「交錯恋愛43」の続きです。
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図書館の地下食堂に降りると、客はオレ以外にはいなかった。
「ガランとしてんなぁ...」
呟くと、その言葉に返事があった。
「ここ目立たないからね~。図書館の隣のレストランに行っちゃう人が多いんだよ」
振り向くと、エプロン着けたおじさんが一人。
食堂のおじさん、という奴である。
「今日はおじさん一人でやってるのか?ルークに会いに来たんだが...」
「今日は来てないよ。ルークは月曜日と木曜日が当番だからな」
「そうかぁ...それにしても、今日は空いてるな」
辺りを見回しても、オレとおじさん以外は人っ子一人いない。
結構広い食堂だが、これで商売やっていけるのだろうか...?
「さっきまで良く食べる嬢ちゃんが居たんだけどね。そりゃあ良い食べっぷりだったなあ..」
「へぇ...」
どきりとした。
リナか...?
「あんなにちっさい身体のどこに入るんだろうね...」
「おじさん、それいつの話だ?」
「ついさっきだよ。連れの男が来たらさっさと行っちまったがね」
連れの男...?
ゼルガディスだろうか。
それなら追う必要もないか...。
大体リナじゃないかもしれないし。
「なんか食べてくかい?」
「...いや、いいや。ありがとう」
昼飯を食べに来たのに、断ってしまった。
...大したことない話なはずなのに、妙に気になった。
嫌な予感でざわざわする。
そして、オレの予感は大体当たるのだ。
オレは食堂を出ようと早足で歩き出した。
その時。
ふと、呼ばれた気がした。
...リナに。
オレはとうとう走り出した。
一体なんだってんだ。
「嫌だっ..つってんでしょーがっ!」
そして聞こえてきたのは、聞き慣れた声。
「リナ!」
思わず叫ぶと、返事があった。
「...!ガウリイ!こっち!!」
声の方に走ると、そこに居たのはリナと見知らぬ男。
男はリナの腕を掴んで壁に押し付けていた。
...!
頭に血が昇る。
「残念、お客さんが来ちゃいましたねぇ」
「な、にが残念よ!」
叫ぶリナは怒っていたが、それ以上に怯えた顔をしていた。
「...その手を離せ。嫌がってるだろ」
思った以上に、冷たい声が出た。
...こいつは何者だ?
相変わらずリナの手を掴んだまま、男は余裕の面持ちで声をあげた。
「貴方、リナさんとどういう関係なんですか?」
「...は?」
「彼氏でもないのに、僕を止める権利あります?リナさんって照れ屋なんですよ」
「なっ...!」
「んな、何言ってんのよ!!」
笑いながら言う男に、オレは面食らった。
「貴方には関係ないでしょう?」
「...関係なく、ない。オレは、リナの友達だ」
リナが息を飲む声が聞こえた。
「へぇ..」
「照れてるのか本気で嫌がってるのかぐらい、分かる..」
ぐっと睨むと、相手はへらりと笑った。
「ま、良いでしょう。今日は帰りますよ。これ以上ここで迫っても無駄みたいですしね」
言って、リナの手を離す。
「...永遠に無駄よ」
「手強いですねーあははは」
男は手をひらひらと振って去って行った。
...なんだあいつ。
振り向くと、リナが座り込んでいた。
「大丈夫か?」
「...ああ、うん。大丈夫」
全く大丈夫そうには見えない。
...うつむいた表情は、泣きそうに見える。
「ありがとね..」
リナはぼそり、と呟いた。
「あいつ、何者だ?」
「大学の奴。...いつもちょっかい掛けてくるとは思ってたけど、まさかあんな風に迫って来るとは思わなかったわ」
リナはため息をついてみせた。
「...ゼルに知らせないとな」
言うと、リナは勢い良く顔を横に振った。
「ゼルには言わないで!」
「え?」
「...ゼルには、知られたくない。心配するし」
「そりゃするだろ」
「と、とにかく今は言わないで!お願い」
あまりに必死な面持ちに、思わず黙る。
「...わかった」
渋々頷いてみせた。
「さて、と」
リナはおもむろに立ち上がった。
「あたしもう大丈夫だから。...ガウリイありがとね」
「...は?」
リナは笑ってみせた。
「あたし、一人で帰るわ」
「なんでだ?危ないだろ。一緒に帰ろう」
「駄目。ガウリイには、迷惑掛けられない...」
「リナ...」
「ホントに大丈夫だって!あいつだってさすがに今日はもう近付いて来ないだろーし」
わざとらしく明るく振る舞うリナが、悲しい。
「リナ」
「あ、そうそう。アメリアが体調悪いみたいだから、お見舞い行ってあげてよ」
「リナ!」
オレは堪らなくなって、思わずリナを抱き寄せた。
「なにす...っ」
「なんでそんな無理すんだよ!頼れって、前に言ったろう...」
リナは一瞬泣きそうな顔をしたあと、唇を噛みしめた。
「あんたこそ、なんでそんな構うのよ...あたしとあんたはただの『友達』なんでしょ...?」
真っ直ぐな視線に射抜かれる。
「オレは...リナ、オレは...」
──リナが、好きだ。
多分、結構前から。
言おうとした瞬間、近くの階段から足音が響いた。
『!!』
思わずオレから飛び退くリナ。..と、固まるオレ。
「うわー、こんなところに食堂あったんだ」
「気付かなかったわー」
見知らぬ男女が通り過ぎて行く。
オレたちの事など眼中にないくらい、二人の世界に入っているカップル。
「.....ガウリイ」
リナは、すごく小さな声でオレを呼んだ。
「なんだ?」
「あたしは...アメリアを泣かせる奴は許さないって決めてるの。...それがたとえあたしでも」
リナの声は小さく震えていて。
でもその瞳は、頑なとも言える程に真っ直ぐだった。
続く
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最後の台詞をリナにどうしても言わせたかったのです...(´・ω・`)
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図書館の地下食堂に降りると、客はオレ以外にはいなかった。
「ガランとしてんなぁ...」
呟くと、その言葉に返事があった。
「ここ目立たないからね~。図書館の隣のレストランに行っちゃう人が多いんだよ」
振り向くと、エプロン着けたおじさんが一人。
食堂のおじさん、という奴である。
「今日はおじさん一人でやってるのか?ルークに会いに来たんだが...」
「今日は来てないよ。ルークは月曜日と木曜日が当番だからな」
「そうかぁ...それにしても、今日は空いてるな」
辺りを見回しても、オレとおじさん以外は人っ子一人いない。
結構広い食堂だが、これで商売やっていけるのだろうか...?
「さっきまで良く食べる嬢ちゃんが居たんだけどね。そりゃあ良い食べっぷりだったなあ..」
「へぇ...」
どきりとした。
リナか...?
「あんなにちっさい身体のどこに入るんだろうね...」
「おじさん、それいつの話だ?」
「ついさっきだよ。連れの男が来たらさっさと行っちまったがね」
連れの男...?
ゼルガディスだろうか。
それなら追う必要もないか...。
大体リナじゃないかもしれないし。
「なんか食べてくかい?」
「...いや、いいや。ありがとう」
昼飯を食べに来たのに、断ってしまった。
...大したことない話なはずなのに、妙に気になった。
嫌な予感でざわざわする。
そして、オレの予感は大体当たるのだ。
オレは食堂を出ようと早足で歩き出した。
その時。
ふと、呼ばれた気がした。
...リナに。
オレはとうとう走り出した。
一体なんだってんだ。
「嫌だっ..つってんでしょーがっ!」
そして聞こえてきたのは、聞き慣れた声。
「リナ!」
思わず叫ぶと、返事があった。
「...!ガウリイ!こっち!!」
声の方に走ると、そこに居たのはリナと見知らぬ男。
男はリナの腕を掴んで壁に押し付けていた。
...!
頭に血が昇る。
「残念、お客さんが来ちゃいましたねぇ」
「な、にが残念よ!」
叫ぶリナは怒っていたが、それ以上に怯えた顔をしていた。
「...その手を離せ。嫌がってるだろ」
思った以上に、冷たい声が出た。
...こいつは何者だ?
相変わらずリナの手を掴んだまま、男は余裕の面持ちで声をあげた。
「貴方、リナさんとどういう関係なんですか?」
「...は?」
「彼氏でもないのに、僕を止める権利あります?リナさんって照れ屋なんですよ」
「なっ...!」
「んな、何言ってんのよ!!」
笑いながら言う男に、オレは面食らった。
「貴方には関係ないでしょう?」
「...関係なく、ない。オレは、リナの友達だ」
リナが息を飲む声が聞こえた。
「へぇ..」
「照れてるのか本気で嫌がってるのかぐらい、分かる..」
ぐっと睨むと、相手はへらりと笑った。
「ま、良いでしょう。今日は帰りますよ。これ以上ここで迫っても無駄みたいですしね」
言って、リナの手を離す。
「...永遠に無駄よ」
「手強いですねーあははは」
男は手をひらひらと振って去って行った。
...なんだあいつ。
振り向くと、リナが座り込んでいた。
「大丈夫か?」
「...ああ、うん。大丈夫」
全く大丈夫そうには見えない。
...うつむいた表情は、泣きそうに見える。
「ありがとね..」
リナはぼそり、と呟いた。
「あいつ、何者だ?」
「大学の奴。...いつもちょっかい掛けてくるとは思ってたけど、まさかあんな風に迫って来るとは思わなかったわ」
リナはため息をついてみせた。
「...ゼルに知らせないとな」
言うと、リナは勢い良く顔を横に振った。
「ゼルには言わないで!」
「え?」
「...ゼルには、知られたくない。心配するし」
「そりゃするだろ」
「と、とにかく今は言わないで!お願い」
あまりに必死な面持ちに、思わず黙る。
「...わかった」
渋々頷いてみせた。
「さて、と」
リナはおもむろに立ち上がった。
「あたしもう大丈夫だから。...ガウリイありがとね」
「...は?」
リナは笑ってみせた。
「あたし、一人で帰るわ」
「なんでだ?危ないだろ。一緒に帰ろう」
「駄目。ガウリイには、迷惑掛けられない...」
「リナ...」
「ホントに大丈夫だって!あいつだってさすがに今日はもう近付いて来ないだろーし」
わざとらしく明るく振る舞うリナが、悲しい。
「リナ」
「あ、そうそう。アメリアが体調悪いみたいだから、お見舞い行ってあげてよ」
「リナ!」
オレは堪らなくなって、思わずリナを抱き寄せた。
「なにす...っ」
「なんでそんな無理すんだよ!頼れって、前に言ったろう...」
リナは一瞬泣きそうな顔をしたあと、唇を噛みしめた。
「あんたこそ、なんでそんな構うのよ...あたしとあんたはただの『友達』なんでしょ...?」
真っ直ぐな視線に射抜かれる。
「オレは...リナ、オレは...」
──リナが、好きだ。
多分、結構前から。
言おうとした瞬間、近くの階段から足音が響いた。
『!!』
思わずオレから飛び退くリナ。..と、固まるオレ。
「うわー、こんなところに食堂あったんだ」
「気付かなかったわー」
見知らぬ男女が通り過ぎて行く。
オレたちの事など眼中にないくらい、二人の世界に入っているカップル。
「.....ガウリイ」
リナは、すごく小さな声でオレを呼んだ。
「なんだ?」
「あたしは...アメリアを泣かせる奴は許さないって決めてるの。...それがたとえあたしでも」
リナの声は小さく震えていて。
でもその瞳は、頑なとも言える程に真っ直ぐだった。
続く
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最後の台詞をリナにどうしても言わせたかったのです...(´・ω・`)
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