徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

「翁」の発生と思想

2021-05-13 22:14:15 | 伝統芸能
 「翁プロジェクト」の熊本公演を見てから2ヶ月が過ぎたが、時間が経つにつれ、貴重な体験だった実感が湧いてくる。
 この「翁」公演に先立って、オンラインで行われたシンポジウムの映像がYouTubeにアップされているのでじっくり見せてもらった。
 登壇者は次のお三方
  松岡心平(能楽研究者、東京大学名誉教授)
  中沢新一(思想家・人類学者、明治大学 野生の科学研究所 所長)
  沖本幸子(日本文学・芸能研究者、東京大学准教授)

 中沢さんは時々テレビで拝見するが松岡さんは初めて拝見した。進行を務めた沖本さんは3年ほど前、著書「乱舞の中世 白拍子・乱拍子・猿楽」を読ませていただき、中世芸能への造詣の深さに感心したことがある。シンポジウムは「翁」について、その発生の過程と思想的な意義についてさまざまな切り口から議論が進められた。とにかく専門的な知識に基づく議論には付いていけないところも多々あったが、後戸の猿楽、宿神、ビナヤカ、花祭と鬼等々、気になるキーワードについては今後文献などで調べてみたいと思う。
 そのことよりも何よりも、お三方とも能楽の中で「翁」が一番好きだという話には「わが意を得たり」という思いで嬉しかった。この何のストーリー性もない祭祀のような芸能に人はなぜ惹かれるのか。数年前に読んだ折口信夫の「翁の発生」も再読してみたいと思う。


2021.3.9 水前寺成趣園能楽殿 翁プロジェクト熊本公演(翁プロジェクトTwitterより)