真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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死体で埋めつくされたブチャの通りの画像は創作?

2022年06月14日 | 国際・政治

 ウクライナにおける「ブチャの虐殺」は、プーチン大統領を悪魔の如き侵略者とし、ウクライナ軍を支援することによって、ロシアを武力で屈服させようとする動きに、大きな力を与えたと思います。でも、ウクライナの政権転覆(マイダン革命)と同様、その「ブチャの虐殺」に関しても、kla.TVが、スイスのガンザー博士の主張をもとに、重大な疑問を投げかける動画を公開しています。

 先日、朝日新聞は、山口真一・国際大学GLOCOM准教授の、「偽・誤情報の速い拡散 ファクトチェック充実へ メディア連係急務」と題する文章を掲載しました。そのなかで、山口准教授は、
今年の2月、ロシアがウクライナへの侵攻を開始した。いまだ終わりの見えない戦いの中、問題視されていることの一つに、偽・誤情報の拡散がある。
 日本語でもSNSを中心に様々な情報が広まっている。「ブチャの虐殺はウクライナ軍がやった」「ウクライナ政権は8年間ジェノサイド(集団殺害)をしており、女性や子供を含む数千人の命を奪った」。こうした情報を見た人は多いのではないだろうか。これらは元々は、ロシア政府や関連機関が意図的に流した偽・誤情報だ。
 と述べています。私は、やはり山口准教授も、アメリカやウクライナからもたらされる報道は真実で、ロシアからのものはプロパガンダであると、知らず知らずのうちに思い込むようになっていたのだろうと思いました。なぜなら、「ブチャの虐殺」に関しては、第三者機関によるきちんとした検証がなされていないからです。
 元々、欧米や日本のように、かつて植民地を支配し、植民地から利益を吸い上げていた国々の支配層は、革命や民族解放戦争で成立した政権の国が嫌いであり、敵視する傾向が強いと思います。アメリカの中国やロシアに対する敵視政策が、それを象徴していると思いますが、そうしたアメリカの傾向は戦後一貫しており、すでに「ウクライナ戦争とベトナム戦争」で触れました。ベトナム戦当時のアメリカ国防長官、ロバート・マクナマラは、ベトナムとの非公開討議(1997年6月、ハノイ対話)で、”ケネディ、ジョンソン両政権を通して我々は、南ベトナムを北ベトナムに譲り渡すのは、東南アジア全体を共産主義者に与えることになると考えていました。そして東南アジア全体を失うことは、アメリカ合衆国やその他の自由主義社会の安全保障体制を大きく揺るがすと判断していたのです”と語っているのです(「我々はなぜ戦争をしたのか 米国・ベトナム 敵との対話」東大作:岩波書店)。
 アメリカやアメリカの同盟国が、北ベトナムから武力攻撃を受けたわけではないのに、アメリカは独裁者ゴ・ディン・ジエムを支援するために、ベトナムに軍隊を送り、無差別な絨毯爆撃をくり返したばかりでなく、有毒な枯葉剤をまき散らすことさえしたのです。自由主義社会の安全保障のために、独裁者を支援するというのも、子どもにでもわかる矛盾だと思います。
 また、アメリカがマイダン革命におけるウクライナの政権転覆に深く介入するとともに、ロシアに対する様々な挑発をくり返し、ウクライナ戦争に至る経緯にも、同じような側面があると思います。
 「ノルドストリーム2」というロシア産の天然ガスをドイツに送るパイプライン建設に関し、トランプ前大統領は、”悲劇だ。ロシアからパイプラインを引くなど、とんでもない。”と発言しています。また、”ベルリンはロシアの捕虜となっている”などと言って、「ノルドストリーム2」関連会社に対する制裁を立案し、バイデン大統領も制裁を課しているのです。それは、西側諸国の支配層に共通する、革命や民族解放戦争で成立した政権の国に対する敵視政策のあらわれであると思います。
 だから、ロシアを孤立させ、弱体化させるために、また、あわよくばプーチン政権を顛覆するために、ロシアに対する様々な挑発をくり返したのだと思います。法的に対処することが難しい時には、アメリカは、さまざまな理由づけをして、武力を行使してきた歴史を忘れてはならないと思います。
 でも、そうしたアメリカの戦争の歴史やウクライナ戦争の経緯、また、その背景を考えないと、山口准教授のように、西側諸国の考え方に影響されて、真実が見えなくなっていくのだと思います。山口准教授は、”ロシア政府や関連機関が意図的に流した偽・誤情報”に関して、”しかし今回のロシアによるウクライナ侵攻では、高度な対抗手段が出てきたのも特徴だ。例えば、ブチャの虐殺の件では、米ニューヨーク・タイムズ紙が衛星写真の解析を行い、ロシア軍が現地から撤退する前にすでに複数の遺体がブチャ市内に散乱していることを突き止めた。ブチャの虐殺はウクライナによるものだというロシアの主張をマスメディアが反証したのである。”と述べています。
 でも、その衛星写真の解析が、正確に遺体を写し出しているのかどうか、また、写っているという複数の遺体が、確かにロシア軍によって虐殺された人の遺体であると確認できるのかどうか、さらに、それは加工されたリ、修正されたリしたものではないと断定できるのかどうか、第三者機関の専門家による、きちんとした検証がなされなければならないと思います。特に、戦争当事国であるアメリカやウクライナからもたらされる情報は、プロパガンダを疑う必要があると私は思います。
 戦争となれば、その国のメディアは、国益に沿う報道をする可能性が大きいのであって、簡単に、ニューヨーク・タイムズが、”ロシア軍が現地から撤退する前にすでに複数の遺体がブチャ市内に散乱していることを突き止めた。”などと断定してはならないと思います。

 そういう意味で、スイスのガンザー博士の主張や、スイス、ドイツに本拠をおくという独立系メディア kla.TVの動画の情報は貴重だと思います。日本でも、日常的にロシアや中国を敵視するような報道がなされていることを踏まえ、積極的に中立的な立場の主張や報道を求め、真実を追究するようにする必要があると思うのです。

  kla.TVの「ブチャの虐殺をめぐる矛盾」と題した動画は、概略、下記のような内容です。欧米や日本のような、かつて植民地支配で利益を得、いまもなおいろいろなかたちで収奪を得続けながら、中国やロシア、そして、その同盟国などを敵視している西側諸国では、報道されにくい内容なのだろうと思います。極めて重大な問題提起であり、無視されてはならないと思います。多くの人に見てほしいと思います(https://www.kla.tv/index.php?a=showlanguage&lang=ja&id=22242)。
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                     ブチャの虐殺をめぐる矛盾

 ブチャの画像が世界中を駆け巡りました。その画像には、路上に多くの民間人の死体が転がり、中には縛られたまま頭を撃ち抜かれた死体があります。集団墓地もあります。死者は400人以上ということです。
 攻撃を受けたロシア軍は3月上旬、キエフの北にある人口35000人のブチャに陣取りました。3月30日、ロシア軍は撤退しました。ブチャの市長が3月30日、町の解放を報告しました。4月2日ウクライナ国家警察が町に入りました。ブチャから死体の画像が初めてメディアに流されたのは、ロシア軍撤退から三日目の4月2日です。4月4日ニューヨークタイムズは、数週間前から死体が横たわっている衛星画像を報じました。この画像は3月19日と21日のものだといいます。ブチャで何が起こったかは明らかになっていません。ロシア側とウクライナ側の主張は真っ向から対立しています。ウクライナ政府は、キエフ近郊の小さな町で、ロシア軍が400人以上の市民を残虐に殺したと非難しています。ロシア政府は、キエフ政府の挑発だと語り、ロシア軍が撤退するまでは、誰も被害を受けてはいないと主張しています。水掛け論になっています。でも、真実を知るのは困難な状況です。だから、どちらかに肩入れする目的ではなく、いくつかの矛盾を指摘し、疑問を投げかけたいと思います。

 ブチャの市長は3月31日、ブチャの解放を喜んで報告しましたが、その時ブチャの大虐殺や戦争犯罪には触れていません。4月3日にウクライナ政府が、ロシア軍の戦争犯罪を糾弾してから、突然語り始めたのです。ウクライナ国家警察は4月2日にブチャに入る様子を撮影した動画を公開しました。破壊の様子は確認できますが、死体が転がっている様子はありませんでした。3月19日と21日の衛星画像で死体が転がっていたことが確認されているとしたら、なぜ二週間も放置し、なぜ4月4日まで公表されなかったのか。この衛星画像は少なくとも米国防省の四つのプログラムに関わり、米軍と密接な関わりのあるマクサー社のものでした。
 また、ドイツのノンフィクション作家トーマス・レバー氏は、死体の多くが、白い腕章をつけていることについて、それはロシア兵を識別するものだといいます。ブチャの人たちもロシア軍に連帯して手製の白い腕章をつけたことでしょう。
 ブチャのこの戦争犯罪で利益を得るのは誰でしょうか。ロシア軍は腐敗した死体を放置して何の利益があるでしょうか。そんなことをすれば、ロシアを非難するレトリック、制裁、軍備増強を強化しようとする西側諸国の政治の術中にはまることになります。
 独立した調査も開始されないうちに、ロシアに対して軍備増強が叫ばれています。
 4月4日、国防相の報道官が、ウクライナに多くの兵器、スティンガー、シャベリンミサイル、ドローンなどを供与したいと言明しました。躊躇していたドイツ政府のアンナレーナ・ベアボック外相も支援強化を主張しました。ウクライナ大使のアンドレイ・メルニク氏も「今、重要なのは重火器の供与だ」と語り、専守防衛から一歩踏み出した武器の供与を語っています。
 レバー氏は3月30日のイスタンブールでの交渉で、歩み寄りがあったことを述べています。ウクライナが非同盟、非核所有国になることが、平和への道であった可能を語っています。ウクライナは安全の保障を得るかわりに、NATOへの加盟や外国軍の駐留を求めないというような内容です。でも、「ブチャの虐殺」が、和平交渉を決裂させてしまいました。
 すべてが、ロシアとウクライナの対立激化を示唆しています。第三次世界大戦の予兆かもしれません。そのような対立激化を望むのは誰でしょうか。ますますロシアは疲弊し、孤立するのではないでしょうか。経済的にも弱体化するのではないでしょうか。欧州も間違いなく影響を受け、破滅の瀬戸際に追いこまれるのではないでしょうか。高みの見物でほくそ笑むのは米国でしょうか。欧州やロシアが戦争に苦しむ一方で、救世主として登場し、新世界秩序を構築するために、世界政府を強制できるようにすることは、彼らの利益になるのではないでしょうか。
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アメリカが、アフリカや中東やアジアやラテンアメリカでやってきたことをふり返れば、kla.TVの報道内容に大きな誤りはないと思います。だから、死体で埋めつくされたブチャの通りの画像は、創作ではないかと疑わざるを得ないのです。

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