではなく「考えてるんだな」でした。だから栞音さんも安心して、時間を使える。しっかり考えられる。…2日間が終了…栞音さんが県教委の方のネクタイをグイッと持ち、全力で振る!「ありがとうございました」と。》
27名募集に受検生1人で「定員内不合格」でも、栞音さんはいう。
「よかった ひつだん できて」
「じぶんのこたえ かけた」
「やりきった」
「くやしくない」。
それから数日後。
《佐藤さん。 栞音。2次を受けるんだって。もう、受けないのかと思ってたら。。。親心でなんで、また傷つけられにいかなきゃいけないのかなぁって思っていて、それも本人には伝えた上で、受けるんだって。》
《さきちゃん》
定員内不合格にされた後の高校との話し合いの場。
「高校でももっと勉強したいなと思いました。」
「もっと勉強して、高校生活がんばりたいと持っているので…。」
「中学がんばったので、高校でも勉強がんばりたいと思います。」
「家庭科も自分でがんばろうかなと思います。」
でも、3度目の定員内不合格の後、校長との話し合いには参加しなかった。学校の中にも入らず、車の中で待った。
そして4度目の受検へ。
《あーちゃん》
2年前、あーちゃんの気持ちは一度折れかけた。
「私、留守番してます。私、諦めたからお家で待ってる」。
《家に帰って末娘にも結果を伝えました。コタツに顔を伏せて泣いてしまいました。今年も定員はたっぷりと空いていました。》
あーちゃんは9月までふさぎ込んでいました。
《あれから5か月。末娘が「お母さん、受検する!?」と言い出した。「もちろん するよ」。そう答えると、鉛筆とノートと国語の辞書をもって、机に向かい始めました。》
今年。
《…期待せずにけど祈るような気持ちで臨みますが、何度この瞬間を迎えても慣れませんね。
こんなに定員が空いているのに…ポツンと娘の番号だけがない。
社会から切り捨てられた孤独感を感じますね。悔しいです。
帰り道、「今回もダメだったね」と伝えた後も「わたし、学校通いたい」という娘。
来年も挑戦決定です。》
「わたし、学校通いたい」とこれほど強く、確かに、思い続ける子どもが、「定員内不合格」にされ続ける年月。
私たちの社会は、入試という制度で、子どもたちに何をしているのだろう。