3月末に、西ロンボクの南レンバール村で、マングローブ林の持続可能な観光利用について考えるワークショップを開催しました。
(ワークショップの様子はこちら。ただし、インドネシア語)
このワークショップを実施するのは、3か所目です。(1回目:東ロンボクのギリ・ランプ)(2回目:バゲッ・クンバール)
WORKSHOP PARIWISATA MANGROVE BERKELANJUTAN LEMBAR SELATAN, Lombok barat, NTB.
この南レンバール村のマングローブ林には、私はとても思い入れがあります。
私が初めてここのマングローブ林を訪れたのは、2017年7月のことでした。
その時は、マングローブ林でのごみ調査をやりたいと考えていたのですが、その後、マングローブ林で環境教育をやりたいなぁと思うようになり、昨年からマングローブ林環境教育プログラムを開発したり、マングローブ林での持続可能な観光について考えるワークショップを開催したりしてきました。
私が最後に南レンバール村のマングローブ林を訪れたのは、2020年1月でしたが、その時には悲惨な光景が広がっていました。
Beffor Afterの写真をご紹介しましょう。
その1:Beffor:2017年10月
After:2020年1月
⇒まあ、なんと言うことでしょう。トレイルが途切れてしまいました。
その2:Beffor:2017年10月
After:2020年1月
⇒同じく。怖くてとても歩けません。
この光景を見て、「あぁ、やっぱり」と思った私は、地域の人と一緒に持続可能な観光について考える場を作りたい、と思ったのです。
この場所は、州政府が整備してくれたのですが、村がきちんと管理できずにこんなことになってしまいました。
今回ワークショップを実施するにあたり、ゆいツールは村のアドバイザーになっているファオザンさんと知り合い、村役場で村長さんと打ち合わせを重ね、入念な準備を行いました。
ここはすでに大きな失敗をしているため、ワークショップがうまくいくかどうかとても気をもみました。
***ワークショップの内容***
「持続可能な観光について考えよう!」
3月29日(火)9:30~12:30
1.「持続可能な観光ってなんだろう?」プレゼンテーション(ティウィより)
・ツーリズムとは?
・マングローブ林は観光地に最適!
・多くの村人が考えるマングローブ観光とは
・紹介:日本のマングローブ観光の発展→西表島の事例と沖縄東村やんばる自然塾の事例
・マングローブ観光の失敗事例(ロンボク)
・観光地によくある問題(インドネシア)
・観光をサステイナブルにするということ
2.「マングローブ林観光を持続可能に発展させるために必要なことは?」
【ディスカッション1】
Q1.「あなたの村の近くのマングローブ林に、観光客を呼ぶためにできることはなんですか?それらは、次の誰ができますか?」
地方自治体や州政府、村役場、民間企業・民間団体、地域住民・子供たち、旅行者…
●マングローブ林環境教育の好事例(沖縄)の紹介
オリジナルビデオ教材「マングローブ・トレッキング」「マングローブ・カヌー」(ビデオはインドネシア語の字幕つき)
【ディスカッション2】
Q2.「ビデオから学べたことはなんですか?」
3月30日(水)9:30~11:30
3. サステイナブル・ツーリズム(持続可能な観光)の国際基準の紹介(ティウィより)
【ディスカッション3】
Q3. 「次のテーマについて、持続可能な観光として発展させるにはどうしたらいいか考えてみよう」
A. カフェやレストラン
B. カヌープログラム、トレッキングプログラム
C. 管理団体の設置
******
今回の参加者は、村の観光チームメンバーや役場スタッフ、観光事業に携わっている人たち(貸しボートをしている漁師なども)で構成されていました。1回目のギリ・ランプでは、PKKLというグループメンバーが中心で、2回目のバゲッ・クンバールでもアグスさん率いる観光チームメンバーが中心だったのですが、今回は、もう少し幅広い人たちが参加しました。
その代わり、全体を束ねる人が不在で、リーダーシップをとれる人の育成が必要だと感じたボランティアもいました。
さて、ディスカッション1では、次のような意見が出ました。
Q1.「あなたの村の近くのマングローブ林に、観光客を呼ぶためにできることはなんですか?それらは、次の誰ができますか?」
地方自治体や州政府、村役場、民間企業・民間団体、地域住民・子供たち、旅行者…
●グループ1
⇒地元の料理を販売するための屋台(村役場・地域住民・旅行者)
⇒案内板の設置やごみに関するルールづくり(村役場・地域住民・若者たち・旅行者)
⇒観光地に人を呼ぶため、恒例イベントの開催(地方自治体や州政府・村役場・民間企業・民間団体・地域住民・子供たち・旅行者)
⇒地元の人たちへの外国語教育(地方自治体や州政府・村役場・民間企業・民間団体・地域住民・子供たち)
⇒乗馬施設(村役場・地域住民・旅行者)
●グループ2
⇒カヌーやボートレースの開催、アヒル捕獲競技会などの娯楽(地方自治体や州政府・村役場・民間企業・民間団体・地域住民・子供たち・旅行者)
⇒生演奏の定期開催(村役場・地域住民・子供たち)
⇒マングローブ林近くでのキャンプ&夜間にカニやエビを捕まえるアクティビティ(地方自治体や州政府・村役場・民間企業・民間団体・地域住民・旅行者)
⇒塩づくりパッケージ(地方自治体や州政府・村役場・民間企業・民間団体・地域住民・旅行者)
⇒ツーリスト自身がカニなどを捕まえて料理をするパッケージ(地方自治体や州政府・村役場・民間企業・民間団体・地域住民・旅行者)
⇒自然について学ぶ学校(特にマングローブ林に関する情報)(地方自治体や州政府・村役場・民間企業・民間団体・地域住民・子供たち・旅行者)…なぜなら、マングローブ林の近くに住んでいるにも関わらず、マングローブについて知っている住民がほとんどいないため。
(発表する参加者)
●グループ3
⇒さらなる資金提供
⇒バナナボートなどのアトラクションやフィッシュケージ、水上マーケット、カヌーやボートの貸し出しなど(地方自治体や州政府・村役場・地域住民)
⇒カニ捕獲大会などの開催(村役場・地域住民・旅行者)
⇒ボートの飾り付け(村役場・地域住民・若者たち)
⇒マングローブの植林(地域住民・子供たち)
⇒宿泊施設の提供(村役場・民間企業・民間団体・地域住民)
●グループ4
⇒水上ホームスティ(村役場)
⇒食事処(地域住民)
⇒駐車スペースの提供(若者たち)
⇒マングローブの苗木づくり(地方自治体や州政府)
⇒マングローブトレッキング(地方自治体や州政府・民間企業・民間団体)
⇒小さな島をめぐる遊覧船(村役場・地域住民・若者たち)
⇒毎年恒例のイベント開催(地方自治体や州政府・村役場)
その後、沖縄でのマングローブ林環境教育プログラムを紹介したビデオを鑑賞し、グループ毎に感想をディスカッションし共有しました。
(ビデオ「マングローブ・トレッキング」の一部)
(ビデオ「マングローブ・カヌー」の一部)
Q2.「ビデオから学べたことはなんですか?」
●グループ1
「沖縄と南レンバール村のマングローブ林はとても似ている」「沖縄のように、マングローブ林観光のための施設を作るべきだ」「マングローブトレッキングのための施設を改善する必要がある」「南レンバール村のマングローブ林は5㎞と長いため、カヌーではなくボートが必要」「地域住民が経験と知識を身につけガイドになる」「この沖縄のビデオは、南レンバールの住民と村役場が、マングローブ林観光を改善するためのよい教材である」「トレイルを作る際には、丈夫な木材を選ぶことに十分注意すべきだ」
●グループ2
「沖縄と南レンバール村の自然は似ている」「トレイル建設など多くの支援が行政からあったが、それを管理するための知識や気づきが住民側になかった」「マングローブ林に情報板が設置されていない」「マングローブ林でのプロのツアーガイドのトレーニングの必要性」「(壊れてしまった)トレイルの改善」「ツーリストへのおみやげづくり」
●グループ3
「マングローブ林の既存施設を改善する」「マングローブ林の自然生息地を維持する必要がある」「マングローブツアーガイド」「案内板」
●グループ4
「旅行客のためのトレイルが必要」「カヌーや小さなボートが必要」「チケット販売窓口が必要」「施設管理のための協力が必要」
このグループで発表した男性は、2013年から2016年にかけてある観光グループのリーダーでした。彼は、南レンバール村でマングローブ林の施設が管理されてこなかった問題について言及しました。
400mのトレイルの建設が、イタリアからの支援で進められていました。トレイルは建設されましたが、管理などについてはとても不明瞭でした。なぜなら、彼は当時の村の行政から観光グループのリーダーに任命されたにもかかわらず、何も関与させてもらえなかったからです。
ちなみに、現在の村長は2年前に交代しています。当時の予算報告はとても不明瞭なものだそうです。
2日目は、持続可能な観光について具体的な国際基準の要約を学んだ後、最後のディスカッションをしました。
(プレゼンをするティウィ:手前)
Q3. 「次のテーマについて、持続可能な観光として発展させるにはどうしたらいいか考えてみよう」
A. カフェやレストラン
B. カヌープログラム、トレッキングプログラム
C. 管理団体の設置
●グループA:カフェやレストラン
-カフェ、レストランのための施設の準備、および笑顔と挨拶で訪問者を歓迎する
-バンド/ライブミュージックなどのエンターテイメントの提供
-原材料の品質を維持し、南レンバール村由来の料理を提供する
-各レストラン(食事処)でお土産を提供する
-地域住民が労働力になる
-レストランからの有機廃棄物を堆肥にし、プラスチックなどのごみを収集してお金に代える
-マングローブの森の河口に浮かぶレストランを作る
●グループB:カヌープログラム、トレッキングプログラム
-カヌーではなくボートを使う
-登録制にする
-観光客向けの案内板の提供
-外国語が話せるガイドがフレンドリーにゲストを歓迎する
-ライフジャケットなどの安全装置の提供
-ボートに乗る前に安全上の指示を与える
-伝統的な服を着る
-ボートデコレーションコンペ
-トレッキング
-ガイドトレーニング
-マングローブ苗木づくり
グループC:管理団体の設置
-すでに、いくつかの管理を担当する観光チームと村営企業が設立されている
①インフラストラクチャ管理
-廃棄物管理チームの編成と埋め立て施設の建設
-守衛所及びインフォーメーションセンター
-快適なトイレの提供
-既存のインフラ施設の改善
②飲食の管理
-飲食を提供する屋台の形状を揃える
③南レンバール村エコツーリズムの管理に関する村レベルの規制の作成
④BKD(村レベルの治安機関)を設立することによるセキュリティ管理
⑤環境保全チームの結成
⑥6か月ごとにトレーニングを実施
ワークショップの最後は、村のアドバイザーであるファオザンさんからのコメントで締めくくられました。
(赤いシャツの男性がファオザンさん)
●今回のワークショップは参加者のほとんどが積極的に参加しました。
●提示された資料は、南レンバール村の観光管理に非常に役立つものです。
●ディスカッション1では、持続可能なエコツーリズムを実施するには、すべての関係者の関与が必要であると結論付けられました。
●ディスカッション2(沖縄のビデオの感想)では、先進国によるマングローブ観光の実例を学び、ガイドがマングローブ林の生態を十分に理解していることや安全を最優先にしていることなどがわかりました。また、マングローブ観光の理想的な管理には沖縄のように非常に長い時間がかかることもわかりました。そして、そのためにはまず地域住民を動かす必要があります。
●このワークショップは、南レンバール村での持続可能なマングローブ観光活動の管理に役立ちます。
南レンバール村はゆいツールの活動を積極的に受け入れます。なぜなら、25年以内に南レンバール村エコツーリズムを発展させ、魅力的なエコツーリズムに満ちたものにすることができるという夢を持つことができたからです。
報告は以上です。
考察については、後日改めて書きたいと思います。
(山)
(集合写真)
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