「その島の人たちは、ひとの話をきかない」(その3)
《意思決定を子ども任せにしない》
意思決定を子どもまかせにしない。
それは、子どもだから自分で決められない、というのではない。
どこまで自分に決める権限があるかを、知らない子どももいる。
何一つ自分で決められない人生を歩いてきた子どももいる。
いや、虐待された子とは、「自分のことを自分で決める」ことを極端に制限された子どもだったりする。
その他、貧困や様々な事情で家族と離れて暮らさざるを得ない環境にいた子どもも同じだ。
虐待された子は、児童相談所やシェルターで助けられた直後、それまで以上に、「自分のことを自分で決める」ことを制限される。
「あなたを保護するため」にという理由で、警察と裁判所と児童相談所と巨大な組織が、ひとりの小さな子どもの自由を制限する。
…仕方ない事情は、ある。
でも、子どもの側から見たときに、それは事実だ。
暴力からは助けられた。
監禁や支配や空腹からは助けられた。
でも、「自分のことを自分で決める」は叶わないままだ。
それを、どう折り合わせるか。
それが、本人のひとつの課題であり、ホームNの課題のひとつだ。
そんなことを考えさせてくれた原文はこちら。
◇
「意思決定を相手任せにしない」
意思決定を相手まかせにしない。
本気で助けようと思うからすばらしい計画を立てる。
そういう態度を支援を受ける側も感じるから、「あんたの言う通りでいいよ」となる。
あまり支援になれていない支援者は、「どうしますか?」と聞いてしまう。
もちろん聞かなければならないことが多いのだが、どうしますか?と聞かれると、支援を受ける側は躊躇してしまう。
現実で気には助けが必要なのだが、相手に迷惑をかけてまで助かりたいとは思わない。
迷惑なのかどうかをいつも考えてしまう。
支援を受けることは正当なことだとどうどうと伝えなければならない。
互いに助け合うのが当たり前なのだとどうどうと伝えなければならない。
それでも嫌だというのならば、それは本人の本物の意思だ。
駆け引きのない意思とわかる。そうしたらまた別のことを考えたらいい。
対話を続けるのである。
(「その島のひとたちは、ひとの話をきかない」森川すいめい 青土社)
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