徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

漱石拙を守るべく

2016-05-14 18:46:48 | 文芸
 漱石の「草枕」の十二に次のような一節がある。

木瓜(ぼけ)は面白い花である。枝は頑固で、かつて曲った事がない。そんなら真直かと云うと、けっして真直でもない。ただ真直な短かい枝に、真直な短かい枝が、ある角度で衝突して、斜に構えつつ全体が出来上っている。そこへ、紅だか白だか要領を得ぬ花が安閑と咲く。柔かい葉さえちらちら着ける。評して見ると木瓜は花のうちで、愚かにして悟ったものであろう。世間には拙を守ると云う人がある。この人が来世に生れ変るときっと木瓜になる。余も木瓜になりたい。

 漱石は「草枕」を執筆する9年ほど前、つまり熊本時代であるが、こんな俳句を残しており、上の「草枕」の一節と呼応している。

木瓜咲くや漱石拙を守るべく

 要するに、木瓜のように頑固で実直で拙い人生を歩みたいということなのだろう。最近、テレビで見かけた某知事のような生き方とは対極にあると言っていいだろう。
 ちなみに、木瓜の花言葉は「一目惚れ」「妖精の輝き」「先駆者」「平凡」だそうである。


鎌研坂公園の漱石句碑