ホームN通信
《自立の風景》(a‐01)
熊谷晋一郎さんの言葉。
【…身の回りのことや通学といった生活上の支援は親が丸抱えにしていた状況だったため、上げ膳据え膳で全部介助してくれていた。
すると不思議なことに、筆者自身、どこまでが自分ででき、どこからはできないのかさえよくわからないという状態に置かれた。
「風呂に自分で入れるのかどうかよくわからない」
「トイレに行かれるのかどうかよくわからない」
「私のことがわからない」という状況である。
ゆえに当然、ニーズの主張なんて不可能である。
なぜなら自分にとって何がニーズかをわかるためには、自分は何ができないのかを知る必要があるからである。
親がテキパキとやってくれている状態で、自分の障害を理解することもできないし、世の中にニーズを主張することもできないというような、そういう非常に見通しのわるい中で何年も暮らしていたということになる。】
【一人暮らし。
…最初のうちは、失敗に次ぐ失敗だった。
……試行錯誤しながら、トイレと格闘したり、風呂場と格闘したり、介助者と格闘したり――。
それ以前を振り返ってみると、自分と世界との間にはいつも奇妙な親という存在がはさまっていたなぁ、と思い知らされることになった。
初めて、親を媒介にせずに世界と接触することができて、ようやく少しずつではあるけれども、自分の輪郭と世の中の輪郭が徐々に徐々に見えて行ったのである。
その経験が、筆者にとっての「自立生活」という言葉の原点である。』
(「障害者運動のバトンをつなぐ」生活書院)
◇
ここに書かれている自立の風景から伝わってくるもの。
一.自立のためには、「自分のできること、できないこと」を、
自分自身で確かめることが大切。
二.「見通しの悪い」環境で暮らすことは、
自立の「バリア」であること。
三.自分にとって何がニーズかをわかるためには、
自分は何ができないのかを知る必要がある。
四.一人暮らしとは、失敗、失敗、失敗の連続から始まる、
ということ。
五.母親からの自立。
六.自分の輪郭と世の中の輪郭を体験するには、
「親からの自立」が必要だということ。
七. 自立には、上記一~六が不可欠。
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