まい、ガーデン

しなしなと日々の暮らしを楽しんで・・・

選考委員になったつもりで 直木賞候補作『平場の月』『マジカルグランマ』『美しき愚かものたちのタブロー』

2019-10-06 08:53:34 | 

えらそうに上から目線で感想をざっと書いたりして。
ま、読者は自由に読むことができるからね、見当はずれなことは許してくださいませ。

私は今のところ小説についてはハードカバーは買わない。
すべて地区センターか小学校の市民図書で借りている。圧倒的に新刊本に出会う確率が高いからだ。
そんなわけで9月上旬、2週間の間に偶然にも今年度直木賞候補作品を読むことができたの。

【直木賞】候補作品
▽朝倉かすみ「平場の月」(光文社)
▽大島真寿美「渦 妹背山(いもせやま)婦女(おんな)庭訓(ていきん) 魂(たま)結び」(文芸春秋)
▽窪美澄「トリニティ」(新潮社)▽澤田瞳子「落花」(中央公論新社)
▽原田マハ「美しき愚かものたちのタブロー」(文芸春秋)▽柚木麻子「マジカルグランマ」(朝日新聞出版)

『平場の月』 朝倉 かすみ

朝霞、新座、志木。
家庭を持ってもこのへんに住む元女子たち。元男子の青砥も、このへんで育ち、働き、老いぼれていく連中のひとり。
元女子須藤とは病院で再会した。50歳になった男と女の、心のすき間を、求めあう熱情を、生きる哀しみを、
圧倒的な筆致で描く大人の恋愛小説。

私、『田村はまだか』を読んだときずいぶん新鮮な感じがしていいなと思ったから期待した。
が、元男子青砥からなのか元女子須藤からなのか、視点が交錯して文章がとても読みにくいのよ。
そこで引っかかるからなかなか前に進まず、内容も頭に入りづらい。
おまけに男子はともかく女子が、いくら同級生とはいえ元男子に「青砥」と呼び捨てするかしら、
なんてどうでもいいようなことに拘ってなおさら進まない。
さらにさらに会話の内容が、これは高校生じゃないよね、と何度も確認しなくてはいけないほどで参ってしまった。
二人の間に漂う乾いた空気感が悪くはないだけに、とても惜しい気がする。
大人の恋愛小説ってそうかしらと思うほどでもないな、いややっぱりそうかなの内容。

『美しき愚かものたちのタブロー』 原田マハ

日本に美術館を創りたい。
ただ、その夢ひとつのために生涯を懸けた不世出の実業家・松方幸次郎。
戦時下のフランスで絵画コレクションを守り抜いた孤独な飛行機乗り・日置釭三郎。
そして、敗戦国・日本にアートとプライドを取り戻した男たち――。
奇跡が積み重なった、国立西洋美術館の誕生秘話。

いつもの原田さんのお得意分野で、安心して読み始めたけれど。
今までの絵画小説よりも、絵画に携わる人や事実に基づくフィクションの部分が窮屈で想像力を駆使されてない感じがする。
なんだか小学生の読む伝記小説のようだな、とは言い過ぎかしら。
やはり松方幸次郎が日本人であまりにもよく知られているから、膨らませようがないのかしら。
むしろ、戦時中に松方の部下だった日置釭三郎が「松方コレクション」をパリ郊外の田舎町・アボンダンに疎開させて、
それらを守り抜いたエピソードがいちばん面白くドキドキしたから、
そっちをメインにしたどうだったかしら、なんて余計なおせっかいね。

 『マジカルグランマ』柚木麻子

いつも優しくて、穏やかな「理想のおばあちゃん」(マジカルグランマ)は、もう、うんざり。
夫の死をきっかけに、心も体も身軽になっていく、元女優75歳・正子の波乱万丈の人生。
「理想のおばあちゃん」から脱皮した、したたかに生きる正子の姿を痛快に描き切る極上エンターテインメント! 

柚木さんの小説は「ランチのアッコちゃん」など数冊読んでいて、若いのになかなか手練れな方だなとは思っていた。
うーん、正子さんパワフルだけれどどこか絵空事だなと共感はしない。実も蓋もないわ。
自分が近い年齢だから厳しくなるのね、とバッサリ。

以上、独断と偏見による手前勝手な選評でした。
あっそうそう、厳しいこと書きましたが3冊とも面白かったのよ。なんて取ってつけたような、いやほんとです。
三作品の装画が、それぞれ内容の雰囲気を的確に表現していて素晴らしいな、との感想も蛇足ながら付け加えます。

 
コメント
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