採花置日中能得幾時鮮
朝顔の日影まつまをさかりとぞはなめく世こそあはれなりけれ
半紙
【題出典】『法華懺法』
【題意】 花を採りて日中に置き、よく幾時鮮やかなるを得ん。
花を摘んで日中の間置いておくと、鮮やかな時はわずかである。
【歌の通釈】
朝顔が日の光の差すまでを盛りと輝くようなこの世は実に悲しいことだよ。
【考】
朝顔による無常の歌は、和泉式部をはじめ(ありとても頼むべきかは世の中を知らするものは朝顔の花)古くより詠まれてきている。朝顔が朝日の昇るまでの間、ほんの一瞬輝きを放つ、この世はそのようなものだと言った一首。朝顔の無常の歌はそのはかなさを詠むものが多いが、その中でもその一瞬の輝きを描いた点が新しい。
(以上、『寂然法門百首全釈』山本章博著 による。)