(仕事場から)
ロンドンオリンピックが始まってテレビも新聞も話題
の中心はオリンピックゲーム、さすがの夏の高校野球
もかすんでいる感じがする
オリンピックが注目されるひとつにあのメダルがある
金・銀・銅というメダルの価値は世界大会での結果と
価値が違うということなのだろうか
それだけに各競技のメダル争いは世界の話題、まるで
国力を争うがごとく国別のメダル獲得数の予測が出る
くらいだから選手への期待もプレッシャーも他の大会
とは違うのだと思う
そして勝者と敗者とに悲喜こもごもの話題がニュース
になって世界をかけめぐるのだから穏やかではない
(24.7.28 日経夕刊)
昨日は柔道男子66キロ級で日本の海老沼選手と韓国
のチョ・ジュンホ選手が延長まで闘い判定はチョ選手に
上がった
しかしその判定に場内から猛烈なブーイングがあって
判定をやり直すという前代未聞の結果、判定は海老沼
選手の勝利に覆った
審判の杜撰な判定にほんろうされた格好のマット上の
両選手を見ていて気の毒でならなかった
個人的にとくに気になったのが
柔道女子48キロ級の福見友子選手で
”必ず金メダルを取る!”と言ってのぞんだ柔道最初
のクラスで敗れ3位決定戦でも負けてメダルをとれず
”一生、悔いが残る試合になった”
と語っていたことが痛々しくてかわいそうに思った
金メダルのプレッシャーだったのかもしれない
そう言わしめたのは、そこまで命を賭けてやってきた
という自負があるのかもしれない
大事な青春の多くの時間をつぎ込んできたのだろう
女子48キロ級といえばあの谷亮子さんがバルセロナ
大会から5大会連続してメダルを獲得してきた日本が
もっとも得意としている階級で
福見選手にはその伝統を守って“柔道の金第1号”へ
の期待が大きく78%の人が金メダルを予想していた
谷選手を破りながら出られなかった北京、浅見選手と
いうライバルが立ちはだかる中をやっとつかんだ今回
のオリンピックで柔道人生最高の舞台になったはずの
夢は無残にも崩れてしまった
「これが五輪だと思う」と福見選手は自分を納得させ
ようとしているのかもしれないが、その言葉の重みは
人生の重みにならなければいいがと思う
もしかしたら勝ち負けすべての選手に共通することか
もしれないがいずれにしてもオリンピックはアスリート
たちには特別のステージなんだろう
27の福見さんは4年後のリオ大会を目指そうとする
のか、保障がない人生だから頑張れることもあろう
胸を張って生きていってほしいと思う
それにしても「一生、悔いが残る試合になった」とは
含蓄のある言葉だ
「ここまで生きてきて、悔いが残る試合になった」と
言える人生を送ってきただろうかと自分に問うてみた
期待した北島康介選手の100m平泳ぎは三連覇ならず
残念だったが、U-23男子サッカーチームが優勝候補
のスペインを破った快挙はなでしこジャパンよりも興奮
をさせてくれた
始まったばかりのオリンピック
長い大会期間中にはもっともっとたくさんのドラマが
描かれていくはず
勝ち負けを競うスポーツは残酷な一面もあるが人間の
ドラマをみせつけてくれるすばらしさもある
最終日まで楽しみたい。
(24.7.28 日経夕刊)