「ユーロ杯2012」
決勝トーナメントの全試合を見たわけはないが、気になったのが
イングランドの弱体化だ。前に、プレミアリーグに外国有名選手が
大勢移籍してくるようになって、国内の若手選手が大きな舞台で経
験を積めなくなり育成され難くなったというウインブルドン現象がサ
ッカーでも起きているというニュースを観たことがあった。そういう
ことがあるのかもしれないが、何よりも気になったのがキーパーだ。
観ていて動きがぎこちないと思った。世界を制するチームには必
ず名キーパーの存在が欠かせない。対イタリア戦はPK戦になって
一度はイングランドがリードしたが、観ていてそのまま逃げ切れると
は思わなかった。結果は逆転されてしまったが、それはキーパーの
ミスからではなかった。2014年のW杯のイングランドが心配だ。
さて、対イタリア決勝戦のスペインは凄かった。まるでパス回し
の曲芸を観ているようで目が離せなかった。そもそも相手のイタ
リアはドイツとの試合も一瞬の隙を衝いた逆襲で勝ったようなも
ので、ゲームそのものはドイツが支配していた。決勝戦はスペイ
ンの華麗なボールコントロールに圧倒され、ボールを奪いに行け
ば巧妙なフェイントでかわされ、めまぐしくパス回しされ呆気にとら
れるシーンさえあった。そして、後半の3失点以降は明らかに試合
を諦めてしまった。
そのスペインは今、国家は経済危機で大変だが、スペインのサッ
カーを観ていて「パンとサーカス」を思い出さずには居られなかっ
た。あんな曲芸師顔負けのサッカーを毎週リーガ・エスパニョーラ
で観ることが出来るなら、みんな仕事そっちのけで応援するのも無
理はない。かつて、1985年に阪神タイガースは球団初の日本一
に輝いたが、私はその頃は大阪に居て根っからのタイガースファン
だった。卸売市場で働いていたが、隣の店の番頭さんは、所沢の
西武球場でタイガースを応援するだけのために仕事を辞めてしま
った。みんな仕事なんかどうでもよかった。テレビで日本シリーズ
の中継を観ていると、レフトスタンドの最前列に陣取って大きな旗を
振り回して満足そうな番頭さんの顔がアップで映し出された。私は、
ガラガラの市内を配達中に軽トラのラジオで対西武6回戦を聴き
ながら走っていたが、淀川に架かる十三大橋の上を走っている時
に、阪神の初回の攻撃で大洋から移籍してきた長崎がライトスタン
ドに満塁ホームランを放った。ライナーで飛び込んだと絶叫するア
ナウンサーの実況を聴いて私は涙を流しながらハンドルを握って
いた。長崎選手は、大阪出身で元々阪神入団を希望していた。大
洋ホエールズの中心選手として活躍していて将来の監督まで嘱望
されていたが、しかし、球団コーチの娘さんと離婚するとトレードに
出されてしまった。そんな話しを聞いていたので彼の一打は殊更
うれしかった。ま、要するに、サーカス、今でいえば野球やサッカー
に熱中する余り、政治経済がおかしくなるといういうは今日ではな
いとは思うが、阪神タイガースの日本一に浮かれた大阪は、その
後、浮かれたままバブル崩壊に見舞われて未だに立ち直ってい
ない。スペインもまた不動産バブルの崩壊があったようだが、大
阪の二の舞にならないようにサッカーの応援はほどほどにして
経済危機を華麗なフットステップで切り抜けることを期待してます。
*「パンとサーカス」
パンとサーカス(ラテン語: panem et circenses)は、
詩人ユウェナリス古代ローマ社会の世相を揶揄して詩
篇中で使用した表現。権力者から無償で与えられる
「パン(=食糧)」と「サーカス(=娯楽)」によっ
て、ローマ市民が政治的盲目に置かれていることを指
摘した。パンと見世物ともいう。ガス抜きや愚民政策
の例えとしてしばしば用いられている言葉である。
(ウィキペディア)