真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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「神道指令」はGHQの”誤解の産物”か?

2021年12月10日 | 国際・政治

 下記資料1は、1935年(昭和十年)一月二十四日、国体擁護聯合会が、各方面に発送した檄文です。
 また、資料2は、皇大日本社(スメラギオオヒノモトシャ)がニ月二十四日に頒布した宣伝はがきです。資料3は昭和義塾が発した檄文です。

 これらの文書は、”出版警察上より観たる「天皇機関説」概況に関する件”と題して、昭和十年三月十五日、警視総監小栗一雄(安倍特別高等警察部長)名で、内務大臣後藤文夫宛て、及び各庁府県長官宛てに送付された文書の一部です。

 これらの資料で、当時の愛国団体が、天皇を現人神とする、明治維新以来の神話的国体観に基づいて、「天皇機関説」はもちろん、国際社会で一般的な民主主義や法治主義を唱える人達をも厳しく攻撃し、それらの”主唱者・支持者・保護者・追随者・盲従者等”を一掃しようと声を上げたことがわかります。そして、その内容は、ほとんどすべて、「天皇機関説」が、天皇を現人神とする、神道の神話的国体観に沿っていないという一点にあります。
 そして、当時の軍や政権も、こうした愛国団体と一体となって、神道の神話的国体観に基づき、自由民権運動や大正デモクラシー等の流れを受け継ぐ考え方や諸外国の法や社会に関する科学的な考え方を否定し、抑え込んでいっただのだと思います。

 その結果、日本は、神道の神話的国体観に基づき、”皇国の威徳を四海に宣揚せんことを期”して世界を相手に無謀な戦争することになったのだと思います。
 だから、 GHQの「神道指令」は、決して高橋四朗教授の言うような、”誤解の産物”などではないのです。


 また、高橋教授は、”「神道指令」の中で、思想面から「国家神道」を支えたとして禁書とされた『国体の本義』にしても、政府は大量に頒布し大々的に宣伝しましたが、国民はほとんど関心を示しませんでした。”などと書いていましたが、問題は国民が関心を示したかどうかではなく、日本の政治が、『国体の本義』に書かれているような、天皇を現人神とする、神道の神話的国体観に基いて統制され、西欧的な立憲主義や自由主義的な考え方をする人達を排除して、進められたことにあるです。
 また私は、高橋教授が”日本と戦ったアメリカは、日本軍の勇敢さを目の当たりにして大変驚きました。日本人をここまで勇敢に戦わせた理由はどこにあるのか。アメリカはそれを「国家神道」にあると判断したのです。”などと書いていますが、とても問題があると思います。日本の兵士は”勇敢”であったと表現しているのですが、それが、日本兵が降伏することが許されなかったことや、天皇のために、死ぬことが兵士に求められていたことを抜きには考えられないことだからです。
 戦陣訓には、”生きて虜囚の辱を受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ”とありました。軍人勅諭には、”義は山嶽より重く死は鴻毛より軽しと心得よ”とありました。
 海ゆかばには、”海行かば 水漬く屍 山行かば 草生屍 大君の 辺にこそ死なめ かへり見はせじ”と歌われています。日本軍兵士の戦いを”勇敢”という言葉で表現すると、そうした皇軍兵士であるが故の、人権無視や人命軽視の側面が見逃されることになると思うのです。
 下記は、「現代史資料 (42) 思想統制」(みすず書房)から抜萃しました。
資料1ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
           美濃部達吉博士、末弘厳太郎博士等の国憲紊乱思想に就いて

○天皇輔弼の各国務大臣に問ふ
 大日本帝国憲法発布の上諭(天皇の裁可を示す言葉)に曰く『国家統治ノ大権ハ朕カ之ヲ祖宗ニ承ケテ之ヲ子孫ニ伝フル所ナリ』『朕カ子孫及臣民ハ敢テ之カ紛更(フンコウ)ヲ試ミルコト得サルヘシ』と。
陸海軍軍人ニ下シ給ヘル勅諭ニ曰く『夫兵馬の大権は朕か統ふる所なれは其司々をこそ臣下には任すなれ其大綱は朕親之を攬り肯て臣下に委ねへきものにあらす子子孫孫に至るまで篤く斯旨を伝へ天子は文武の大権を掌握するの義を存して再中世以降の如き失体なからむことを望むなり』と。
かゝる畏き『天皇親政』の聖詔の前に美濃部博士は『天皇は親から責に任じたまふものではないから、国務大臣の進言に基かずしては、単独に大権を行はせらるゝことは、憲法上不可能である』(有斐閣発行逐条憲法精義512頁)『国務大臣ニ特別ナル責任ハ唯議会ニ対スル政治上ノ責任アルノミ』(同上、憲法撮要、310頁)といふ。
天皇『輔弼』の国務大臣の責任とは果してかくの如きものなりや?

○枢密院議長以下顧問官に問ふ
 美濃部博士はいふ『要するに、わが憲法に於けるが如き枢密院制度が世界の何れの国に於いてもその類を見ないものであることは此の如き制度の必要ならざることを証明するもので、わが憲政の将来の発達は恐らくはその廃止に向ふべきものであらう』(岩波書店発行、現代憲政評論 128頁)と。
かくの如き言論の内容を妥当なりと思考せらるゝや? 殊にこの論理をそのまゝ『世界何れの国に於いてもその類をみない』現人神  天皇統治せさせ給ふ日本国体に適用せるものが美濃部博士の本状に一端を指摘せる大権干犯国憲紊乱なることを銘記せられよ──

○貴衆両院議長以下議員に問ふ
 美濃部博士はいふ『帝国議会は国民の代表として国の統治に参与するもので天皇の機関として天皇から其権能を与へられて居るものではなく随つて原則としては議会は天皇に対して完全なる独立の地位を有し、天皇の命令に服従するものではない。』(有斐閣発行 逐条憲法精義、179頁)『而も議会の主なる勢力は衆議院にあり』(東京朝日新聞昭和十年一月三日所載、現代政局の展望)と。
かくの如きが天皇の『立法権』に『協賛』し奉る帝国議会の憲法上の地位に対する正しき解釈なりや。

○ 司法裁判所検事局に問ふ
 美濃部博士はいふ『裁判所は其の権限を行ふに就て全く独立であつて、勅命にも服しない者であるから特に、「天皇ノ名ニ於テ」と曰ひ云々』(有斐閣発行、逐条憲法精義571頁)と。司法権を行使する裁判所の権能なるものは果して斯くの如きものなりや?
猶美濃部博士は『治安維持法は世にも稀なる悪法で』『憲法の精神に戻ることの最も甚だしいもの云々』(岩波書店発行現代憲政評論208頁210頁)といひ末弘博士は『法律は如何にそれが法治主義的に公平に適用されようとも、被支配階級にとつては永遠に常に不正義であらねばならぬ』ものにして『法律』と『暴力』との関係は『力と力との闘争であつて正と不正との闘争ではない』(日本評論社発行、法窓漫筆、103頁106頁)といひ『小作人が何等かの手段により全く無償で土地の所有権を取得出来るならば、彼等をしてこれを取得せしめんとする主張運動は正しい』(改造社発行、法窓閑話 154-5頁)『小作人が唯一最後の武器として暴力に赴かんとするは蓋し自然の趨勢なり』(日本評論社発行、法窓雑話 98頁)といへり。かくの如き言論と其著書等を放置しつゝあることは、『司法権威信』の根本的破壊にあらずや?

○陸海軍現役、在郷軍人に問ふ
美濃部博士はいふ『統帥大権の独立ということは、日本の憲法の明文上には何等直接の根拠が無い』『立憲政治の一般的条理から言へば統帥大権の独立といふやうな原則は全く認べきものではない』(日本評論社発行、議会政治の検討、106頁127頁)と。末弘博士はいふ『軍隊要するに……一の厄介物、謂はば「已むを得ざる悪」の一に外ならない』(改造社発行、法窓閑話、399頁)と。
かくの如きは陸海軍軍人に給へる勅諭に『其大綱は朕親之を攬り肯て臣下に委ぬべきものにあらず』と詔らせ給ひたる統帥大権の憲法上の規定第十一条第十二条及軍令を原則的に無視否認し『天地の公道人倫の常経』詔らせ給ひたると皇国軍隊精神に対する無比の冒瀆として之を放任するは軍紀の紊乱にあらずや。

○学者教育家教化運動者に問ふ
 美濃部博士はいふ『いはゆる思想善導策の如きは、何等の効果をも期待し得ないもので、もしそのいはゆる思想善導が革命思想を絶滅しようとするにあるならば、それは総ての教育を禁止して国民をして、全く無学文盲ならしむる外に全く途は無い』(岩波書店発行、現代憲政評論 431頁)
かくの如き言論を放置することはそれ自身学術と教育との権威を蹂躙するものにあらずや?

○神職神道家に問ふ
 美濃部博士はいふ『宗教的神主国家の思想を注入して、これをもつて国民の思想を善導し得たりとするが如きは、全然時代の要求に反するもので、それは却つて徒らにその禍を大ならしむるに過ぎぬ』(岩波書店発行、現代憲政評論、433頁)かくの如き言論を放置することはそれ自身皇国々体の本源惟神道(カンナガラノミチ)の冒瀆にあらずや?

○岡田首相、松田文部大臣、小原司法大臣、後藤内務大臣、
 林陸軍大臣、大角海軍大臣、外全閣僚に問ふ
 東京帝国大学名誉教授、国家高等試験委員、貴族院勅撰議員たる美濃部博士、又東京帝国大学法学部長たる末弘博士の思想に就いては既に指摘したが、同じく東京帝国大学教授、国家高等試験委員たる宮沢俊義氏は日本臣民として『終局的民主政=人民主権主義』を信奉宣伝し(外交時報、昭和九年十月十五日号参照)横田喜三郎氏は『国際法上地位説を唱へて『国家固有の統治権・独立権・自衛権を否認』(有斐閣発行、国際法上巻46─50頁参照)しつゝあり。此等幾多の国憲国法紊乱思想家等を輦轂(レンコク)下の帝国大学法学部教授及国家高等試験委員の地位に放置し、その兇逆思想文献を官許公認しつゝあるといふことは、国務大臣並に各省大臣としての『輔弼』『監督』の責に戻る所なきや?

○元老重臣に問ふ
 前記の如き大権干犯国憲紊乱思想家たる美濃部博士、末弘博士等を現地位に放置することによって人臣至重の輔弼の責任を果し得らるゝや?

○全国日本主義愛国団体同志に問ふ
 本聯合会加盟団体は美濃部博士、末弘博士等は日本国体に反逆し天皇の統治=立法・行政・司法・統帥大権を無視否認せる不忠凶逆『国憲紊乱』思想の抱懐宣伝者として、末弘博士は先に告発提起を受け時効関係にて不起訴となりたる実質上の刑余者なるが、斯るものらが活然として帝国大学教授の国家的重大地位にあり何等の処置をも受けざる所にこそ現日本の万悪の禍源ありと信じ、屡次共産党事件は勿論華府倫敦条約締結、満州事変、五・一五事件激発の思想的根本的責任者たる彼等に対する国法的社会的処置を訴願し其の急速実現を期するものなり。希くは本運動の対外国威宣揚不可避の先決予件たる国内反国体拝外奴隷思想撃滅──国際連盟脱離、華府条約廃棄の思想的徹底の内政改革に対して持つ綜合的重大性を確認せられこの目的貫徹の為めに挙つて参加協力せられむことを!
                                    東京市芝区田村町二丁目内田ビル
                                               国体擁護聯合会
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                   皇 雑 観
                                 皇大日本社(「スメラギオオヒノモトシャ)
      ✕ 
博士の著書を読まずして攻めては見たものゝ専門的に堂々論じられて粛としてきゝ入ること約一時間・・・感極まつて(バリザンボウ)を御消し召さる華族様
      ✕
穴だらけの戸障をたてられて中をのぞけなかった目暗(メクラ)が沢山居たと……貴族院に!
      ✕
天皇中心主義を一つの信仰としか見得られぬ不具宗教家がまだまだ日本に沢山ゐる。
      ✕
美濃部博士の憲法論を是認せねばならぬ所に皇国憲法の不備がありはせないか。
      ✕
皇国哲学者の急造! 是が日本学界に投ぜられた一石である。

    美濃部博士の天皇機関説は
      皇国の前途を誤る。
 世に皇国を識らざる学者の学説程皇国民に取つて危険千万なことは無いのである。美濃部博士の如きは世に謂ふ学問病者である。彼は皇倫理観の大道を弁へずして西洋人生観から法の解釈を試みんとする不徳学者に過ぎざることを最も雄弁に一身上の弁明として貴院に物語つたのである。吾が憲法で示された天皇は決して他国の憲法にある元首と同視申上げ可き御筋合のものではあらせられないのである天皇は実に宇宙創造の支配の御神の御化身であらせられ憲法第一条にに示されたる条文は大権の御行使に過ぎないのである。憲法の上諭にも「国家(皇国)統治の大権は朕が是を祖宗に承けて子孫に伝ふ」と詔せられてゐる如く其の権利の厳然たる事日月の如く明かである。
 神の御意示、天皇の御意示を解せずして只徒らに機関説を主張するが如きは神聖なる絶対の大権を冒すものと云はねばならない。
資料3ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー                       
                 『天皇機関説』の殲滅へ

今回諸君の前に、本文を発表する事を得たるを、至極欣快と存ずるものである。即ち、近時漸く国家的大問題化したる『天皇機関説』問題に関し、該、『天皇機関説』の主唱者・支持者・保護者・追随者・盲従者等反国体的なる兇逆者の一聯が、其の『毒説』と共に、皇国より一掃せらるゝ時、数年に亘って、□漫、跳梁祖国の人心を惑乱せしめたる悪思潮が全く払拭せられ、君民一体の真個日本の出現を、眼前近く想像し得らるゝが故である。
 今や、多年、全国民怨嗟の対象なりし、吾人同志が運動の対象たりし、政治、経済、産業、教育、宗教等各部門の兇悪なる点に於て尤も頭領と目すべき非国民的なる者、即ち、尤も不忠、不義なる者が『天皇機関説』の主唱者・支持者・追随者・保護者・盲従者として一団となりて其の正体を吾人の前に現はしたのである。
 昭和維新の達成を念願とする同志諸君、勇奮、躍進『天皇機関説』を囲繞(イニョウ)する一団の殲滅に依つて、年来所期の目的達成の一歩獲得、即ち、昭和維新の暁闇を衝いて輝く黎明の栄光を拝するを得るの日の近きを信じらるゝであらう。
 特権階級、政党、財閥、官僚等の累年の積悪、百行万悪が『天皇機関説』を主唱・追随・支持・保護・盲従する事に根源するものなるは明かなり。
 彼等の跋扈、即ち自由思想、唯物観念の滲透は国体観念の撹乱、日本精神の弱耗喪失を来し、延いては鬼畜思想共産主義蔓延の温床となり、無辜の良民をして生活苦の脅威に爛額狂奔せしめる、今日の如き社会相を現出せしめたるものにして吾人の目的昭和維新の達成とは、如是社会相を是正するにある。吾人の五体にやどる□祖先伝統の正義の熱血は、至尊稜威の天地を震憾する叫びを感得、信奉し臥薪嘗胆、此の一事の為に活き来りたるもの。
 天にも勝たん、盛んなる悪に抗し無為に倒れたる幾多の同志の骸を越へて陣頭に起つ戦士諸君よ。敵は万悪の煙幕の裡より明瞭に其の姿を現はした。即ち、『天皇機関説』を繞る一団にして極めて少数である。
   嗚呼、天なり、命なり。
今、この秋、彼等暴悪無頼なる一団が遵奉せる妄説『天皇機関説』粉砕、一掃に協力一致の猛闘を切望するものである。
                                                   昭和義塾
 

 


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