2023.11.6
世皆不牢固如水沫泡焔
結ぶかとみれば消えゆく水の泡のしばし玉ゐる世とは知らずや
半紙
【題出典】『法華経』随喜功徳品
【題意】 世は皆、牢固ならざること、水の沫・泡・焔の如し。
世はみな固く不変ではないのは、水泡や陽炎のようなものだ。
【歌の通釈】
結んだかと見るとすぐに消えてしまう水の泡が、しばらく玉として置くような、はかない世だとは知らないのか。
【考】
公任の維摩十喩を詠んだ「ここに消えかしこに結ぶ水の泡うき世にすめる身にこそありけれ」(公任集・二八九)をはじめ、水泡による無常の歌は古くから詠まれている。ただし、前歌の「はなめく世」と同様に「玉ゐる世」と、はかないが一瞬の輝きを放つ世を詠む点が特徴である。
(以上、『寂然法門百首全釈』山本章博著 による。)