![]() | インタビュー術! (講談社現代新書)永江 朗講談社このアイテムの詳細を見る |
永江朗著の「インタビュー術」は、タイトルどおり、「インタビューの準備」「インタビューする際の注意点」「インタビューのまとめ方」などをまとめている。
インタビューの「術」=手法を紹介した本だ。
メディアで仕事をしている人にとっては、「手法」の部分は、取り立てて注目するような内容は盛り込まれていないと思う。
どんな仕事にも当てはまるかもしれないが、基本的なことをいかに実践するかが、良い成果をだすための前提だろう。
考えさせられたのは、この本の根底に置かれている「インタビューとは何か?」という問いだ。これは、「インタビューする人(インタビュアー)」と「インタビューされる人(インタビュイー)」の距離の問題につながる。
本書では、「インタビューとは何か?」を考える際の参考として、テレビのインタビューの事例が挙げられている。永江氏は、とりあえずの大別として、テレビのインタビューを「田原総一郎」型と「黒柳徹子」型に分けて、その特長を説明する。
田原総一郎は、「斬り込み型」。
討論番組を仕切ることが多いが、「郵政民営化」などのテーマについて、何がテーマなのか、どういう状況になっているかを説明し、ゲストの位置(賛成派、反対派)を明確にする。そして、「あなたこういいましたね」「こうしましたね」「あなたの言っていることに、こんなことを言っている人がいますよ」などと畳み掛け、相手に切り込んでいく。
黒柳徹子は、「引き出し型」
「徹子の部屋」の場合、事前にゲストのことを細かく調べているが、黒柳は「なんでも、あなたは、○○なんですってね」などと、きっかけをつくっていく、ゲストはそれを受けて、「そうなんですよ。実は・・・」と話を引き出される格好になる。
単純な分類だが、インタビュアーの役割が分かりやすい。
ただし、紙媒体の場合は、実際のインタビューでのやりとりから、内容が取捨選択され、再構成して、掲載される。実際のインタビューで「インタビューする人」「される人」の距離をどうするかというポイントに加えて、掲載用の原稿としてインタビューをまとめる際にも「する人」「される人」の距離感がポイントになるだろう。
永江氏は「インタビューは虚構だ」と指摘するが、「その虚構をどうつくるか?」で読み応えが決まる。そして、それには、インタビューする人の「距離感」の捉え方が関わっていると思う。
最近、「これは、よく聞き出したなぁ」「面白いなぁ」と感動するようなインタビューに出会っていない。ただ「旬な人だから」の1点でつくったインタビューでは、つまらない。
インタビューする人が、自分自身の立ち位置や、相手との距離感を考えることなく、「ただ仕事だから、こなしている」という姿勢が滲み出ている気がする。
インタビューする人、される人の間に、良い緊張感が生まれているようなインタビューが読みたい。