中国問題グローバル研究所所長で理学博士の遠藤誉・筑波大学名誉教授が、”スイスのガンザー博士が、ウクライナ戦争に関してアメリカが国際法違反をしていることを証明している。日本はこれを完全に無視し事実の半分の側面だけしか見ていない。戦争はこうして起こる。犠牲になるのは日本だ”と語っています。そのガンザー博士の主張を、スイスやドイツに本拠をおく独立系メディア、kla.TVが取り上げています。kla.TVは、世界中70か国以上の国々の2000人以上のボランティアスタッフによって運営されているということですが、やはり、こうした報道は、独立系メディアでないと難しいのだろうと考えさせられながら、ガンザー博士の主張を解説する動画を見ました。
動画は、概略、下記のような内容でした。欧米や日本のような、かつて植民地支配で利益を得、いまもなお、いろいろなかたちで収奪をし続けている国々では、報道されにくい内容なのだろうと思います。
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ロシアのプーチン大統領が、2022年2月24日にウクライナ侵攻を命じたのは、国連の暴力禁止規定に反し、違法行為である。しかし、2014年2月20日、オバマ大統領がウクライナ政権を転覆させたのが、ウクライナ戦争の原点であり、オバマ大統領の行為も国連の暴力禁止規定に反する違法行為である。
しかしながら、ウクライナで戦争が続いている現在、オバマ政権のクーデターはほとんど取り上げられていない。だから、世界はウクライナ戦争の物語の半分しか見ていない。
ウクライナのマイダン革命は、欧米が主導した。それは間違いない事実だ。元CIA職員のレイ・マクガバンも認めている。
キューバ危機のように、双方が隠しカードで勝負し、ウクライナを自国の勢力圏に引き込もうとした。アメリカは約束を破りNATOを拡大させた。1999年、ポーランド、チェコ、ハンガリーがANTOに加盟した。
2013年にマケイン議員は、ウクライナの元ボクサービタリ・クリチコとともに、ヤヌコビッチ政権に対する抗議者陣営を訪れ、政権転覆を促した。そして、アメリカの在キエフ大使館が抗議行動をコウディネートしたのだ。マイダンのデモのリーダーたちは、アメリカ大使館に出入りし、指令を受けていた。参加者の一部は武装していた。
ジェフリー・パイアット大使がデモを支援していた。パイアット大使はデモを扇動するビタリ・クリチコと直接接触していた。
当時副大統領だったバイデン氏もマイダンのデモを支持していた。そして、ヤヌコビッチ大統領に電話をかけ「警察がデモ隊を排除したら、ただではすまないぞ」と脅したので、ヤヌコビッチ大統領は、デモ隊の排除行動を撤回したのだ。
米国務省のビクトリア・ヌーランド(オバマ大統領上級補佐官)が、ウクライナのクーデターを担当した。マイダンの指導者たちはアメリカ側から、指令とともに報酬も受けていた。ヌーランドは講演で「我々は、ウクライナの繁栄、安全、民主主義を保障するために50億ドル以上を投資してきた。」と語っている。
元下院議員のロン・ポール氏は、ヌーランド氏が「政権交代に50億ドルを費やしたことを自慢している」ことを取り上げ、そういうことが許されるのかと非難した。だから、デモの指導者が報酬を得ていることも知られるようになっていた。
米国の大富豪ジョージ・ソロス氏も、デモを支持し、資金を提供し、給料を支給をした。
ウクライナの専門家イナ・キルシュは、デモの指導者が通常の給料の倍を得ている事実を明らかにしている。アンチ・マイダンのデモとマイダンのデモの両方に参加して、報酬を受けていた者が少なくないというのである。
ヌーランドとジェフリー・パイアット大使は電話で、ウクライナ政権を担当する人物を、ビタリ・クリチコではなく、ヤツェニュク氏にすることで合意した。
2014年2月20日、正体不明の狙撃手が複数の建物から警官隊とデモ隊の両方を狙撃した。40人以上が死亡した。ヤヌコビッチ政権と警察が責任を負わされたが、狙撃は、彼らに何の利益ももたらさないし、証拠もないので、彼らの仕業とすることには問題がある。
だから、元ボクサー、ビタリ・クリチコの「国際社会は独裁者が国民を虐殺することを傍観してはならない」との発言にも、問題がある。ウクライナの億万長者、ペトロ・ポロシェンコが大統領になったが、すぐにNATO加盟を目標とすることを宣言した。
プーチン大統領はNATO諸国を批判した。ロシア軍管理下のクリミアでは、政権転覆は受け入れられないということで、ウクライナアを離脱し、ロシアに加盟したいという意思が表示された。賛成投票は97%であった。
ドネツク・ルハンスク両州の多くの住民も、ウクライナのクーデター政権を支持していない。
元連邦裁判所判事、ディーター・デゼーロート氏は、ロシアを批判しつつ、西側諸国の対応も批判した。コソボ、イラク、アフガニスタン、リビアなどを取り上げ、西側諸国には、ロシアを批判する資格がないと語った。
アルセニー・ヤツェニュク氏は、東部親露派を分離主義者でありテロリストと主張して、対テロ特別作戦を開始した。その結果、8年間で1万3000人の死者を出した。
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だから、私は、ウクライナ戦争は、暴力団の抗争と変らないと思うのです。
以前にも書きましたが、世界最大の暴力団(アメリカを中心とする西側諸国)が、二番目の暴力団(ロシアを中心とする国々)を屈服させるために挑発をくり返し、乗ってきた二番目の暴力団に対する反撃を、自らの子分となったウクライナにやらせているのだと思うのです。どちらも、法や道義・道徳ではなく、武力で決着させようとしている点で共通していますが、特に、世界最大の暴力団の目的は、二番目の暴力団を屈服させることなので、話し合う気がないのだと思います。
この現実を乗り越えるためには、やはり、ガンザー博士が明らかにしたような真実を広め、双方、特に西側諸国に、武力による決着をやめるように促すしかないと思います。日本もウクライナを支援することと、ウクライナ軍を支援することをはっきり区別して、法や道義・道徳に基づく解決を求めるべきと思います。