「は‥はは‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/95/4acdd69c48a59c7f9515afb6241a8fa0.jpg)
雪は気まずい心の内を誤魔化すように、目を逸らし逸らし乾いた笑いを立てた。
目の前には、雪の方をまっすぐ見つめながら微笑む彼。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/4d/30ec4674d12640a5025ed7453cd73ce9.jpg)
雪は何度も視線を天地へと泳がせるが、彼は動じずニコニコと笑みを浮かべていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/ad/3e2b309ececa4dc8e04eab098f603556.jpg)
わ、笑わないで‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/0d/191b89bad97090980b17bf132c0de854.jpg)
‥一体この雰囲気は何なのだ。
雪が先輩の非に怒った末の話し合いだというのに、昨日のアレで立場は逆転だ‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/dd/744f58645cd5cb2d973aa10d50cb9e2a.jpg)
尚も視線を泳がせ話を切り出せない雪より先に、先輩の方が先に口を開いた。
「昨日さ‥考えてみたんだけど‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/47/50/f27b1562706c0fbaad8bae9415ccb117.jpg)
言いづらそうに若干俯きながら言葉を選ぶ彼を見て、雪はドキリとした。
脳裏に姉ちゃんフラれんじゃね?と笑う蓮の姿が浮かぶ。
ま、まさか‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/31/01/35dacf8636bf9306ad48a12e4f09c9dd.jpg)
別れ話か?と思った矢先、先輩は溜息を吐きながら静かな調子で口を開いた。
「もう二度とあんなにお酒を飲むんじゃないよ。絶対な‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/11/8b/ed8f6b875048b896b8afb09f9d23b89b.jpg)
先輩は飲み過ぎた雪を注意した上で、彼女を責めること無く二日酔いを心配した。
そんな彼の気遣いが、逆に雪をいたたまれなくするのだった‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/28/11d8b5645a30dda9674eba79755d40e0.jpg)
窓の外ではまだ日差しが眩しい。
会話が途切れた二人が、手元のコーヒーに目を落とす。
「‥お隣のおじさん、引っ越しましたよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/3d/ab16b050c5a4396203249def229f7ec0.jpg)
アイスコーヒーは晩夏の空気に水滴を垂らし、テーブルに小さな水溜りを作っていく。
その一粒一粒がゆっくりと溜まっていくのを見ながら、ぽつりぽつり話は始まった。
「‥うん 知ってる」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/86/1c3aed0db249983db85a616fca4e99d6.jpg)
淳はそれきり口を噤み、二人の間に暫し沈黙が落ちた。
「‥‥‥‥」 「‥‥‥‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/92/234bbb602828f69d17eefc748b155f64.jpg)
雪はテーブルに目を落としたまま、話の本題を口にした。
淡々と冷静に、自分の気持ちを彼に伝える。
「先輩が私のためにしたということでも、素直にそのまま受け入れるのは正直‥難しいです」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/09/44602e40cf6b1572c6753645bc13c6d4.jpg)
淳は伏せた彼女の瞼を眺めながら、その話の続きを静かに待つ。
膝の上で重ねた両手を組みながら雪は、「だけど、」と強い響きで口にして、前を向いた。
「遠藤さんの話を鵜呑みにして自分の考えを押し付けて‥ごめんなさい」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/74/29db5b892882603fb1ec73fba65b4dc6.jpg)
冷静になって考えて、雪は自分の非を謝った。それは彼女の誠意だった。
「先輩も悪意があってしたわけじゃないと思っているので、だから‥
今回は信じてみようと思います」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/92/f2538270271ac4413d765a58b4501d5a.jpg)
彼が雪に抱いていた好意を、雪はどうしても無下にすることが出来なかった。
だからそこの部分に関しては許したのだ。けれどやはり、受け入れられないこともある。
雪は「ただし、」と前置きした上で話を続けた。
「今後こういったことはもう止めにして下さい。私に関することは、まず私に聞いて下さい」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/31/fe1374e8659b71946b9741b41852032a.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/f7/7cade290c489280d0e517724e965775b.jpg)
瞳と瞳が絡み合い、その心の動きを伝える。
二人は正面から向き合いながら、雪は自分の気持ちを伝え、淳はそれをまっすぐに受け止めた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7e/df/d97237016dc0cd985854a914904ed6ec.jpg)
「そうしてもらえますか?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/24/34bec59146f03ee448a120a26099f8ff.jpg)
そう雪が聞くと、淳はニッコリと笑って頷いた。
「うん、分かった」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/39/d9367147f65ab19ff4c4715769c9afd2.jpg)
雪はその笑顔に安堵した。
手持ち無沙汰に、指で耳元の髪を梳く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/10/a2b1ce62a43c745f6aacf1c9103822f0.jpg)
そして雪はハッとあることを思い出した。
ホッとしたことで心の中に潜んでいた心配ごとが芽を出したのだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/c0/78570da8dfa89fa3cd456c67cca67067.jpg)
雪はおずおずと切り出した。
「あの‥私昨日すごい酔っちゃって‥その‥何か他におかしなことをしでかしたんじゃないかと‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/1f/6605635c27f6f07a62009a5c2ce0d58b.jpg)
言葉を濁しながらそう話す雪に、先輩は非常にあっけらかんと返答する。
「何が? 吐いた以外で?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/40/d8db801ef7f3c36cffa43c55a044cfdb.jpg)
ぎゃっと雪が声を上げるのを見て、淳はクククと肩を揺らして笑った。
そして少し意地悪そうな顔をして、酔っ払って吐露していた彼女の本音を教えてあげた。
「亮とのことが気になるって何度も言ってたよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/5e/51e3ca578ec0726b617af577da3f4353.jpg)
関わるなって言われた反動で逆に仲良くなったみたいだね、と少々の嫌味を漏らした後、淳は静かに話し始めた。
「もう知ってるかもしれないけど、亮が俺にああいう感じなのは‥自分の手のせいなんだよね」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/a0/19a78483f4216c645c45340294c7eaa1.jpg)
そう言ってカップを持つ淳の手は、何の不自由も無い滑らかな動きをする。
淳は昔の記憶を回想し、幾分俯いて話し出した。
「ずっとピアノだけやって来た奴が、手が使えなくなって黒い部分だけが残っちゃったというか‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5e/71/055674674e67ef2d4d0f67eafa17bdd1.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/49/ad1f771d761a33a98a91a70b72c4c41a.jpg)
そして彼は語り始めた。
自分と亮が、どのように関わり合って来たのかを。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<伝える>でした。
雪ちゃんのすごいところは、物事を俯瞰して見れるところですねぇ。感情的にもなるんだけれど。
常に自分の非を振り返ってそれと相手の非を天秤にかける、というか。
とても真面目で、全然いい加減なところが無い。信頼出来る子ですねぇ‥![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_heart.gif)
そして大晦日ですね~!皆様良いお年を~~~!(^^)♪
次回は<過去と未来と>です。
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雪は気まずい心の内を誤魔化すように、目を逸らし逸らし乾いた笑いを立てた。
目の前には、雪の方をまっすぐ見つめながら微笑む彼。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/4d/30ec4674d12640a5025ed7453cd73ce9.jpg)
雪は何度も視線を天地へと泳がせるが、彼は動じずニコニコと笑みを浮かべていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3d/40/75e058a9f5ada3335b712852aae3372c.jpg)
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わ、笑わないで‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/0d/191b89bad97090980b17bf132c0de854.jpg)
‥一体この雰囲気は何なのだ。
雪が先輩の非に怒った末の話し合いだというのに、昨日のアレで立場は逆転だ‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/dd/744f58645cd5cb2d973aa10d50cb9e2a.jpg)
尚も視線を泳がせ話を切り出せない雪より先に、先輩の方が先に口を開いた。
「昨日さ‥考えてみたんだけど‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/47/50/f27b1562706c0fbaad8bae9415ccb117.jpg)
言いづらそうに若干俯きながら言葉を選ぶ彼を見て、雪はドキリとした。
脳裏に姉ちゃんフラれんじゃね?と笑う蓮の姿が浮かぶ。
ま、まさか‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/31/01/35dacf8636bf9306ad48a12e4f09c9dd.jpg)
別れ話か?と思った矢先、先輩は溜息を吐きながら静かな調子で口を開いた。
「もう二度とあんなにお酒を飲むんじゃないよ。絶対な‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/11/8b/ed8f6b875048b896b8afb09f9d23b89b.jpg)
先輩は飲み過ぎた雪を注意した上で、彼女を責めること無く二日酔いを心配した。
そんな彼の気遣いが、逆に雪をいたたまれなくするのだった‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/28/11d8b5645a30dda9674eba79755d40e0.jpg)
窓の外ではまだ日差しが眩しい。
会話が途切れた二人が、手元のコーヒーに目を落とす。
「‥お隣のおじさん、引っ越しましたよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/3d/ab16b050c5a4396203249def229f7ec0.jpg)
アイスコーヒーは晩夏の空気に水滴を垂らし、テーブルに小さな水溜りを作っていく。
その一粒一粒がゆっくりと溜まっていくのを見ながら、ぽつりぽつり話は始まった。
「‥うん 知ってる」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/86/1c3aed0db249983db85a616fca4e99d6.jpg)
淳はそれきり口を噤み、二人の間に暫し沈黙が落ちた。
「‥‥‥‥」 「‥‥‥‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/92/234bbb602828f69d17eefc748b155f64.jpg)
雪はテーブルに目を落としたまま、話の本題を口にした。
淡々と冷静に、自分の気持ちを彼に伝える。
「先輩が私のためにしたということでも、素直にそのまま受け入れるのは正直‥難しいです」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/5d/6c8f4f23c998a3d50b69602828505b4b.jpg)
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淳は伏せた彼女の瞼を眺めながら、その話の続きを静かに待つ。
膝の上で重ねた両手を組みながら雪は、「だけど、」と強い響きで口にして、前を向いた。
「遠藤さんの話を鵜呑みにして自分の考えを押し付けて‥ごめんなさい」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/74/29db5b892882603fb1ec73fba65b4dc6.jpg)
冷静になって考えて、雪は自分の非を謝った。それは彼女の誠意だった。
「先輩も悪意があってしたわけじゃないと思っているので、だから‥
今回は信じてみようと思います」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/92/f2538270271ac4413d765a58b4501d5a.jpg)
彼が雪に抱いていた好意を、雪はどうしても無下にすることが出来なかった。
だからそこの部分に関しては許したのだ。けれどやはり、受け入れられないこともある。
雪は「ただし、」と前置きした上で話を続けた。
「今後こういったことはもう止めにして下さい。私に関することは、まず私に聞いて下さい」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/31/fe1374e8659b71946b9741b41852032a.jpg)
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瞳と瞳が絡み合い、その心の動きを伝える。
二人は正面から向き合いながら、雪は自分の気持ちを伝え、淳はそれをまっすぐに受け止めた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7e/df/d97237016dc0cd985854a914904ed6ec.jpg)
「そうしてもらえますか?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/24/34bec59146f03ee448a120a26099f8ff.jpg)
そう雪が聞くと、淳はニッコリと笑って頷いた。
「うん、分かった」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/39/d9367147f65ab19ff4c4715769c9afd2.jpg)
雪はその笑顔に安堵した。
手持ち無沙汰に、指で耳元の髪を梳く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/10/a2b1ce62a43c745f6aacf1c9103822f0.jpg)
そして雪はハッとあることを思い出した。
ホッとしたことで心の中に潜んでいた心配ごとが芽を出したのだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/c0/78570da8dfa89fa3cd456c67cca67067.jpg)
雪はおずおずと切り出した。
「あの‥私昨日すごい酔っちゃって‥その‥何か他におかしなことをしでかしたんじゃないかと‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/1f/6605635c27f6f07a62009a5c2ce0d58b.jpg)
言葉を濁しながらそう話す雪に、先輩は非常にあっけらかんと返答する。
「何が? 吐いた以外で?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/40/d8db801ef7f3c36cffa43c55a044cfdb.jpg)
ぎゃっと雪が声を上げるのを見て、淳はクククと肩を揺らして笑った。
そして少し意地悪そうな顔をして、酔っ払って吐露していた彼女の本音を教えてあげた。
「亮とのことが気になるって何度も言ってたよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/5e/51e3ca578ec0726b617af577da3f4353.jpg)
関わるなって言われた反動で逆に仲良くなったみたいだね、と少々の嫌味を漏らした後、淳は静かに話し始めた。
「もう知ってるかもしれないけど、亮が俺にああいう感じなのは‥自分の手のせいなんだよね」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/a0/19a78483f4216c645c45340294c7eaa1.jpg)
そう言ってカップを持つ淳の手は、何の不自由も無い滑らかな動きをする。
淳は昔の記憶を回想し、幾分俯いて話し出した。
「ずっとピアノだけやって来た奴が、手が使えなくなって黒い部分だけが残っちゃったというか‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5e/71/055674674e67ef2d4d0f67eafa17bdd1.jpg)
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そして彼は語り始めた。
自分と亮が、どのように関わり合って来たのかを。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<伝える>でした。
雪ちゃんのすごいところは、物事を俯瞰して見れるところですねぇ。感情的にもなるんだけれど。
常に自分の非を振り返ってそれと相手の非を天秤にかける、というか。
とても真面目で、全然いい加減なところが無い。信頼出来る子ですねぇ‥
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次回は<過去と未来と>です。
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