《ぎゅっとしたらいいのにの物語》⑤
《「金のたまごにいちゃん」》
「抱き寄せるなんてズルいやろ。ゴメンなのに、ぎゅっと抱きしめるなんて…ホンマ腹立つ」
こんなふざけた絵本で、こんなにムキになれる?
そう思い、『金のたまごにいちゃん』を読んでみた。
2・3歳向けの絵本だが、正直に言う。
私も同じことを思った。「こんなんナシやろ」
ただ、私の場合、親ではなくヒヨコにだった。
親の言うことを聞かず、隠れて遊んでいたくせに。
「こんなぼくじゃだめ?」
そう素直に言えることを、ズルいと感じる。
しかも、たったそれだけで、「ごめんね」と謝ってもらえて、ぎゅっと抱きしめてもらえる…。
「ホンマ腹立つ」。
たかが「絵本」。されど腹は立つ。
感情は「今・ここ」にある。
2~3歳向け? ふざけたヒヨコの主人公?
そんなことは関係ない。
「こんなぼくじゃだめ?」
「だめに決まってんだろ」
そもそも、「だめかどうか」、尋ねてもいけない。疑問を持ってもいけない。「だめに決まってる」んだから。
ぎゅっとされる資格のない子は黙って我慢するしかない。
なのに、「こんなぼくじゃだめ?」
ふざけたイラストのヒヨコのくせに。
・・・言葉にすればこんな感じになる。
□
母親は母親の資格にこだわり、子どもは子どもの資格にこだわる。
「悪い親」だから、子どもをぎゅっとできない。
「悪い子」だから、ぎゅっとしてもらえない。
そう信じ、何かを守りながら生きている。
だから、ふいに無条件の「つながり方」を目にするとき、戸惑う。
自分にはなかった「つながり方」がそこに見える。
そんなつながり方、知らない。
そんなつながり方、なしやろ?
そういうときの「ズルい」は「うらやましい」と同じ。
自分の感情に正直でいられる「つながり方」を、「ズルい」と感じるようになったのはどうしてだろう。
(定員内不合格をなくすことに「ズルい」という人は、自分の何に腹を立てているんだろうね。。。)
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