《5車線を整えてくれる人》
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1枚の写真を見るだけで、身体の力がぬけて安全な神経プロフィールに満たされる感覚。
故郷の記憶、5歳までの子ども時代の記憶、そのころに聞いた声や歌のリズム、トーン。
「懐かしさ」だけでなく、自分の身体の「5車線を整えてくれる人」の記憶が私にはある。
その人を思い出すだけで、自分には「5車線の調整能力」があることを思い出せる。
「どんなに苦しくてもやり直すことができるよ、大丈夫」と言う声に身体が包まれる感覚。しかも「ゆっくりで大丈夫。あなたに必要なだけ時間をかけていい」「どんなにゆっくりでも、遠回りでも、遅すぎることなんてないんだから」。
その声に守られて生きてきたのだと分かる。
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※(その人が100歳で亡くなって5年後、こんなふうに言葉にすることで、なお私を守っていてくれるものに何度も気づく。身体の奥に刻まれた安全の記憶。)