Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

隠された本音

2013-12-03 01:00:00 | 雪3年2部(負傷後~淳秀紀遠藤三つ巴)
「??」



淳は突然切られた雪からの電話を、不思議そうな顔をして暫し眺めていた。

携帯が壊れたのかと、様々なことを試してみる。

ボタンを何度も押してみたり、耳から離してみたり‥。

  

そんな彼の様子を、少し離れたところから父親は見ていた。

ここは淳の実家、青田家の本家である。

「どうした?」



父親からそう問われた淳は、「何でもありません」と答えた。

実は先程から電話の内容が少し聞こえていた彼の父親は、

淳に「彼女か?」と続けて聞く。



はは、と幾分照れた仕草で頭を掻く息子に、

「図星だな?」と父は言う。



「美人か?」



からかうようにそう言った父親に、淳は含みを持たせた表情でフフンと笑った。



さすが私の息子、と笑う父親に淳も笑い返し、二人は暫しその時を楽しんだ。


ふと、父親はあることを思い出した。淳の元に送った、三つの箱のことだった。



「この間送ったプレゼントだが、ちゃんと亮に渡してくれたか?」

そう聞いた父親に、「はい」と言って淳は頷く。



元気にしていたかと父親は亮と静香の様子について聞いた。

家政婦に「プレゼントは出来るだけ直接渡すよう淳に言ってくれ」と頼んでおいたのだ。

しかし淳は父親の方を見ることなく、「だと思いますよ」と間接的な言い方をした。

「だと思いますよって、渡してくれたんじゃなかったのか?」



父親の問いに、

「ええ。宅配便でね」と淳は冷静に返した。



そう言ったきり、手に取った雑誌に目を通す息子を、

父親は複雑な思いで見つめた。



学生時代、兄弟のようにいつも一緒に過ごしていた姿が脳裏に浮かぶ。

淳の父親は、そんな彼らの姿を目にする度に安堵したものだった‥。



淳、と彼は名前を呼ばれ、

雑誌から視線を上げて父親の方を窺った。



「私は心からお前と亮が、以前のように仲良くしてくれることを願っているんだ。

昔はあんなに仲が良かったじゃないか」




「どうしてこうなってしまったんだ‥」

俯いてそう言葉尻を弱めた父親に対して、淳はハッキリとした口調で言った。

「仕方のないことですよ」



「皆大学に上がったり社会に出たり、それぞれの生活があるんです。

疎遠になるのは自然なことだと思いますよ。長い間離れているとぎこちなくなることもありますし」




淳は立ち上がり、父親の方へ向き合いながら言葉を続けた。

腕を組みながら父を俯瞰する彼は、この空間の主導権を握っているようにも見える。

「そう心配するほどのことでもありませんし、あまり気にされないで下さい」



淳はそう言うと、最後は父親の方を見て微笑んだ。

万人に受ける、端正な彼が浮かべる柔和な笑顔。

父親は彼が幼い頃から、何度もその笑顔を浮かべているのを見たような気がした。

「‥そうか」



父のその言葉を聞いた後、淳はちょっと出掛けてきますと言って支度を始めた。

親子は別れ際の挨拶を交わし、最後に淳が父親の方を振り返る。

「それでは、行ってきます」



淳の浮かべたその笑みは、どこか嬉しそうな表情に見えた。

自らの言葉で父親の意見を看破した、その満足感が滲み出たような笑みだった。


淳が出て行った後、父親は眼鏡を机に置くと、目元を手で覆って俯いた。

はぁ、と深く息を吐く。



とある昔の記憶が、蘇っていた。

あれはいつだっただろうか、確か親戚のバースデーパーティーか何かの時だったはずだ。



駐車場で妻と淳を見送った後、まだ健在だった河村教授に呼び止められたのだ。

あの時教授は言った。幼い日の淳についての見解を。

「本音が分からないだろう?」



淳の本音‥。

河村教授の言葉から、引き出される記憶があった。

青田家にて、淳が夏休みの宿題を皆でやろうと子供達を大勢連れて来た時のことだった。

確か子供の内の一人が、飾ってあった妻の額縁を欲しがったのだ。

昔のものだったし、妻自身もう必要ないと言っていたものなので了承したのだが、あの時淳は頑なに拒んだ。

「嫌だ!」



我を張って譲らない淳に対して、父は教え諭した。

「こうあるべき」という理想の姿を示し、自らそこへ向かうよう彼を説得した。



そしてその説得の末、淳は父に対して謝った。

幼い頃から帝王学を教えこんできた成果が現れたのだと、淳の根底にある歪んだ芽を摘み続けてきた結果だと、

そう思って喜ばしかったのを覚えている。



しかし事態は急変し、結局額縁は割れてしまった。

淳自らの手で壊れるよう仕向けられ、バラバラに砕け散ったのだ。



あの時目にした奇妙な笑みを、



あの時感じた不穏な胸騒ぎを、



未だに父は忘れることが出来ない。


彼の本音を知ることと引き換えに、あれ以来歪んだ芽が出ることは無くなった。

今彼の根は、彼の核(コア)は、どれだけ根深く張られているのだろう。

きっと地中深く、暗く静かなところに、彼の本音は隠されている。
















彼らを引き取ったその日から、

河村亮と河村静香は、淳を救うための一縷の望みだった。一筋の希望だった。

けれど‥。





彼らさえ淳を救うことの出来なかった今、一体誰が彼を変えてくれるのであろうか?


彼以外誰もいないその空間から、彼を導き、光の当たる場所へ連れて行ってくれる人間が、


いつか現れてくれるのだろうか?


暗く静謐な彼の世界に灯る、一点の光明のような誰か。





あなたは、淳の心の扉の鍵を持っていますか?


そこに沈められた彼の本音を受け入れ、抱きしめることが、出来ますか?







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<隠された本音>でした。


青田淳という人間は「決して本音を語らない」という側面を描いた、前回と今回だったのではないかなと思います。

前回の秀紀兄さんに対する反応も然り、今回の亮に対する反応も然り。

そしてそうなってしまった原因、生い立ち、事件を過去回想で描き出したんだと解釈しています。


「俺の彼女」として特別な存在にはなり得た雪ですが、未だ彼の本音を聞くことは出来ていません。(3部休載中の今の時点では、ですが)

最終回への道のりで、淳の本音が吐露されることを願いつつ、最後にメッセージを込めてみました。

しかし青田父が語り部のようになってしまい、少し複雑‥(^^;)


次回は<引き合う二人>です。

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