電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

シューマン「ピアノ・ソナタ第1番」を聴く

2007年12月29日 10時21分04秒 | -独奏曲
クリスマスにいただいた(*)シューマンのピアノ・ソナタ、嬉しくてずっと聴いておりました。嬰ヘ短調、作品11、エレーヌ・グリモーのピアノです。CDは、33CO-1786 という型番のレギュラー盤で、1987年8月に、ライデンのシュタットヘホールザールでPCM(デジタル)録音されています。解説は平野昭氏です。

思えばこの作品、若い頃にマウリツィオ・ポリーニの演奏するLP(G MG-2415)で、実によく聴いたものでした。1833年に着手され、1835年に完成した作品ですので、1810年生まれのR.シューマンは、23歳から25歳、本作品を献呈されたとき、クララは16歳でした。私がこの曲を好んで聴いていたのは、作曲者が同世代であるという親近感だけではなく、当時置かれていた個人的な状況から、ソナタ形式の枠におさまりきれない、たたきつけるような音楽に魅力を感じていたためでしょう。それにつけても、このCDの録音当時、エレーヌ・グリモーは18歳!本当にピアノを弾くために生まれて来たようなお嬢さんです。

第1楽章、崩れ落ちるように下降する音型と、問いかけるように上昇する短い旋律。暗い響きの、ウン・ポコ・アダージョの序奏部は魅力的です。深い沈黙のあと、再起する音楽はスピードと熱を増して来ます。主部はアレグロ・ヴィヴァーチェ。
第2楽章、短く簡潔で、美しいアリアです。惚れっぽいシューマンの自作歌曲「アンナに寄せて」によるアリアだそうで、アンナって誰?
第3楽章、スケルツォと間奏曲、アレグリッシモ。生き生きとした符点リズムが面白い効果を出しています。
第4楽章、フィナーレ:アレグロ・ウン・ポコ・マエストーソ。ソナタ形式という容れ物に対する青年シューマンの率直な解答がこの楽章かと思います。噴出するロマンティックな情熱と、多彩な転調やリズムを自在に展開しながら、なんとか理知的な形式を保っている音楽、とでも言えば良いのでしょうか。

エレーヌ・グリモーの演奏は、ポリーニ以上の快速テンポですが、ほんとにみずみずしい、伸び盛りのシューマンです。彼女の演奏を通じて、今はやや遠くなった若い時代を思い出すのは、懐かしくもあり、ほろ苦くもあり。1976年9月と書き込みのあるポリーニのLPを聴くのは、大きく方向転換せざるを得なかった当時の個人的事情から、甘さよりも苦さが勝ってしまうようで(^_^;)>poripori

参考までに、演奏データを示します。
■エレーヌ・グリモー盤
I=11'24" II=2'53" III=4'51" IV=11'13" total=30'21"
■ポリーニ盤
I=11'53" II=3'06" III=5'08" IV=11'39" total=31'46"

(*):さえないクリスマスが一転して~「電網郊外散歩道」
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