ワニなつノート

「わたしのものがたり」と裸の王様 (6)

「わたしのものがたり」と裸の王様 (6)


昨日の続きを書くには、やはり「始め」の状況を、
最低限、書かなければなりません。
でも、不勉強のため、自分の言葉でまとめることができません。
何冊かの本を、自分の中で整理したいと思いながら、
そうした作業は二の次にしてきました。

なので、少しずつ、拾ってみます。

まずは、『「障害者」を生きる』という本から。
「イギリス20世紀の生活記録」
という副題がついています。


 ★    ★    ★


「二十世紀の前半、身体の障害は
無知と恐怖と迷信に取り囲まれていた。

障害児の誕生は神の天罰であるという古くからの信念は、
当時もなおとりわけ古い世代の人々に生き残っていた。

ある者は、障害は家族にかけられた呪いであり、
過去に犯された悪行に対する神の罰であると信じていた。

障害児・・彼らはしばしばてんかんの発作をもっていた・・は、
悪魔に取り付かれていると考えるものも少なからずいた。

この類の迷信や伝承には、身体障害を
霊的なけがれや邪悪と密接に関連づけていた
古代文明やキリスト教の初期にまでさかのぼる、
長い歴史がある。

教会や宗教の権力が衰えるとともに、
これらの障害に関する迷信の効力もまた衰えた。

しかしそれらをまだ信じる家庭もあり、
しばしば障害児の心のなかに
ぞっとするような恐怖感を引き起こしたのである。」

 ★    ★    ★

「デイヴィッドは、1936年、
鉱夫の息子として生まれた。

彼は、遺伝性の筋疾患をわずらっていた。
その結果、彼は目立って片足を引きずって歩いたし、
親指とほかの指の動きを合わせることが
ますます難しくなっていくこともわかった。

彼はしばしば家族から劣った存在として、
また奇形としてさえ扱われた。

敏感な少年だった彼は、
彼の人生が脅かされているということ、
障害のせいで連れ去られて殺されるかもしれない
ということを信じるようになった。

このつきまとって離れない死への恐怖に、
幼年時代の彼は、絶えず苦しめられたのである。」

 ★    ★    ★   

「おれのおばあちゃんは、よく、
おれは呪われているんだと、
前世に俺がしでかしたことに対して、
神様が罰をお与えになっているんだよと言ったよ。
そのせいで、障害者になったのだと…。

おれはよく、どんな悪いことをすると、
こんなふうになっちまうのかとかんがえた。

もし、おれが呪われているなら、
その理由をおれは知らなくちゃいけない、
そうだろう?

けれども、おれにはそれが何なのか、
まったくわからなかった。
誰も気にかけてはくれないように思えたね。

おれは自分の気持ちを話すことができなかったよ。

おれは障害者だから、捨てられたり、
殺されちまうかもしれないという
たいへんな恐怖をもっていてね。

父たちはよく猫を捕まえて、川の中で溺死させたんで、
それがおれに対するやり方だと、
そうやって殺すんだと、おれは思ったわけだ。

おれたちはピートという犬を飼っていて、
その犬が足を一本折ったんだ。
すると、家の者たちはその犬を殺すことにした。

おれは考えたよ。
なぜ三本足で歩くことのできる犬を殺すのかって。

おれが考えたのは、
たぶん彼らは人間も同じように殺すんだ、
たぶんおれをかたずけるつもりだ、
だって、おれは歩けないんだから。

よく自分一人で、長い時間、墓地で過ごしたよ。
墓石を見ていて浮かびあがってくることを、
あれこれ考えてね。

まだおれはほんのこどもだったからね。
この地上にとどまっていたかった。
おれには家族がおれをどうにかしようとしている
という、耐えることのない恐怖があってね。

おれは死にたくなかったんだよ。」


『「障害者」を生きる』
スティーブン・ハンフリーズ 青弓社



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