「ボーダー」③

2012-03-11 15:00:18 | 境界性パーソナル障害(BPD)



              「ボーダー」③



 先日、芥川賞を「もらっといてやる」と言い放って受賞した田中

慎弥氏の「共食い」を読んだ。作品そのものは著者の受賞会見が物

議を醸したほどには騒がれないだろう。取り上げられているのは、

好まざる父の性癖が遺伝することに怯える青年の性の話だった。

男というものは誰しも性本能が闘争本能とリンクしていることは、

わざわざ動物実験によって確かめなくても本能的に知っている。

BPD(境界性パーソナリティ障害)だったと言われている尾崎豊は、

「女の子は八、九人はいた」と証言する女性が居るほどのセックス

依存症で、酒を飲んでは酩酊して(アルコール依存)女に暴力を振る

った(すぐキレる)。(「尾崎豊の遺書」加賀孝英・著〈文芸春秋2011

年12月号〉) ただ、信じられなかったのはダイアナ妃で、その生い

立ちや結婚後の王室での言動が、メディアが報じていた美しい容姿

とはかけ離れていたことだった。以下は、ミカさんのブログ

「Drミカのメモ帳:脳・栄養・心(発達障害・特別支援教室)」


からの引用ですが、

「人格障害の精神病理」を専門とする磯辺潮医学博士の著書「普通

に生きられない人たち」河出書房新社(2005/8/6)によると、


 ダイアナ元妃が7歳のとき、母親は4人の子どもを置いて家を出て、

再婚しました。15歳の時に、父親が再婚。このような環境に育っ

たので、「彼女の生涯を貫く、見捨てられることへの不安と情緒の

不安定性を生み出したと考えられる」

ダイアナ元妃の執事だった人は、「”かんしゃく”がひどく、女官

たちが次々と辞めていった」でも、「公の場では、上手に機能して

いた」とTVインタビューに答えていました。

5回の自殺未遂と拒食症、および不倫などから、「深い心の欠損が

あった」。「境界性人格障害の人は、何をしても、"虚しい”といつ

も訴えます」と磯辺博士。「なにか埋め合わせのできない、心の欠

落がある」

境界性人格障害の人は、「どうしようもない心の飢餓感」があり、

その飢餓感は、刹那の快楽を欲している、と博士。浪費、性行為、

物質乱用、無謀な運転、むちゃ食い、不適切で激しい怒り、自殺の

そぶりや脅し、リストカットの繰り返しなど。

BPD は、対人関係、自己像、感情の不安定、および著しい衝動性

を特徴としている、と神経科医の診断の基準を説明しています。

(p87-p88)


 好まざる父親の性癖「性行為中に殴る」が遺伝するのかどうかは

知らないが、アダルトチルドレンと呼ばれる人格障害は親から子へ

連鎖的に伝わることが多いらしい。自分が苦しんだ環境を、そんな

環境しか知らないので再び我が子も同じ環境で育てる。脳の研究で

知られる大島清氏は、これは以前にテレビで観たのだが、子どもの

脳は「十才で人間になる」と言った。それまでに子どもは親からのス

キンシップや言葉掛けなどの「愛され体験」が大切で、その安心感

の中で自己を育む。逆に不安やストレスを受けると心理的外傷によ

って人格形成が妨げられ人格障害をもたらす。不安に対して防御的

になるということは常に神経が外に向けられ自己が形成されないまま

「人間になる」。関心は専ら社会に向けられ自らの内面には虚しい孤

独感しかない。何とか自分自身を忘れようとしてアルコールや過食、

薬物、それにセックスに依存するようになる。

 ※ 「アダルトチルドレン」・・・子供のころの家族関係などが原因 
                   で、精神的に不安定な状況で育ち、
                   成人後も生き方に悩んでいる人。
                   元来は米国で、アルコール依存症
                   の親のもとで育った人をいう。
                   もっと詳しく知りたければ
                   「ウィキペディア」を。

次の動画は「アダルトチルドレン」についての専門家の説明です。

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<object width="430" height="248">                                   (つづく)</object>
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「ボーダー」

2012-03-04 23:53:45 | 境界性パーソナル障害(BPD)



                  「ボーダー」 



 子供の頃、テレビの中で活躍するヒーローたちは危機に追い込ま

れると決まって「変身」をして超能力を使い困っている人々を窮地

から救った。ざっと思い返しても「スーパーマン」「月光仮面」「

七色仮面」「ウルトラマン」そして「仮面ライダー」などなど、何

れも悪党を退治するために仮面を着けて変身し正義の敵を倒した。

子供とは成長することが第一義で、成長とは「変身」願望以外の何

ものでもないので当然強い憧れを抱いた。成長とは自らの境界(ボー

ダー)を乗り越えることで可能性を拡げる。ところが、「変身」をす

れば超能力を得て困難を逃れることが出来るのはテレビの中だけの

話であって、実際に困難に直面すると人格を変身させて逃れようと

するのは分裂症という人格障害の精神疾患である。

 かつて、民主党は政治を主権者国民の手に取り戻そうと訴えて国

民の支持を得て政権を任されたが、すると、途端に掌を返すように

公約を反古にして、反対していたはずの消費増税を行なおうとして

いる。民主党を一個の人間と看做せば、言うことと行なうことが一

貫しない二重人格者のように見える。彼らの中には相容れない二つ

の人格が在り、都合が悪くなれば別の人格が現れて話を逸らし責任

を逃れようとする。しかし、一個の人間であれば、何れそんな者は

誰からも信用されなくなるだろう。ただ、これは一つの無責任な政

党の言動に留まるだけなら未だしも、政権政党の無責任な「変身」

は何れ社会全体に影響を及ぼし、誰もが言ったことの責任を取ら

ない信用できない社会に堕落する恐れすらある。

 実際、これは何も民主党だけに限ったことではなさそうだ。最近、

我々の社会では到る所でこの人格の使い分けを目の当たりにするこ

とがある。恐らく、情報化社会によって社会的自我が増幅し、もは

や、我々は社会の中の自分以外考えられなくなり、その場その時の

状況に合わせて器用に人格を使い分け上手く世間を泳ぐことは決し

て悪いことではないという風潮が蔓延っている。ところが、整合性

が伴わない矛盾や偽善に嫌悪感を催すはずの個人的自我は、社会的

自我の台頭とは裏腹にすでに退化してしまい、自らの言動を省みる

ことさえ出来なくなってしまった。彼らが口にする「ポジティブな

生き方」とは競争社会の中で如何に自己を棄てて生きるかに尽きる。

「幸福」とは社会的幸福のことであり、それは自分が認める幸福ではなく、

他人が認めた幸福でなければならない。


                                  (つづく)   
    
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