ワニなつノート

新・向かい合うもの (その1)


新・向かい合うもの (その1)


《 君のペースで 》

…彼女が回復するためにはその支配が必要なのだ、
私にはそれがわかりはじめた。

けっきょく、完全に自分ではどうすることもできなくなり、
無力感を感じるというのが、トラウマ体験の要素の一つだ。

だから、トラウマになるようなストレス(※特別支援)に
対処するには、自分でコントロールできるという感覚を
取り戻すことも重要なのだ。

これはかつて「学習性無力感」という
現象の研究で鮮やかに示されている。

   □    □    □

【2匹のラット】


2匹のラットが、隣あった別のケージにいる。

一方のケージでは、ラットが餌を得るためにレバーを押すと、
まず電気ショックが走る。

もちろんラットにとってとてもストレスになるが、
時間を経るにつれ、ショックの後に餌が手に入ることを理解し、
慣れて耐性ができる。

ラットは電気ショックを受けるのは、
レバーを押すときだけだとわかったので、
状況をある程度、自分でコントロールできるようになったのだ。

予測できてコントロールできるストレス源には、
時間が経つにつれて耐性が増すので、
それほどストレスを感じなくなる。


けれど、もう片方のケージでは、
餌をもらう仕組みは同じだが、電気ショックをうけるのは、
自分がレバーを押したときではなく、
隣のラットがレバーを押したときになっている。

つまり、いつ電気ショックを受けるかわからないので、
状況をコントロールすることができない。

(このラットは、ストレスに慣れるのではなく、感作される。)

どちらのラットも脳のストレスシステムに
大きな変化が見られる。

ストレスをコントロールできるようになったラットには、
有益な変化がおこり、
もう片方のラットには
有害な変化と調整障害が起こる。

電気ショックをコントロールできないラットたちは
潰瘍ができ、体重が減り、免疫系が弱るので、
病気にかかりやすくなる。


悲しいことに、
状況が変わってショックをコントロールできるようになっても、
長い間コントロールできない状況に置かれていたラットは
怯えすぎて、ケージの中を探って
身を守る方法を発見することができない。



~『犬として育てられた少年』ブルース・D・ペリー 
   紀伊國屋書店より~
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