北野進の活動日記

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原発輸出総崩れでもアベノミクスは「今なお進化」!?

2019-01-29 | 脱原発


昨日から通常国会がはじまり、安倍首相は施政方針演説をおこなった。
全体、目新しさが乏しく「1億総活躍社会」など目を引くスローガンも見当たらない。
当然ながら厚労省の毎月勤労統計の不正に大きな関心が集まり、アベノミクス偽装との批判の声も上がっているが、アベノミクスといえば成長戦略の柱の一つである原発輸出が総崩れした中、何か言及がないのか前文に目を通してみる。

「『成長と分配の好循環』によって、アベノミクスは今なお進化を続けています。」とのこと。
安倍政権に都合の悪いことは言わないのが施政方針演説だ。
とは言っても原発メーカーや電力会社など原子力ムラの皆さんにとってもここは「心配するな。安倍政権がついているぞ」という力強い?一言がほしかったのではないか。

ちなみに過去の安倍政権の施政方針演説をふり返ると、第二次安倍内閣が発足して最初の2013年2月の演説は福島の除染、風評被害の防止、早期帰還に加え、
「東京電力福島第一原発事故の反省に立ち、原子力規制委員会の下で、妥協することなく安全性を高める新たな安全文化を創り上げます。その上で、安全が確認された原発は再稼働します。
 省エネルギーと再生可能エネルギーの最大限の導入を進め、できる限り原発依存度を低減させていきます。同時に、電力システムの抜本的な改革にも着手します。」
と再稼働宣言をおこなっている。

2014年は、福島の復興、汚染水対策に加え、エネルギー政策については
「これまでのエネルギー戦略をゼロベースで見直し、国民生活と経済活動を支える、責任あるエネルギー政策を構築します。原子力規制委員会が定めた世界で最も厳しい水準の安全規制を満たさない限り、原発の再稼働はありません。徹底した省エネルギー社会の実現と、再生可能エネルギーの最大限の導入を進め、原発依存度は可能な限り低減させてまいります。」
とし、「再稼働します」との表現は伏せられたが、一方で「日本を売り込む」という見出しで電気のインフラ輸出、つまり原発輸出にも触れている。

2015年はエネルギー政策にかなり字数を割き、特に原発については、
「低廉で、安定した電力供給は、日本経済の生命線であります。責任あるエネルギー政策を進めます。
 燃料輸入の著しい増大による電気料金の上昇は、国民生活や中小・小規模事業の皆さんに大きな負担となっています。原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた原発は、その科学的・技術的な判断を尊重し、再稼働を進めます。国が支援して、しっかりとした避難計画の整備を進めます。立地自治体を始め関係者の理解を得るよう、丁寧な説明を行ってまいります。
 長期的に原発依存度を低減させていくとの方針は変わりません。あらゆる施策を総動員して、徹底した省エネルギーと、再生可能エネルギーの最大限の導入を進めてまいります。」
と踏み込んでいる。

2016年からは一転、福島の復興には触れ続けるが、原発への直接の言及はなく、パリ協定に絡めたエネルギー政策について、
「地球温暖化対策は、新しいイノベーションを生み出すチャンスです。主要排出国を含む全ての国が参加するパリ協定を歓迎します。温室効果ガスの排出量を二〇三〇年度までに二〇一三年度比で二十六%削減するとの目標の下、省エネルギーと再生可能エネルギーの大胆な技術革新、最大限の導入を進めてまいります。十五年間で、次世代自動車の販売を新車全体の七割にまで引き上げ、自動車市場の姿を一変させます。」
となる。

2017年も、
「本年四月からガスの小売りを完全に自由化します。昨年の電力自由化と併せ、多様なサービスのダイナミックな展開と、エネルギーコストの低廉化を実現します。
 水素エネルギーは、エネルギー安全保障と温暖化対策の切り札です。これまでの規制改革により、ここ日本で、未来の水素社会がいよいよ幕を開けます。三月、東京で、世界で初めて、大容量の燃料電池を備えたバスが運行を始めます。来年春には、全国で百か所の水素ステーションが整備され、神戸で水素発電による世界初の電力供給が行われます。」
といった論調になっていく。

2018年も福島の復興に絡め、
「福島イノベーション・コースト構想が、いよいよ本格化します。浪江町では、この夏、世界最大級の水素製造工場の建設を開始します。再生可能エネルギーから水素を生み出す、まさに「CO2排出ゼロ」の新しいエネルギー供給のモデルです。オリンピック・パラリンピックでは、福島産のクリーンな水素を使って、「復興五輪」を世界に向けて発信してまいります。
 沖合では、世界初の浮体式洋上風力発電の本格稼働が始まりました。洋上風力発電の更なる導入に向けて、発電のために海域を占用することを可能とする新たな制度を整備します。
 原発事故で大きな被害を受けた福島において、未来のエネルギー社会の姿をいち早く示し、世界の脱炭素化を牽(けん)引してまいります。」
となる。

そして今年も原発への言及はなく、福島の帰還政策加速のみ。強いて言えば「世界の中の日本外交」のくだりで、
「我が国は四年連続で温室効果ガスの排出量を削減しました。他方で、長期目標である二〇五〇年八十%削減のためには非連続的な大幅削減が必要です。環境投資に積極的な企業の情報開示を進め、更なる民間投資を呼び込むという、環境と成長の好循環を回すことで、水素社会の実現など革新的なイノベーションを、我が国がリードしてまいります。」
とエネルギー政策に触れている。

以上、ざっくり施政方針演説の中の原発問題を見てきたが、2016年以降は原発輸出や再稼働について直接の言及はなくなった。
原発輸出は「進化」どころか行き詰まり、総崩れだから触れず、再稼働はあえて語らずコソコソと進めていくという方針か。
この間、もんじゅの廃炉で核燃料サイクル路線の行き詰まり、エネルギー政策の根幹の見直しが迫られているが、これも都合悪いから一切触れない。

これが安倍政権の施政方針演説だ。
ちなみに今回の施政方針演説からは「沖縄に寄り添う」との文言も消えた。
言ってることより言わないことに注目しなければならない。


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