「超国家主義(スープラ・ナショナリズム)」の更なる続きのつづき

2022-03-21 05:51:21 | 従って、本来の「ブログ」

「超国家主義(スープラ・ナショナリズム)」の更なる続きのつづき

 

 ところで、トランプのカードを人間に置き換えてみれば、カード

に印された色や数字(数値)はそれぞれの人の国籍であったり性別、

年齢といった社会的な仕分けになるのかもしれませんが、たとえば

、いまや世界的な問題になっている人種差別や「ジェンダー・フリ

ー」の運動は、グローバリゼーションによって個人の意識が標準化

され、閉ざされた社会によって印された国籍や性別、或いは年齢や

能力といった謂わば分類するために印された色や数値から遁れよう

とする人間そのものの想いにほかならない。もっと簡単に言えば、

グローバル化した世界とは色や数値によって分類され「エントロピ

ーが低い」ように配置されたトランプのカードをシャッフルするこ

とにほかならない。さらに付け加えるならば、「その核心は熱は熱

い物体から冷たい物体にしか移らず、決して逆は生じないという事

実にある。」(カルロ・ロヴェッリ著「時間は存在しない」)つまり

、われわれは再び「古き良き時代」に還ることなどできないのだ、

老人が若き日に還ることなどできないように。


「超国家主義(スープラ・ナショナリズム)」の更なる続き

2022-03-18 12:05:00 | 従って、本来の「ブログ」

   「超国家主義(スープラ・ナショナリズム)」の更なる続き

 

 理論物理学者のカルロ・ロヴェッリは著書「時間は存在しない」

の中で、過去と未来の違いを表す唯一の物理式は、Sはエントロピ

ーの量で「 △S≦0 と書いて、『デルタSは常にゼロより大き

いかゼロに等しい』と読む。これは『熱力学の第二法則』(第一法則

は、エネルギー保存則)と呼ばれるもので、その核心は熱は熱い物体

から冷たい物体にしか移らず、決して逆は生じないという事実にあ

る。」(同書) 一般にこれは「エントロピー増大の法則」と言われて

いるが、「熱による運動には、トランプのシャッフルを繰り返すの

と似たところがある。順序よく並んでいるカードも、シャッフルす

ると順序が崩れる。こうして熱は熱いところから冷たいところに移

るのであって、その逆は決して起きない。」(〃)そこで彼は、「な

ぜ時間の二つある方向のうちの片方、わたしたちが過去と呼んでい

るもののほうが事物が秩序だっているのかが問題になる。宇宙とい

う名前の一組の巨大なトランプは、なぜ過去に順序立っていたのか

。どうして昔はエントロピーが低かったのか。」たとえば、「もし

も一枚目から二十六枚目までのカードがすべて赤で、その後の26

枚がすべて黒なら、そのカードの並びは『特別』、つまり『秩序立

っている』ことになる。今、カードをシャッフルすると、この秩序

はなくなる。最初の並びは『エントロピーが低い』配置なのである

。ただし、元々の配置が特別なのは、赤と黒というカードに注目し

たからだ。色に着目するから特別なのだ。」つまり、「『特別』と

いう概念は、宇宙を近似的なぼんやりとした見方で眺めたときに、

はじめて生まれるものなのだ。」カルロ・ロヴェッリはこの著書の

中でオーストリア出身の物理学者ボルツマン(Ludwig Eduard Boltz-

mann, 1844年2月20日~1906年9月5日自死)の功績を

絶賛しているが、そこで、「ボルツマンは、わたしたちが世界を曖

昧な形で記述するからこそエントロピーが存在するいうことを示し

た。」「つまり、熱という概念やエントロピーという概念や過去の

エントロピーのほうが低いという見方は、自然を近似的、統計的に

記述したときにはじめて生じるものなのだ。」つまり、われわれは

52枚のカードを色や数字の違いによって並び替えて『エントロピ

ーが低い』『秩序立っている』と思ってしまうが、色や数字が描か

れていることを知らないカードからすれば過去も現在も何一つ変っ

ていない。つまり、われわれがカードに印した色や数字に拘ろうと

するから、過去と未来の違い、つまり「エントロピーの変化」が見

えるのだ。カルロ・ロヴェッリは、「事物のミクロな状況を観察す

ると、過去と未来の違いは消えてしまう」(同書)と言います。 

                       (つづく)


ふたたび「歴史は繰り返されるのか?」

2022-02-26 03:59:06 | 従って、本来の「ブログ」

   ふたたび「歴史は繰り返されるのか?」

 

 かつて2020年6月15日にこのブログに「歴史は繰り返さ

れるのか?」 という記事を書きました。以下はその記事の一部で

す。

『日本が今後どうなっていくのかは国民の最大の関心事に違いない

が、今まさに新型コロナウイルスのパンデミックによって世界中が

活動の自粛を強いられているこの時期と同じように、ちょうど10

0年前にもスペイン風邪のパンデミックが起こって世界中で感染に

よって多くの死者が出た。私はこれまでも何度か今の時代がその時

代と酷似していることを訴えてきましたが、ちょうどその頃はパン

デミックだけではなくて、気候変動がもたらす冷害による凶作にも

見舞われ、さらに関東大地震が起こり、そして世界的な経済恐慌と

、そして第一次世界大戦の最中でもあった。ただ、今はまだ世界大

戦は起こっていないが、しかし米中の対立は戦争前夜の観さえ窺え

る。もしも、歴史は繰り返されるとすれば、そしてまだ戦争だけは

起こっていないとすれば、今はまさに戦争前夜だということになる

。』(以下略)。

 ここにきてロシア軍によるウクライナへの侵攻はそう簡単に収拾

できないように思える。それが「第三次世界大戦」の嚆矢(こうし)

でなければよいのだが。


「意識の連続」

2021-11-24 09:42:56 | 従って、本来の「ブログ」

 

 

       「意識の連続」

 小説家夏目漱石は、明治四十年、東京美術学校文学会の開会式に

依頼されて講演を行ないましたが、朝日新聞の社員であった彼は「

同紙に自説を発表すべしと云う条件で引き受けた」ことから「文芸

の哲学的基礎」と題された講演録が残されていて、その講演の中で

彼はちょっと興味深いことを言っています。

青空文庫http://www.aozora.gr.jp/)

 その講演は現象学的な存在論から語り出して、おそらくそれは維

新より堰を切って流れ込んできた西洋哲学の影響だと思うが、彼自

身も講演の中でドイツの哲学者ショウペンハウア―の「生欲の盲動

的意志」という概念を引用していますが、そこで夏目漱石は、世界

や私という存在は私の「意識」が捉えた現象に過ぎないのであって

、「私と称しているのは客観的に世の中に実在しているものではな

くして、ただ意識の連続して行くものに便宜上私と云う名を与えた

のであります。」(同書) つまり、「吾々の生命は意識の連続であ

ります。」そして、われわれはこの「意識の連続」を切断しようと

は思わない、つまり死ぬことを望まない。それは、

「進化論者に云わせるとこの願望も長い間に馴致(じゅんち)発展し

来ったのだと幾分かその発展の順序を示す事ができるかも知れない。

と云うものはそんな傾向をもっておらないようなもの、その傾向に

応じて世の中に処して来なかったものは皆死んでしまったので、今

残っているやつは命の欲しい欲張りばかりになったのだと論ずる事

もできるからであります。御互のように命については極めて執着の

多い、綺麗(きれい)でない、思い切りのわるい連中が、こうしてぴ

んぴんしているような訳かも知れません。これでも多少の説明には

なります。」

 かつて始原の人間は生まれて来たことの意味を知っていて、その

ためなら死ぬことなど少しも厭わなかったが、ただ想いを果たすに

はあまりにも寿命が短いことから、そこで長生きすることに執着す

るあまり本来の生きる意味をすっかり忘れ去り、その末裔である我

々は、ただ長く生きるためだけに生きている。


「人権侵害とオリンピック」

2021-11-21 13:10:31 | 従って、本来の「ブログ」

      「人権侵害とオリンピック」

 

 来年の2月に開催される北京冬季オリンピックを巡って、米国バイ

デン大統領は中国共産党による少数民族に対する人権問題を理由に外

交使節団を派遣しない「外交的ボイコット」を検討していると明らか

にし、また前駐日大使のウィリアム・ハガティ上院議員も日経新聞と

のインタビューで日本政府にも同調を促した。

 これらの経緯から思い出されるのがヒットラー率いるナチス・ドイ

ツ党政権の下で開催されたベルリンオリンピックである。以下は『ウ

ィキペディア(Wikipedia)』の「1936年ベルリンオリンピック」

からの引用ですが、オリンピック閉会後にも台湾侵攻を画策している

と思われる中国共産党とかつてのナチス党が重なるのはおそらく私ひ

とりではないと思うが。

        *      *      *

「1936年ベルリンオリンピック」【ウィキペディアより】

ベルリンでの開催決定後にドイツの政権を握ったナチス党が、ドイツ

国民の支持の下にユダヤ人迫害政策を進めて行ったことや、反政府活

動家に対する人権抑圧を行っていることを受けて、ユダヤ人が多いイ

ギリスやアメリカ、そして開催地の地位を争ったスペインなどが、開

催権の返上やボイコットを行う動きを見せていた。

これに対してドイツ政府は、この大会を開催したいがために、大会期

間の前後に限りユダヤ人に対する迫害政策を緩めることを約束した他

、ヒトラー自身も、有色人種差別発言、特に黒人に対する差別発言を

抑えるなど、国の政策を一時的に変更してまで大会を成功に導こうと

した。実際に、オリンピック開催の準備が進められる中、それまでド

イツ中に見られていた反ユダヤ人の標語を掲げた看板は姿を消し、ユ

ダヤ系の選手の参加も容認された。併せて反政府活動家が収監されて

いた収容所の規則は一時的に緩められた他、一部の反政府活動家は国

外へ出国できる(事実上の亡命の容認)こととなった。

 このようなドイツ政府の「変節」を受けて、開催ぎりぎりのタイミ

ングで開催権の返上案は撤回され、また、国内からのボイコットの要

望が根強かったイギリスやアメリカも参加することを決意した。(中略)

 そして、この大会の3年後、1939年9月にドイツによるポーラン

ド侵攻を機に第二次世界大戦が勃発した。(以下略)

         *       *        *

われわれは決して独裁政権に誤ったメッセージを与えてはならない。