【業務連絡】
「高等部は高校か?」改め・その言葉で「迎合させない」ために(その1)
「合格はできるかもしれない。でもあんな底辺高に行くといじめ殺されますよ」。
担任からそう言われたという。
「決してひどい先生ではなく、わりと親身になってくれている」という。
本人は普通高校に行きたいというが、児童相談所や担任から「普通の子の中にいると、この子はいつもコンプレックスを抱いてみじめな思いをして孤立しなくてはならない。それでは気持ち的にかわいそうだ。だから養護に・・・」
「そう言われてしまうと、普通高校に入ったら辛いのかな」と親が迷ったのだという。
その女の子は見るからにか細く頼りなく、今にも消えそうにみえた。
□
でも、「いじめ殺される」と言われたその高校は私たちには馴染みの高校だった。毎年定員割れするので、会の子も何人か入学していた。
だから私は「大丈夫ですよ」と話せた。
「外からは荒れて見えるし、目が届かない生徒もいるかもしれない。でも私たちは県教委や高校に直接行って、子どもの安全が守られるように話すから大丈夫ですよ」。
それから毎月、親子で定例会に来てくれるようになった。でもその子の声は聞いた記憶がない。いつもお母さんの隣で静かに座っていた。
翌年、会からの受験生は8人。一回目の受検で合格したのは彼女だけだった。他の7人は後3回の受検と県教委交渉が待っていた。その県教委交渉に彼女は一人で参加した。母親の姿はなかった。私は「あれっ」と思った。彼女はもう合格しているのだから今日は来なくていいのに。しかも一人で。
合格発表の後の交渉はかなりエキサイトする。理不尽な定員内不合格が繰り返されるから。大人が怒鳴りあう場で、彼女は怖い思いをしているんじゃないと、私はそう思っていた。でも彼女は、その次の二次募集後の交渉にも一人で参加してくれた。そこで彼女は初めて手をあげ話し始めた。
「わたしはこの会のみなさんおかげで高校に合格することができました。でもまだ合格できない人がいます。みんなが高校生になれるようにお願いします」
私たちは、定員内不合格をなくし、希望者全入を目指して生きてきた。まだ、その現実を変えることはできないけれど。私たちは何をしてきたか。たとえば、彼女を思い出す時、彼女一人の人生を守れただけでも、私は生きていてよかったと思える。
私たちは、みんなが高校生になれるようにと願って、活動している。でも、本当は、高校生になるより大事なことがあると、私は思う。それは子どもを騙さないということだ。
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