グイグイ酒を飲み干す雪と、そんな雪を見ながらゲラゲラ笑う亮‥。

酒も進んで三人三様の感情が揺れ、円卓はカオスに歪む。
そんな中淳は目に余る言動の亮に顔を顰め、ついに釘を刺した。
「軽はずみが過ぎるのは何年経っても変わらないな」

冷然とそう言葉を続ける淳を、亮は笑った。
「は?何でオレが変わんなきゃなんねーの?こういうのも悪かねぇ。姉貴の気分がちょっとは分かるぜ」
「わざわざ居座ってそんなことが言いたかったのか?」

淳の問いに、亮は首を横に振った。
「いや〜居座ってみるもんだ。みっともねー姿散々見せてもらうわ散々災難受けるわで‥」

収穫だったと言わんばかりに亮は口元を緩めた。
そんな彼に向かって、淳は淡々と言葉を返す。
「最後まで自分の非は認めないんだな」

二人の間にキリキリとした緊張の糸が張り詰められて行く。
強い眼力で亮が思いを口に出す。瞬きもしなかった。
「元々オレに非なんかねぇんだよ」

淳も亮の瞳を凝視し続けた。その攻撃を真っ直ぐに受け、真っ直ぐに切り返す。
「うん、だろうね。期待もしてなかったけど」

ギリギリまで引き絞られた一本の線の上を歩むような、そんな緊迫した二人の言い合いは続いた。
しかし淳が続けて口にした言葉に、亮は眼の色を変える。
「だから暴言吐かれた時だって一度たりとも言い返さなかったんだ。どうせお前はそこ止まりだから」
「んだと?!」

二人はそのまま睨み合った。
隣に座る雪は浴びるように酒を飲んでいる。鞄に仕舞っている携帯電話が震えているが、それに気づく由も無かった。

言い合いの末に、だんだんと亮はイラついて来ていた。
淳を睨むとずっと言ってやりたかった言葉へと繋げていく。
「おい、お前随分余裕ぶっこいてっけど、オレがテメーに手出せないとでも思ってるわけ?
出せねぇんじゃなくて出さねぇんだぞ?金とか無しで拳でタイマン勝負してみっか?」

亮の挑発を受けて、淳は呆れたように溜息を吐きながら、
「ああそうだな」と投げやりに言った。

亮は自分の凄みが効かない淳に調子を狂わせながらも、尚も話を続ける。今度は淳も応戦した。
「‥お前がスポーツ万能なのは知ってっけどケンカとなればまた話は別だぞ?もしオレが勝ったら大気圏から出てけよな」
「くだらないことばかり言うな。俺に何て答えて欲しい?マントルの底までめり込ませてやるとでも言えばいいか?」

その淳の台詞に亮は憤慨する。
「はぁ?!メンタル?!オレは英語講師だぞ?!オレのメンタルのどこがイカれてるっつーんだよ!」
「あー‥レベル合わせてやったと思ったらこれか‥」

二人の言い合いは堂々巡りの無限ループ、子供達の諍いにキリは無かった。
それでも尚食って掛かろうと亮が声を荒げると、隣の席で唸り声がした。

今まで呑んだくれ眠れる獅子の如く沈黙を守っていた雪が遂に動き出したのだ。
雪はバンッと大きな音を立ててテーブルに手をつくと、そのまま勢い良く立ち上がった。
「二人とも黙りやがれぇぇえええ!!
」



‥時が止まった。
眠れる獅子の目覚めは二人のみならず、居酒屋に居る人々全員の動きを止めたのだった。
雪はゼェゼェと息を吐くと、大きく吸って声を上げた。
「うるさい!うるさい!うるさい!!」

淳が雪の名を呼ぼうとするも、彼女の勢いに飲まれるばかりだ。
雪はビシッと二人に向かって指を向けると、怒涛の如く喋り出した。
「あんたら本っ当ムカつくわ!!力自慢とか小学生か!ガキくさい!!」

「しかもあんた!メンタルじゃなくてマントルじゃアホンダラァ!」
ガビーン!

雪の物言いに亮の頭にタライが落ちた(ような気がした)。
普段大人しい彼女の変貌っぷりに、二人は唖然とするしかなかった。

雪は赤ら顔で青筋を立てながら、尚もクドクドと管を巻く。
「私はねぇあんたら二人とも前から気に食わなかったんだよ!何なのさ揃いも揃って!どういう神経してんだっつの!」

「片やいちいちスネてワケわかんないマネするわ、
片や事あるごとにメシおごれメシおごれって、私の名前は”メシオゴレ”じゃねーっつの!」

雪の愚痴に身に覚えのある二人は思わず白目だ。しかしそれは結構な図星を突いていて、二人は言い返せない。
そして雪は大きな声で「あんた!」と叫び淳を指さした。
雪はビクつく淳に近寄ると、その人差し指を彼の眉間に寄せて説教を始める。
「理由がありゃご飯おごりもするだろうがぁ。こんな風に突然現れてグチグチグチグチ‥。
てか何でいつもいきなり現れるの?お化けなの?私が心臓麻痺起こしたら責任取ってくれんの?」

至近距離で繰り広げられる畳み掛けるようなその説教は大迫力だ。
雪は続けて亮の方を指さすと、彼に向かって口を開いた。
「あんた何でそんなに無神経なの?!人を振り回すのがそんなに楽しい?」

亮は両手を広げながら、弁解するように「いやオレは‥ダメージヘアお前‥」と口ごもると、
それがまた雪の逆鱗に触れた。
「ダメージヘアダメージヘア‥誰がダメージヘアーじゃ!天然パーマじゃこるぁ!!」

雪は自分の髪は”ちょっと髪が太めの天然パーマ”だと自称した。
「リピートアフタミー!」と亮に向かって強要し、口にしかける亮と静止する淳‥。

雪はそこまで言うとフラつきながら席に座った。
今度は頭を抱えながら嘆くように声を上げる。
「私は一体どうすればいいのよ~!二人に何があったっていうの~?
じっと聞いてるけど気になることだらけなんだからぁ~!二人の板挟みでどうすりゃいいのか‥。
脳みそ爆発しそうなんだよホントに!」

一息で嘆いたその言葉は、雪の本音だった。
それきり俯いた雪を、亮は静観し淳は声を掛ける。
「‥‥‥‥」 「何が気になるの?」

彼に促され、雪は気になっていたことを口に出した。
「だから高校の時‥河村氏のお姉さんと先輩が‥」 「違うって!!」「ちがうっつーの!!」

再び声をシンクロして否定する二人に、雪はもう一度聞いてみようとした。
「じゃあなんで‥ヒック」

ふとしゃっくりが出た。雪は思わず口を押さえる。
そしてケロリとしたかと思うと、一言呟いた。
「あ‥飲み過ぎだ‥」

それきり雪は低く唸りながらゆっくりと倒れて行った。
その様子を見てドン引きする亮と、目を見開く淳。

居酒屋は突如倒れてた雪に騒然とし、彼女の名前を呼ぶ二人の声が店の外まで響き渡った。
これにて三人で囲んだ円卓の宴は幕を閉じ、夜は刻々と更けていく‥。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<三人で円卓を(3)>でした。
これにて三者対面終了です~!面白かったですねぇ(^^)
日本語版の「大気圏」と「宇宙」のくだりは最高でしたね!本家版はちょっと違う台詞だったので、
記事はそっちメインで書いてみました。
しかし雪ちゃんの暴走面白いですね。本音は出さず嫌味と悪感情で言い合う淳と亮の後に、
超ぶっちゃけの本音をぶちまける雪ちゃんとのコントラストも見事です。アッパレ~
次回は<どちらの非>です。
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酒も進んで三人三様の感情が揺れ、円卓はカオスに歪む。
そんな中淳は目に余る言動の亮に顔を顰め、ついに釘を刺した。
「軽はずみが過ぎるのは何年経っても変わらないな」

冷然とそう言葉を続ける淳を、亮は笑った。
「は?何でオレが変わんなきゃなんねーの?こういうのも悪かねぇ。姉貴の気分がちょっとは分かるぜ」
「わざわざ居座ってそんなことが言いたかったのか?」

淳の問いに、亮は首を横に振った。
「いや〜居座ってみるもんだ。みっともねー姿散々見せてもらうわ散々災難受けるわで‥」

収穫だったと言わんばかりに亮は口元を緩めた。
そんな彼に向かって、淳は淡々と言葉を返す。
「最後まで自分の非は認めないんだな」

二人の間にキリキリとした緊張の糸が張り詰められて行く。
強い眼力で亮が思いを口に出す。瞬きもしなかった。
「元々オレに非なんかねぇんだよ」

淳も亮の瞳を凝視し続けた。その攻撃を真っ直ぐに受け、真っ直ぐに切り返す。
「うん、だろうね。期待もしてなかったけど」

ギリギリまで引き絞られた一本の線の上を歩むような、そんな緊迫した二人の言い合いは続いた。
しかし淳が続けて口にした言葉に、亮は眼の色を変える。
「だから暴言吐かれた時だって一度たりとも言い返さなかったんだ。どうせお前はそこ止まりだから」
「んだと?!」

二人はそのまま睨み合った。
隣に座る雪は浴びるように酒を飲んでいる。鞄に仕舞っている携帯電話が震えているが、それに気づく由も無かった。

言い合いの末に、だんだんと亮はイラついて来ていた。
淳を睨むとずっと言ってやりたかった言葉へと繋げていく。
「おい、お前随分余裕ぶっこいてっけど、オレがテメーに手出せないとでも思ってるわけ?
出せねぇんじゃなくて出さねぇんだぞ?金とか無しで拳でタイマン勝負してみっか?」

亮の挑発を受けて、淳は呆れたように溜息を吐きながら、
「ああそうだな」と投げやりに言った。

亮は自分の凄みが効かない淳に調子を狂わせながらも、尚も話を続ける。今度は淳も応戦した。
「‥お前がスポーツ万能なのは知ってっけどケンカとなればまた話は別だぞ?もしオレが勝ったら大気圏から出てけよな」
「くだらないことばかり言うな。俺に何て答えて欲しい?マントルの底までめり込ませてやるとでも言えばいいか?」

その淳の台詞に亮は憤慨する。
「はぁ?!メンタル?!オレは英語講師だぞ?!オレのメンタルのどこがイカれてるっつーんだよ!」
「あー‥レベル合わせてやったと思ったらこれか‥」

二人の言い合いは堂々巡りの無限ループ、子供達の諍いにキリは無かった。
それでも尚食って掛かろうと亮が声を荒げると、隣の席で唸り声がした。

今まで
雪はバンッと大きな音を立ててテーブルに手をつくと、そのまま勢い良く立ち上がった。
「二人とも黙りやがれぇぇえええ!!





‥時が止まった。
眠れる獅子の目覚めは二人のみならず、居酒屋に居る人々全員の動きを止めたのだった。
雪はゼェゼェと息を吐くと、大きく吸って声を上げた。
「うるさい!うるさい!うるさい!!」

淳が雪の名を呼ぼうとするも、彼女の勢いに飲まれるばかりだ。
雪はビシッと二人に向かって指を向けると、怒涛の如く喋り出した。
「あんたら本っ当ムカつくわ!!力自慢とか小学生か!ガキくさい!!」

「しかもあんた!メンタルじゃなくてマントルじゃアホンダラァ!」
ガビーン!


雪の物言いに亮の頭にタライが落ちた(ような気がした)。
普段大人しい彼女の変貌っぷりに、二人は唖然とするしかなかった。

雪は赤ら顔で青筋を立てながら、尚もクドクドと管を巻く。
「私はねぇあんたら二人とも前から気に食わなかったんだよ!何なのさ揃いも揃って!どういう神経してんだっつの!」

「片やいちいちスネてワケわかんないマネするわ、
片や事あるごとにメシおごれメシおごれって、私の名前は”メシオゴレ”じゃねーっつの!」

雪の愚痴に身に覚えのある二人は思わず白目だ。しかしそれは結構な図星を突いていて、二人は言い返せない。
そして雪は大きな声で「あんた!」と叫び淳を指さした。
雪はビクつく淳に近寄ると、その人差し指を彼の眉間に寄せて説教を始める。
「理由がありゃご飯おごりもするだろうがぁ。こんな風に突然現れてグチグチグチグチ‥。
てか何でいつもいきなり現れるの?お化けなの?私が心臓麻痺起こしたら責任取ってくれんの?」

至近距離で繰り広げられる畳み掛けるようなその説教は大迫力だ。
雪は続けて亮の方を指さすと、彼に向かって口を開いた。
「あんた何でそんなに無神経なの?!人を振り回すのがそんなに楽しい?」

亮は両手を広げながら、弁解するように「いやオレは‥ダメージヘアお前‥」と口ごもると、
それがまた雪の逆鱗に触れた。
「ダメージヘアダメージヘア‥誰がダメージヘアーじゃ!天然パーマじゃこるぁ!!」

雪は自分の髪は”ちょっと髪が太めの天然パーマ”だと自称した。
「リピートアフタミー!」と亮に向かって強要し、口にしかける亮と静止する淳‥。

雪はそこまで言うとフラつきながら席に座った。
今度は頭を抱えながら嘆くように声を上げる。
「私は一体どうすればいいのよ~!二人に何があったっていうの~?
じっと聞いてるけど気になることだらけなんだからぁ~!二人の板挟みでどうすりゃいいのか‥。
脳みそ爆発しそうなんだよホントに!」

一息で嘆いたその言葉は、雪の本音だった。
それきり俯いた雪を、亮は静観し淳は声を掛ける。
「‥‥‥‥」 「何が気になるの?」


彼に促され、雪は気になっていたことを口に出した。
「だから高校の時‥河村氏のお姉さんと先輩が‥」 「違うって!!」「ちがうっつーの!!」

再び声をシンクロして否定する二人に、雪はもう一度聞いてみようとした。
「じゃあなんで‥ヒック」

ふとしゃっくりが出た。雪は思わず口を押さえる。
そしてケロリとしたかと思うと、一言呟いた。
「あ‥飲み過ぎだ‥」

それきり雪は低く唸りながらゆっくりと倒れて行った。
その様子を見てドン引きする亮と、目を見開く淳。

居酒屋は突如倒れてた雪に騒然とし、彼女の名前を呼ぶ二人の声が店の外まで響き渡った。
これにて三人で囲んだ円卓の宴は幕を閉じ、夜は刻々と更けていく‥。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<三人で円卓を(3)>でした。
これにて三者対面終了です~!面白かったですねぇ(^^)
日本語版の「大気圏」と「宇宙」のくだりは最高でしたね!本家版はちょっと違う台詞だったので、
記事はそっちメインで書いてみました。
しかし雪ちゃんの暴走面白いですね。本音は出さず嫌味と悪感情で言い合う淳と亮の後に、
超ぶっちゃけの本音をぶちまける雪ちゃんとのコントラストも見事です。アッパレ~
次回は<どちらの非>です。
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