ワニなつノート

《この社会は「入試」を利用して15歳の子に何をしているか?》(その4)


《この社会は「入試」を利用して15歳の子に何をしているか?》(その4)



1996年の新聞記事を見つけたけど、写真だと読みづらいので打ち込んだ。

「96.7%」が進学するということは、3.3%は「捨てられる」ということ。

しかも、高校の進学率は、自然に増えてきたのではない。

「計画進学率」という言葉がある。

教育委員会が「計画」した「定員」しか、高校生にはなれない。

つまり、「捨てる計画」を立ててきたのだ。

とくに、15歳人口のピークを過ぎてからは、「定員」を減らしながら、「進学率」を95.96、
97.98.99、と30年ほどかけて、じわじわと増やしてきたのだ。

そして、いまや「定員割れ」の高校があふれているのに、「定員内不合格」で「捨てる」を続ける。


この国の教育界は、「食べ物が余っているのに、飢えている子を見殺しにする教育」を、続けているのだ。


過去を振り返ってみると、そのことがはっきりとわかる。

1%の子どものことなど、みんな他人事なのだ。



       ■


【教育不信Ⅱ ポスト偏差値の模索 ①】

毎日新聞1996年(平成8年)6月15日

【「全員入学」苦渋の提言】

【中学校長会 受験指導に戸惑い】



教育界が「脱偏差値」を唱え始めて久しい。幼児期から大学、就職まで、数値データの輪切り選別にからみ取られた状況を切り開くすべはないのか。

前シリーズ「教育不信」では、それが日本社会にもたらしつつある「人材危機」の問題を提起した。今シリーズは、教育現場のさまざまな試行錯誤や苦悩を掘り下げ、具体的な偏差値脱却の道を追求、方策を探る。



5月28日、国立教育会館。「全日本中学校長会」の理事会席上で、内部資料として「新しい時代に対応する中学校教育」と題した報告書が配られた。その最終章に、公立普通科入試について驚くべき提言が打ち出されていた。


その1 「1学区1校の小学区制で、希望者全員を入学させる。高校内に多様な授業、コース、講座があり、生徒は自由に選択する。」

その2 「1学区複数の中学区制で、希望者全員入学。各高校は出願者全員をいったん仮入学させ、1学期終了後、全員に進路変更の機会を与える。」



これは、公立高入試の事実上の廃止につながる。なぜ今、中学の側からこのような提起がなされたのか。

     ◆


1993年(平成5年)2月。文部省は、偏差値データによって高校入学選抜や志望校選択に利用されていた「業者テスト」を追放。また新学習指導要領で「心豊かな人間」「個性を生かす」を掲げ、高校入試に多様な選抜方法と学力以外の能力を評価する多元化を提唱。出願時に高校に提出する内申書(調査書)に生徒の「やる気」を評価する「観点別学習状況」などを盛り込むよう指導する。だが、ふるい落とし選抜の資料であることに違いはない。現場は戸惑う。校長会報告書は「調査書のデータは一定基準で数値化され、数値化しにくい生徒の活動まで数値化される」と批判。また生徒側は自分がどう評価されているのか不安を募らせている。

     ◆

そして、肝心の偏差値も死んでいない。
文部省に先駆け、全国で最も早く中学校内から業者テストを追放した埼玉県。
今も中3の8割近くが学校外で「会場テスト」を受ける。業者は「偏差値を渡す相手が、教師から生徒に変わっただけ」と言い切る。

少子化時代の生き残りを「優秀な子集め」にかける私立高校の場合、もっとはっきりしている。触手は偏差値を禁じ手とされた中学を離れ、塾に移った。首都圏では、塾向けの高校説明会が開かれ、校長が塾を訪れる例もある。

     ◆

公立普通科に限ってはいるが「希望者全入」案は、「脱偏差値」の理念に現実を近づけ、入試を選抜から生徒主体の「選択」へ転換しようという考えだ。


《「学歴信仰」根深く》

公立高は反発する。私立に対抗できないからだ。「こんな制度を持ち込むと、学力の高い生徒はみな私立に行く。授業を生徒の選択に任せるとやすきに流れ、学力は低下する」と都公立高等学校長協会の萱原昌二会長(白鷗高校長)。

校長会報告書作成者の一人、安斎省一・品川区立伊藤中学校長は話す。
「偏差値追放といっても、入試制度自体の見直しは手をつけられていない。文部省は『真の進路指導はどう生きるか考える力をつけること』と言うが、大学入試や国家試験をなぜ変えず、いつも中学にだけ『変われ』なのか」

「学歴信仰」が今なお深く根を張る社会。偏差値を取り上げられた中学の受験指導は迷走する。高校進学率96.7%(95年度)。「高校に行かないわけにはいかない」現実と、「学力に見合った高校に入れ、中学浪人は出すな」という社会的圧力を教師は背負ったままだ。校長らの「受験競争解消」提言は、現場からの悲痛な叫びでもある。

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