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【2012年12月18日】 京都シネマ
『地下水道』といえばポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダの《それ》と、オーソンウェルズの『第三の男』を連想する。
『第三の男』の舞台はウィーンであるが、その映画の中での地下水道は、そんな不潔なイメージとは無縁とさえ感じる。雨水だけが流れている様な感じでその中をバシャバシャ歩いても汚いという感じはしない。
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変な話であるが、《山でのトイレ》は始末の方法が目に見えるので、排泄物の行方がどうなっているか分かりやすいが、それに対し、便利で衛生的に見える都会では汚い部分は直接見えない地下の奥深く、人間の目の届かない所に埋め込まれてしまっているので、想像が及ばない。
毎日、トイレの水を流す時、「この汚物は、家の前の下水路を通って、どこに流れてどう処理されているのだろうか」と時々考えることがある。
この映画の舞台は、その汚水の流れ込む地下水道である。《地下水》とか《水道》とかの、別の言葉の語感から得られる清潔感とは無縁である。
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イタリアの『ライフ・イズ・ビューティフル』という映画の中で、子供がナチの憲兵から逃れるために便壺に隠れるシーンがあったが、この映画では《汚水道》がナチのホロコーストから逃れ、生き延びる最後の場所である。
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『ソハ』とは、この映画に出て来る人物の名前である。街の下水道の保守管理をする傍ら、《空き巣稼業》も兼ねて生計を立てるポーランド市民で、ある日地下水道を巡回中に《ゲットー》から地下水道に抜ける穴を掘っていた『ユダヤ人』と遭遇する。
ナチに売り渡せば報奨金を貰えるが、ユダヤ人からお金を貰い《保護》する道を選ぶ。
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彼らと接するうちに、『ソハ』の気持ちも徐々に変化していく・・・。
『パティニョールおじさん』の、《何も知らない善良な一般市民が、自身の危険も知りつつ、徐々にナチに対する《抵抗》の心情を示し、最後は迫害される側の立場に立って行動する》という内容に通じるし、『シンドラーのリスト』の、《打算から始まった行為から、一人でも多くのユダヤ人を救いたい気持ちに行きつく》という話につながるものもある。
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『ソハの地下水道』-公式サイト