真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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チョムスキーが語るウクライナ戦争とアメリカの巨大な欺瞞

2022年06月27日 | 国際・政治

 “知の巨人、ノーム・チョムスキー!「ウクライナ戦争とアメリカの巨大な欺瞞」”と題された動画の中で、チョムスキーが語っていることは、ウクライナ戦争の解決のためだけではなく、現在世界が直面している諸問題の解決にも関連することだと思います。だから、その内容を私なりに文章化し、まとめておくことにしました。
 チョムスキーが語っていることは、概略下記のような内容です。
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 ニカラグアに対するアメリカの軍事介入のケースでは、アメリカは世界裁判所に提訴され、不法な武力行使の停止や、賠償金の支払いを命じられた。でも、アメリカは紛争をエスカレートさせる対応しかしなかった。
 ウクライナ戦争に関しては、支援を強化すればよいというものではない。交渉による解決に向かうことが最善だと思う。戦争の終わり方には二つある。どちらかが破壊されて終わる場合と交渉による場合だ。でも、ロシアが破壊されて終わることは考えられない。交渉を進める場合、プーチン大統領や取り巻く少数の人たちの心の中を覗こうとしてはいけない。

 アメリカの方針は「いかなる形の交渉も拒否する」ということだ。アメリカの行動方針2021年9月1日共同方針声明 11月10日の合意憲章に「基本的にロシアとは交渉はしない」と書いてあるのだ。そして、「NATO加盟のための強化プログラム」と呼ばれるものに移行するようウクライナに要求している。バイデンのロシア侵攻予告前のことだ。だからそれは、ウクライナにロシアとの交渉の余地を与えないということを意味する。
 最新兵器の供与、軍事訓練の強化、合同軍事演習、国境配備の武器の供与。こうしたアメリカ政府の強硬な発言が、プーチンとその周辺を直接のウクライナ侵攻へ導く要因になった可能性がある。チャス・フリーマン元サウジアラビア大使の言葉を借りれば「ウクライナ人は最後の一人になるまで戦え」と言っているのと同じだといえる。


 国際社会は、ウクライナ人に自衛のための軍事的支援を与えつつも、大規模な破壊につながるエスカレーションを招かないよう配慮が必要だ。戦争を抑止するのに有効な制裁措置を考えながら、交渉による解決を進めなければいけない。

 ゼレンスキーが政治的解決について述べた非常に明確で真剣な発言ほど報道されていない。特に、「ウクライナの中立化を受け入れる」と言った彼の発言は、ほとんど報道されていない。そして、ゼレンスキーをウィンストン・チャーチルになぞらえたり、その型にはめようとした議員や人間によって彼のもつ本質は脇に追いやられてしまった。
 でも、解決可能な方策をいろいろ打ち出し双方の間でかなり明確になってきている。もし以前からアメリカがそのことを検討する気があったなら、侵略はなかったかも知れない。
 もともと、アメリカには二つの選択肢があった。一つは強硬な姿勢をつらぬき、交渉を不可能とし、戦争に発展させること。もう一つは利用可能な選択肢を追究すること。

 ラブロフ外相は二つの主要な目的を発表した。ウクライナの中立化と非武装化だ。非武装と言ってもすべてではなく、ロシアを標的にした「重火器」武装を排除することだ。ウクライナをメキシコ化するということだ。メキシコは自分の道を選ぶことができる当たり前の主権国家だ。若しメキシコが中国が主導する軍事同盟に参加し、先端兵器や中国製の武器をアメリカとの国境に配備したり、人民解放軍と共同軍事作戦を実施したりしたら、アメリカは絶対に許さない。だから、ウクライナのメキシコ化は実現可能なオプションであった。しかしアメリカは、自分自身が絶対に許さないと考えていることをロシアにやろうとしたのだ。
 もう一つはクリミアの問題だ。クリミア人は満足しているのに、アメリカは「我々は譲歩するつもりはない」と言っている。それが永遠に続く戦争の火種になる。ゼレンスキーは賢明にも「この問題は今後の議論として先送りしよう」と言っている。
 もう一つはドンバスの問題だ。8年間、極端な暴力が行われてきた。ウクライナの砲撃。ロシアの砲撃。地雷だらけ、暴力だらけ。OSCE欧州安全保障協力機構のオブザーバーやヨーロッパのオブザーバーが現地にいて定期的に報告している。報告書は公開されているが、問題は彼らが暴力の原因を解明しようとはしていないことだ。でもマイダン革命以来1万5000人が殺されたと推定される。適切な対応は住民投票だと考えられる。
 侵攻前に可能だったのはミンスク2合意の実施だった。この合意で、ドンバスに何らかの自治権を認めることが定められている。紛争はあっても、連邦制の中に組み込まれているような形だ。スイスやベルギーに見られる。でもアメリカはそれを行おうとせず、好戦的な立場をとった。間違っていたら教えてほしい。主要なマスコミが一度もそのことに言及していないのではないか。
 交渉拒否の公式見解や11月の綱領でその再提示があったことは言及された。交渉の主たる目標は、ウクライナの中立化と非武装化だ。つまりメキシコ式の秩序を選ぶことだ。クリミアについては、ゼレンスキーの立場(後で話合い)で進めればよい。ドンバス地方は、国際的監視のもとで、住民投票をする。ロシアが受け入れるかどうかはわからないけれど、やっていくことが大事ではないか。他のだれかではなく、「私たちになにができるか?」を考えて。
 今我々が注目すべきは、二つの不作為だ。ロシアの弱体化発言があったが、アメリカはこれを取り消してはいない。もうひ一つは、ロシアとは交渉しない。という不作為。
 ウクライナ戦争に有効な発言権を持つ国は二つだ。中国とアメリカだ。でも、止めない。アメリカの思いは、”ウクライナを滅ぼせ、そして、ロシアも国際社会から消えろ”ということだろう。

 ある米政府高官は「我々の発表する内容が、確かな情報である必要はない」「プーチンが何かをする前に先手を打つことが重要だ。それが抑止になるからだ」と発言している。第一次世界大戦ではイギリスが情報省を設立し、情報操作に乗りだした。その時の意図は、情報操作によって、アメリカを戦争に引き込むことだった。ウィルソン大統領は公共情報省を設立し、情報操作によって、アメリカ人がドイツにかかわるあらゆるものを憎むように仕向けた。ボストン交響楽団はベートーベンを演奏しないなどというような…。
 レーガン政権は、「広報外交室」をもっていた。国民やメディアを丸め込むための組織だ。1954年アメリカがグアテマラの民主的な政府を転覆させる経緯をユナイテッドフルーツ社の広報担当者がかなり明確に述べている。その後何十万人を殺すことになる独裁政権はアメリカの支援を受けて樹立された。今度の戦争にも言えることだが、1980年代のニカラグアや中米の戦争、ベトナム戦争などには現地に優れた記者がいて、記事を書いた。でも、オフィスの報道室に行くと、全く違った視点で報道する。それがアメリカのメディアといえる。
 ニューヨークタイムズの真面目な記事を書く論説委員のひとりは、「戦争犯罪人にどう対処すればいいのか?」という記事を書いた。「どうすればいいのか。私たちはお手上げだ。戦争犯罪者がロシアを動かしているんだ。どうやってこの男と付き合えばいいんだろう。」興味深いのは、世論がそのような記事を期待していたから、嘲笑を誘わなかったことだ。
 アメリカで最も代表的な戦争犯罪者はアフガニスタンとイラクへの侵攻を命じた人物だ。ウクライナで、ロシアによる重大な戦争犯罪があったことは否定できない。でも、アメリカは国際刑事裁判所の権威を完全に無視しているのも事実だ。アメリカは世界裁判所の判決を拒否し続けている唯一の国だ。かつてはアルバニアのホシャとリビアのカダフィがアメリカの仲間だったが、二人とも地上から消えた。
 アメリカは、1986年ニカラグアに対する戦争で、世界法廷の判決を拒否し、孤立した。「不法な武力行使」「国際テロリズム」と断罪され、その停止と賠償を命じられた。レーガン政権はその判決に反発、犯罪行為をエスカレートさせた。


 ニューヨークタイムズは社説で、「裁判所の判決は無意味だ。裁判所自体が敵対的な立場だからだ」と主張した。裁判所は、すべての国に国際法を遵守するように呼び掛けただけだったが、アメリカは拒否権を発動した。アメリカは安保理に対して、「国家は国際法に従う必要はない」と発言したことが記録に残っている。総会では、圧倒的多数で可決したにもかかわらず、アメリカとイスラエルは反対した。二国だけ。共和党によれば、国民の分裂を招き、気分を悪くさせるから、そういう歴史は教えるべきではないという。アメリカは「米州機構」のような主要な条約に署名するとき、「ただしアメリカには基本的に適用されない」という留保を付ける。
 アメリカどんな条約に対しても、完全な形で署名することは非常に稀だ。アメリカが条約を批准する場合、ほとんど「アメリカを除外する」という留保をつける。実はアメリカはジェノサイド条約でも、同じ態度を取った。条約が採択されてから約40年後にやっと批准したが、この時も「アメリカには適用されない」という留保を付けた。つまり、なんと今も「アメリカだけは、大量殺戮を行う権利がある」ということだ。
 それが問題となったのは、セルビアへ大規模空爆をおこなったことは戦争犯罪であるとして、ユーゴスラヴィアがNATOを告発したときだ。NATO列強は裁判所が開廷にふみ切ることに合意したが、アメリカは拒否した。結局のところ、アメリカはこの自己免責留保を主張し、「ジェノサイド」の罪から「免責」されたのだ。アメリカだけは、例外的な特権を持ち続けている。
 だから、アメリカは巨大な規模の「世界一のならずもの国家」であり、誰もその足元にも及ばないのだ。他人の戦争犯罪裁判は平気で要求することができる。有名なコラムニストでさえ「戦争犯罪人をどう扱えばいいのだろう?」などと呆れたコラムを掲載することができる。世界でもより文明的とみなされる一部の人間がこの手のすべての出来事への反応を見るのは、実に興味深い。
 バイデンはプーチンを戦争犯罪者と呼んだ。これこそ「類は友を呼ぶ」という好例だ。アメリカはなぜ世界の一部しか経済制裁に加わらないのか理解していない。世界地図を見て制裁国家一覧マップを自分で作って見れば一目瞭然だ。英語圏の人々、ヨーロッパ、そしてアパルトヘイトの南アフリカが名誉白人と呼んでいた人々、つまり日本および旧植民地の数カ国。たったそれだけだ。「なんでお前らの偽善にまきこまれなきゃいけないんだ? なんでアメリアにはそのことが理解できないんだ?」アメリカは文明のレベルをあげて過去の被害者の立場に立って世界を見ることができるようにならなければいけない。

 米国は今、インドを支持している。モディ政権はネオファシスト政権で、インドの民主主義を破壊し、人種差別国に変えようとしている。ヒンズー教の独裁国家にし、カシミールを征服しようとしている。インドはイスラエルの緊密な同盟国だ。でもインドの実態はそれほど進んでいない。中国包囲網にも積極的には参加していない。インドは西側のゲームに関与するつもりはないと言っている。
 アメリカにとってロシアの問題は副次的なもので、最重要課題は中国を包囲することだ。従来の封じ込め作戦はすでに時代遅れだ。大規模な攻撃能力で武装した衛兵国家で中国を包囲しようとしている。衛兵国家に当たるのが、日本、オーストラリア、インド。インドに高精密なミサイルを提供し、オーストラリアには原子量潜水艦の提供するという。実戦配備されれば、誰にも発見されず、2~3日で中国艦隊を破壊できると公言している。中国は前近代的な潜水艦しか持っておらず対応ができない。アメリカのトライデント級原子力潜水艦が配備されれば、一隻の潜水艦で200近くの都市を核で破壊できるという。そして、アメリカはさらに進んだバージニア級潜水艦の配備に移行している。また、対中経済政策も準備中で、改善法は可決した。地球温暖化、パンデミック、核兵器の問題に対処するため中国と協力するのはやめようという。病理学的に見てこれほど狂気に満ちた戦略はない。中国の脅威とは何であるか。非常に残忍で手強い中国政府ではない。オーストラリアのポール・キーティングの記事がある。「中国の脅威は、中国が存在していることにある」という。中国がアメリカの命令に従わないからだ。実は、ヨーロッパもアメリカのキューバやイランに対する制裁を軽蔑し、反対しているが、ゴッドファーザーのつま先を踏んではいけないという理由で黙認している。アメリカのイラク侵攻は、ソ連とナチスドイツのポーランド侵攻と並んで歴史に刻まれるべき侵攻だ。中国は国務省が「成功した反抗」と呼ぶ反抗に従事している。

 国連総会の投票をふり返ると184対2でも、妥協しないのがアメリカだ。モンロー主義はアメリカが南半球を支配する決意表明と言える。1823年のキューバが米国の政策に反抗することに成功したため、アメリカはそれを実行しなければなくなっている。でも中国はキューバよりはるかに大きな国で、うまくアメリカの政策に逆らっている。ジム・マンティスによって策定された対策がある。アメリカはロシアにも中国にも勝たなければならない。でもそれは狂気を超えた話。中国とロシアのどちらかと戦争をする意味は、「知りあえてよかった。文明よさらば。私たちはおしまいだ」。プーチンはアメリカにとびきりの贈り物を差し出した。欧州を金の皿に載せ、アメリカに差し出した。冷戦の全期間を通じて最大の課題は、ヨーロッパが国際情勢において、独立した勢力になるかどうか、いわゆる第三勢力になるかどうかだった。ヨーロッパとロシアの平和的な共存体制をつくり出せるかどうか。もう一つはNATOが実行した「大西洋主義プログラム」と呼ぶものだ。アメリカが命令し、欧州がした従う。プーチンは「欧州ではなく、アメリカが問題だ」と言った。宇宙からだれかがこれを見ていたら笑い転げるだろう。世界で気候変動を止める動きが進んでいたが、環境保護主義者たちは追い払われた。エネルギー企業はほっとして、ハグしてほしいと思っているのだ。
 米政府は、8130億ドルの軍事予算を検討している。ドイツは国防費の上限を撤廃した。軍事産業や化石産業が勢いづいている。ネオ・マッカーシズム一色だ。支配的な報道や権力者の動機に疑問を呈することは反逆者、裏切り者、プーチンの手先と位置付けられる。ジュリアン・アンサンジは国民に明らかにされるべき情報を開示したために、罪に問われ、厳重警備の刑務所に収容され、拷問と認められる扱いを受けているよ。メディアはウィキリークスが暴露したものを嬉々として利用し、大金を稼ぎ、評判を上げた。でも、彼を支持し、彼を保護し、擁護するために動いていない。やったことは利用するけれど、支援しない、足元にへばりついているジャッカルと同じだ。1968年ベトナム戦争のピーク時、マクジョージ・バンディが書いてる。「アメリカがベトナムでやったことに誤りがあったのではないか、また、もっと他の方法があったのではないかという批判がある」「しかし、戦術的な問題を踏み越えて、アメリカの政策に疑問を呈する野人たちもいる。ひどい奴らだ。だが、アメリカは民主主義国だ。彼らを殺すことはしない」。カークパトリック国連大使は「道徳的同等性」という概念を考案した。もしあなたが果敢にもアメリカを批判するなら、あなたは道徳的同等性という罪を犯していることになる」と。「道徳的に世界で最も優れたアメリカを批判する人間は、スターリンやヒトラーと同じ道徳レベルしか持っていない」との論理だ。だから「誰もアメリカを批判する権利はない」と。今もう一つ使われている言葉がある。ホワットアバウティズムだ。(whataboutism)。過去の過ちを挙げて、今アメリカがやっている行動を批判することはホワットアバウティズム(whataboutism)に当たる(論理的に間違っている)と言われ、相手にされないのだ。

 

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