超ド級美人の河村亮の姉。
その美貌を思い出してムクレていた雪の方を、気がつけば先輩がじっと見ていた。
俯いた雪に向かって口を開く。
「ずっと連絡待ってたんだよ」
雪はタジタジしながら、「思ったより遅くなって‥」と返した。
しかし心に引っかかるものがあって、唇を尖らせながら思わずこぼす。
「‥でもこっちから連絡しなければ、ずっと待ってるつもりだったんですか?」
雪も連絡しなかったので人のことは言えないが、つい不満が口を突いて出た。
しかし淳はケロリとしながら、「雪ちゃんの言うとおりにしたんだよ」と上向きながら言う。
表情を変えぬまま、「君は俺の言うとおりにはしてくれないけどね」と、雪の不満に対してサラリと切り返した。
河村亮と関わるな、といつか彼が言っていた台詞が蘇るが、従順に守ってもいられない理由が雪にはあった。
「その‥色々借りがあって‥人として恩返しはしないと‥」
若干しどろもどろな雪だが、淳は「恩返し?」と要点を拾って聞き返した。
雪はさらに取り留めのない説明をする。
「えっと‥最近嫌なことが起きて‥塾で横山の問題もあったし‥」
すると”横山”の名前に淳は反応し、幾分険しい表情をして雪に近づいた。
「どういうこと? 何で俺に言わなかったの?」
そう詰め寄る淳に、雪が慌てながら弁解する。
言おうとしたけれど、レポートの件でタイミングを逃してしまったのだと。
二人は顔を見合わせた後、再び湧いて出てきたレポートの件を思い出して白けた空気になった。思わず出た溜息が重なる。
「と、とにかく!」
雪がその雰囲気を打破すべく口を開く。
「こちらの河‥いえ、こちらの方に色々助けてもらって」
さてここから暫し、どっちつかずの天秤が揺れる。
亮のことを他人行儀に”こちらの方”と言ったことで亮がピクッと反応し、
慌てて”河村氏”と言い直すと今度は淳が眉を顰めて反応する。
丁寧に言っても親しみを持たせても、どっちに転んでもどちらかが反応するのだ。
「じゃあなんて呼べばいいってんですか!」
イラつきのあまり雪が憤慨して、どっちつかずの天秤を投げる。
声を荒げた雪に便乗するように、今まで静観していた亮も思わず声を上げて立ち上がる。
「あーもうくっそイラつく!!メール見たの見てねぇだのチマチマめんどくせーな!
もう別れちまえ別れちまえ!何だよお前らの会話!百分討論かっつーの!!」
その色気もへったくれもない二人の会話に、辟易した亮は言葉を続ける。
「本物の恋愛ってのは、”会えば嬉しくてチュチュチュ”だろーがよ!
はぁ~もう別れろ!別れちまえ!」
亮の語る恋愛論を前に、思わず淳は白目&雪は呑んだくれである。
そう言う亮も溜息を吐きながら、「飲まなきゃやってらんねー」と淳のグラスに酒を注いだ。
勢い良く酒をこぼしながら、亮は幾分淳に絡むような語り口で話を続ける。
「お前ね~、連絡が遅かろーが早かろーが昔はどうでもよかったくせに、
何でこんな風になっちゃったんだ~?」
ニヤニヤと笑いながら言葉を掛ける亮に、淳は呆れたように溜息を吐く。
しかし続けられた亮の話に、淳と雪はハッとして目を見開いた。
「そうだ思い出したこいつな、高校ん時彼女が途切れなかったんだぜ。
そのくせ無関心であいつら全員散々泣かせてたよな~ヒドイ男だね~」
亮は調子に乗って続けた。リズミカルに、そして楽しそうに。
「飽きたらポイ、休み終わったらポイ、完全無情なポイポイ王子!」
それまで平然と振舞っていた淳も、幾分慌てて亮を制止しようとするが、既に雪はダメージを受けて顔面蒼白である。
淳が怒りを込めた様子で亮を見据える。
「亮、いい加減にしろよ。誇張しすぎだ。むしろお前だろ?それは」
そんな淳の視線にも怯まず、ニヤつきながら亮は言葉を続ける。
「見てるこっちが焦れったいから言うんだよ!淳みたいな奴と恋愛するなら色々知っとかなきゃなぁ?
そーだろ?」
実は淳の言う”むしろお前だろ”というのは図星だった(少なくとも半分は当たっているらしい)のだが、
亮はそんな彼の言葉は無視して雪に向かって話を続けた。
「初めて会った時も言ったけど、まず見た目が可愛い子じゃなきゃダメだろ?
並じゃダメな、並じゃ」
ガーンと雪の頭にタライが当たる。(ような気がした)
「だからそれはお前の話‥」とツッコミを入れる淳だが、
亮は素知らぬ顔で「オレがいつどこで何時何分何十秒?地球が何回回った時~?」とケラケラ笑いながら言葉を返す。
そんな二人のやり取りを聞きながら、雪の頭の中では”高校時代の青田淳サイドストーリー”が繰り広げられていた。
イケメン淳と釣り合う美女の枠に当てはまるのは‥。
「そ、それで先輩は‥」
続けられる言葉に息を飲むポイポイ王子‥。
雪の妄想が炸裂する。
「河村氏のお姉さんとも‥」 「違う!!」 「ちげーよ!!」
間髪入れずに二人は否定した。
そのリズムと同調は、ここに来て初めて息が合ったんじゃないかと思うほどだ。
そして三人は大騒ぎの果てにどんよりと肩を落とし、
結果雪の質問は「誰得?」な状態になったのだった‥。
そして「とにかく」と亮がその空気を打破すべく口を開く。
「淳のような奴と付き合う方法をオレが親切にもアダ‥アドゥ?
‥まぁ教えてやろうとしてるわけよ」
言葉に詰まった亮に「アドバイスな」と淳が冷静にツッコミを入れる。
それに構わず亮は「お前は見るからに恋愛経験なんてなさそうだし」と続けると、雪は思わずカッとなった。
「なっ!なくないですし!私だって高校時代彼氏いたんですよ!
超優しくて友達みんなに羨ましがられたし!」
ハッと気がついた時には、時既に遅し‥。
隣に座る先輩を窺うと、もう‥それはそれは見事な苦笑いを‥。
orz
実はその彼氏とはままごとレベルの付き合いしかしてなかったのだが、雪はそれを隠して酒を煽った。
そんな雪を見て、狂ったように笑う河村氏‥。
亮の笑い声が響く中、円卓はカオスに歪んで夜は更ける。
そして雪はまた酒を飲み干した‥。
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<三人で円卓を(2)>でした。
亮が言及していたのは「百分討論」という有名な討論番組だそうです。
http://www.imbc.com/broad/tv/culture/toron/
二人の会話がとても恋人同士のそれとは思えなかったんでしょうね(^^;)
そして「会えば嬉しくてチュチュチュ」はこの歌からの引用です↓
TV title ポポポ
今私が受講している韓国語講座にもこの歌出てきていました。「習ったとこが出てきた!」と嬉しかったです‥(*^^*)
有名な童謡なんですね!
しかし面白いですね~この回。そして一番のヒットは「ポイポイ王子」!
翻訳者さんの生み出したこの名前!(本家版の方にはそれらしき名前は全然出てきていないのです)
ピッタリでついつい笑ってしまいました。最高ですね~^^
次回は<三人で円卓を(3)>です。
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