私は、村瀬さんの本をどれも「フルインクル」の暗号だと思って読んでいる。
この本も「いじめ」について書かれているが、私への「暗号」は、「就学相談会」と「定員内不合格」についてだった。
暗号の解読には時間がかかる。私の妄想だから、なおさら。
でもこの本の最初に出てくるのが、『いじめの政治学』で、私も6年前のブログに、「いじめの政治学と特別支援教育」を書いている。だから、妄想はちゃんとつながっている。
一言でいえば、「いじめ」は、相手を「孤立」させ、「無力」だと思わせ、「透明」(いないこと)にしてしまうことだ。
昔の特殊教育と福祉は、子どもを分けることで「孤立」させ、障害児は「無力」だと思わせ、「透明」(社会からいないこと)にして「施設」に入れる、ということだった。
いまは違うか?
「定員内不合格」とは、席が空いているのに座らせないというアパルトヘイト的な方法で、子どもを「孤立」させ、点が取れないんだからあきらめろ=「無力」だと思わせ、「透明」(いないこと)にしてしまう。
強制的に分けることや、定員内不合格が、大人の「いじめ」だということは、明白過ぎて隠しようもない。
高校が無償化され、十五歳から十八歳までの、すべての若者に学習機会を保障しますよという時代になお、「定員」が空いている公立高校が、子どもを「不合格」にする理由などないはずだ。
(私が勤めていた定時制高校は基本的に「定員内不合格」がない学校だった。でも、試験中にタバコを吸って、注意してもやめなかった子は、定員内だったが不合格になった。そして定員内不合格の理由は教えた。その子は二次募集ではタバコを吸わなかったので高校生になった。高校生になって、学校でタバコを吸うと停学になる。そういうことを教えることが必要なら、それも教育のひとつだ)
…ここまでは、「いじめの政治学」から学んだこと。
さて、高校進学率が99%になり、無償化にもなり、それでも「定員内不合格」を出して平気なのはどうしてか。これが、私の知りたいこと。
そこのところを、村瀬さんは、「いじめ」の説明として次のように書いている。
【問題なのは、そういうひどいことをしているほうに、「悪いことをしている」という意識が全く生じないところです。それは自分たちが「正義」の側にいて、相手が「違反者」で「罰」を与えているのだという「法」の仕組みに入り込んでしまっているからです。】
【道徳の欠如からそういう陰惨ないじめをしているのではなく、自分たちの掟に沿って違反者に罰=制裁を加えているという「正義の意識」があるから、どんどん陰惨なことを平気でするようになっているのです。】
【こういう「掟」と、「罰を与える」仕組みは誰が子どもたちに教えてきたかというと、それは学校の教育の仕組みそのものであり、それを実践する教師たちだった。「学習」や「学び」には、学習を間違えたものを「罰する」という強制力が常に働いてきました。答えを間違えたものは叱責され、笑いものにされるとか、宿題を忘れたものは後ろに立たされるとか、そういう「罰」が加えられていた。間違える学習は「罰」の対象だった。「成績」をつけ、「序列」をつけるということは、「褒めと罰」だった。】
これらの「暗号」を、定員内不合格に置き換えると、こうなる。
教師は「罰を与えること」を「教育」という形で実践していて、それが子どもたちに、「できない子=「障害児」という存在の意味を意識させるお手本になっていたのです。
だからこそ、高校の校長、教員が、「定員内不合格」に、完璧な鈍感でいられるのです。
(つづく)
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