「学校に行きたい」
「お医者さんになりたい」
いわゆる発展途上国の子供たちを追ったドキュメンタリー番組で、
家の仕事を手伝ったり、兄弟の面倒をみていて学校にいけない子どもが、
こんな夢を語っていたのを見た記憶がある。
栄養状態がよくないためか、年齢のわりに、小柄な体。
よれよれのTシャツに、ぼさぼさの髪の毛、
しかし、黒い瞳がキラキラと輝き、笑っていた。
日本の子供たちは、どうだろう?
死んだような瞳で、教室にいないだろうか。
テレビに出てきた子と同じように
「学校に行きたい」と思うことは、ないかもしれない。
さまざまな事情で、「学校に行きたくない」と思う子は、
けっこうな人数いるようだ。
途上国の子と比べて、日本の子供たちは、夢を描けていないのではないか。
少し心配になってきた。
「掃除婦のための手引書 ルシア・ベルリン作品集」
これは、すごい。なんなんだろうと、驚いた一冊。
暴力、貧困、ネグレクト、ドラッグ、アルコール中毒、生と死…。
物語に描かれている世界は、厳しい。
苛刻な生活環境を背景にしている。
しかし、暗くはない。
「幸せ」とはいえないかもしれないが、登場人物に悲壮感を感じない。
日々の暮らしの中で、むちゃくちゃになりながらも、
イキイキとした生命感を感じさせる。
温かい思いが漂う。
1冊、読み終えても、なんなんだろう、と再び、思う。
そして思い出したのが、冒頭に紹介したテレビのドキュメンタリーだ。
途上国の子どもたちが将来の夢を語り、笑った顏だ。
本書を読んだ後には、生きていること、そのものの輝きを思い出す。
「生」の隣り合わせに「死」があることも確認させられる。
掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集
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