なぜと問わなくてすむように 2021(その3)
「なぜ助けてと言えないのか」と問う人が、「スキル」を教えようと言う。
「助けて」と言えれば、「助け」は来るだろうか?
援助希求のスキル?
それを学べば、「助けられ方」も自分で決められるだろうか?
「ウルトラマン助けて」と言えれば、ウルトラマンは来てくれるか?
怪獣の「助け方」がきても、よけい困るだけ。
子どもが望む「助けて」と、大人の助けたい「助け方」が同じとは限らない。
□
高校に行きたいのに行けない子がいる。
どこからも「助け」が来ない子がいる。
「助けて」と言えないからじゃない。
「無償化法」や「貧困防止法」という「助ける」ための「法律」まであるのに、「助ける校長や教育委員会」がいないから。
伊織くんは、3年目の不合格の日、「どうして」とつぶやいた。
生まれてはじめて、「どうして?」という言葉を口にした。
スキルを覚えたからじゃない。
定員内不合格という不条理が「どうして」を教えた。
伊織くんの「どうして」は「助けて」だった。
3年間、精いっぱい努力してがんばってきたけれど、何度も何度も何度も不合格にされる。「どうして?」「高校生になりたい。助けて」
伊織くんの「助けて」に、校長や教育委員会は、「なぜ」と問い返した。
「なぜ障害があるのに高校生になりたいのか?」
「お前にはスキルが足りない。スキルをつけてから来なさい。点数を取れるようになったら、助けてあげる。」
校長の「なぜ」は、「助けない」だった。
□
足りないのは、伊織くんの「援助希求能力」じゃなかった。
足りないのは、校長の「子どもを助ける能力」だった。
校長の「なぜ高校生になりたいのか?」は、子どもの声を聞くためのなぜではない。
それはただの「メッセージ」だった。
「助けられる資格がないのに、なぜ助けを求めるのか? お前が助けを求める相手はここではない。お前を助ける場所は他にある」
「なぜ」というメッセージは、話し手と聞き手の「関係」そのものなのだ。
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