私がまだ「ジジイ」になって無くて「オッサン」だった頃、若気の至りから金髪を求めて旅に出たことがあったわけです。
いや、思い出話なので正確性は無く、懐古の中身は大概美化され膨らまされして真実からは遠くなるもんでありますが、まっ、そこはどーせ元から誰も知らない話ということで・・・講釈師、見てきたような嘘を言いと思って読んでいただければ幸いであります。
さて、金髪を求めてアメリカに行ったわけですが、それはあっさりと頓挫しまして、目的は達しなかったわけであります。
なのでその手のムフフとかウフフと言う話題はありません・・・悪しからず、であります。
あれです・・・何故に金髪に巡り会えずに玉砕したかと申しますと、人のいない山に入っちまったからなんであります。
まず、行った先はアメリカ合衆国はコロラド州のデンバーでありました。
そこにはロッキー山脈があって、富士山より高い山がゴロゴロあるのであります。
で、長いことコンチネンタル航空のマイレージを貯めていた私でありましたが、その頃、コンチネンタルとユナイテッドが合併したらしく、コンチのマイレージがユナイテッドになったわけであります・・・要するにアメリカへ行けるただ券が手に入ったということであります。
そんなわけで根っからスケベなオッサンは軽い気持ちで金髪とお手合わせ願うべく作戦を練ったわけであります。
しかし、当時山登りもそこそこ趣味にしていた私は、序でだからアメリカの山に登ってこようという二足のわらじ計画を立案したのが運の尽きだったのであります。
デンバーについた私はレンタカー屋に行って「アイ ハブ リザベイション マイネーム イズ オッサン」と流暢な英語で難儀しつつもレンタカーを借り、勇躍ロッキー国立公園を目指したのであります。
で、レンタカー屋で説明を受けた時に「舗装路以外に踏み込んで車を壊したら保険きかないから実費ね」とそこだけしつこく念を押されたわけであります・・・それがどんな意味だったのかは後に嫌という程嚙みしめるわけでありますが・・・。
そんなわけで、初日はホテルに泊まってデンバーの街へ行き、ロッキーの山の地図と現地だと日本の半額以下だった(日本円が90円の頃)ガーミンのGPSやら食料やロープやらを買い求めた次第であります。
で、レンタカー屋のおばさんにとりあえず「エステスパーク」へ行け、と教えられ、登山用に買った小さなGPSを頼りにハイウェーに乗り出したわけであります。
じつは、今はジジイで日本にいるけれども、オッサンだった頃はフィリピンに住んでいたことがあるので左ハンドルの右側通行は苦手ではないのであります。
とは申しましても看板が全部英語なんで読もうと思っているうちに通り過ぎるわけでして、そりやぁ少しは緊張しました。
で、スポーツ選手の間では高地トレーニングで有名なボールダーの街なんてところを抜け、ズンズンと走り、ゲートで入場料を支払ってロッキー国立公園に入ったわけであります。
さて、まずは日本からネットで予約したキャンプ場に行かなくては・・・いや、この道ですでに標高3500メートルを超したわけでして、なんともはや、間も無く富士山の高さかと、感動と興奮の嵐に包まれたのを覚えております。
で、たしかグランドレイクという名前のオートキャンプ場だったと思うんですが、そこへたどり着き「アイハブ リザベイション マイネーム イズ オッサン」と得意の英語で来場を告げたんですが、なんだか良くわからない感じでしたが、手渡された番号札の陣地に車を停め、テントを張った次第であります。
その日の晩飯は今でも鮮明に覚えております。
日清の焼きそばとマルコメのインスタント味噌汁に、デンバーで買ってきたビスケットと、バドワイザーライトでありました。
大きなキャンプ場にはアメリカらしいフルサイズの大型キャンピングカーが並んでいるわけでして、一人用のアライのエアライズ1テントのなんと小さく惨めなことよ、と暗い気持ちになったのでありました。

太平洋と大西洋を分ける分水嶺 Mount IDA 3,921 m

カシオのトレックは3950メートルを差しました

ロングホーンシープ ロッキーっぽかったであります
と、いうことで、とりあえず手近な山で富士山より高い山はと地図で物色すると、割と近くに 3,921 mのMount IDAがありまして、まっ、4000メートル峰を目指すという目標には少し欠けるけれども、太平洋と大西洋の分水嶺を跨ぐ機会もあとはないだろうと思い登ったのでありました。
いや、山高きがゆえに尊からずとはよく言ったもんでして、人がいなくて静かで登った気のする山ということでは、この後に登った5つの4000メートル超の山より味があったわけであります。

ロングスピーク
これ以外には、グレースピーク&トレースピーク、マウント・ビルスタッド、マウント・エルバート、マウント・エバンス・・・そして、本命だったLongs Peakに登ったわけです。
ロングスピークはガイドブックでも難しさ最高ランクのVery Difficultの山でして、登れるかどーか不安だったのでありました。
しかし、キャンプ場のレンジャーが水をたくさん持って早朝に出ればなんとかなる、テクニックよりも気合だ、と背中を蹴飛ばしてくれたので登ることにしたのでありました。
で、運良く天候に恵まれ、憧れの山に登ることができたのであります。
なんと申しましょうか、またいつの日か「思い出」と称して書くことがあるかもしれませんけど、このロングスピークの成功があったのでその後ヒマラヤに足が向いたわけであります。
と、いうことで、今はジジイがまだオッサンだった頃の思い出話でありました。
えっ・・・? 金髪の話ですか? それはまた別の機会に・・・なんちゃって。