![]() | フェルマーの最終定理 (新潮文庫)サイモン シン新潮社このアイテムの詳細を見る |
高校の授業で習う数学、数式に対して、「こんなの覚えて、将来、何の役に立つの?」「こんなの分からなくたって、生きていける」などと、愚痴をこぼした人は少なくないだろう。
しかし、サイモン・シン著「フェルマーの最終定理」を読むと、数学が面白そうだと思えてくる。
数学者たちは「エレガント」という表現を使うが、数式が成り立つ時の「筋が通った感じ」は「エレガント」という形容がふさわしいと思う。
「フェルマーの最終定理」は、約350年前に、数学者フェルマーによって示された数式である。フェルマー自身はこれを証明したと書き残したが、証明の具体的な方法は不明となった。
この定理は、一見、簡単に証明されそうに見える。
しかし、そうではなかった。
さまざまな数学者が、証明に挑戦したが、失敗に終わっていたのだ。
サイモン・シン著「フェルマーの最終定理」は、フェルマーの最終定理を解くことに挑戦した数学者たち、そして、ついに証明に成功した数学者アンドリュー・ワイルズを追っている。
数式の細かい部分は理解できないが、数学者たちがそれぞれどのようなアイデアを使って証明に挑戦したかは分かる。
ワイルズによる証明も、一筋縄ではいかなかった。
「フェルマーの最終定理を証明した」と公表し、メディアが報じたのち、欠陥を発見するのだ。その欠陥を補わなければ、過去の挑戦者たちと同じように、ワイルズも失敗に終わるかもしれなかった。
しかし、ワイルズは、欠陥を補い、証明を完成させる。
その過程には緊迫したドラマがある。
「フェルマーの最終定理」に人生をかけた数学者たちは、多くの人は失敗に終わったわけだが、それでも幸せだったにちがいない。
ワイルズは、最終定理を証明した後、「フェルマーのように、私をしっかりと捉えて離さない問題にはもう出会うことはないと思うのです」と言っている。
それほどまでに情熱を注いだものだった。
人生をかけるほど夢中になれるもの。
それに出会えたことが素晴らしい。