長別三界苦輪海
いとひこしうき世の海に船出して今日もともづなを解く日なりけり
半紙
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【題出典】『法華玄義』五・上
【題意】 長く三界の苦輪海に別る
永遠に三界の苦しみの輪廻の海と別れる。
【歌の通釈】
厭ってきた世の海に船出して、今日、艫綱(ともづな)を解く日(三界の輪廻から離れる日)なのだよ。
【考】
長い憂き世の海を航海してきて、いよいよ今日ともづなを解き放ち、輪廻の海から離れると詠む。艫綱を解くという表現により、輪廻からの解脱を詠むのは、康治元年(一一四二)年の俊成「法華経二十八品歌」の一首「ともづなは生死の岸にとき捨てて解脱の風に舟よそひせよ」(長秋詠藻・無量義経、船師大船師・四三一)が参考となっただろう。
(以上、『寂然法門百首全釈』山本章博著 による。)