志賀原発の事故を想定した原子力防災訓練が今日(11月4日)実施された。
福島第一原発事故後では8回目の訓練となるが、今回も訓練の監視(調査)行動に参加する。
私は例年のオフサイトセンターンに加え、複合災害訓練の一部であるヘリによる避難訓練、そして避難路にあるスクリーニングポイントでの訓練をみる。
報告の前に、この間の監視行動の報告は備忘録を兼ねて下記にアップする。
2018年訓練報告・抗議声明
2017年訓練報告・抗議声明/a>
2016年訓練報告・抗議声明
2015年事前申し入れ 2015年訓練報告
2014年(1日目) (2日目) 声明 調査報告書
2013年 調査報告書
2012年訓練前日 訓練当日 アンケート報告
2015年以降はほぼ同じ訓練内容で、大きな変更点は5~30キロ圏の避難対象区域を変えるくらい。
原子力防災訓練に対する「そもそも論」からの批判は最後の「抗議声明」をご覧いただくとして、訓練に熱心に、真剣に取り組んでいる皆さんに敬意を払いたいと思いつつも、それでもなあ~と言うのが今回の訓練である。、訓練内容のマンネリ化が一段と進んでいると感じる。
オフサイトセンターのブラインド訓練(シナリオを事前に参加者に伝えない訓練)は2014年の国主催の訓練から導入されており、今回で6回目となる。
2014年の訓練を改めて思い起こしてみると、実際に「副大臣を乗せた自衛隊のヘリが悪天候で飛ばない」など、シナリオ外の事態が次々と起こり、なかなかの緊張感の中の訓練だった。
それが今回は皆さん、淡々と役割をこなし、短縮した訓練時間すら間延び感たっぷりである。
事前の研修の成果ともいえるが、一方で新しい課題を全く提示しない進行にも大いに問題ありと感じた。
志賀原発からサイト内の状況を伝える一報が入る。
その後も適度な間をおいて状況悪化の連絡が入る。
オフサイトセンターの中では、やるべきことをてきぱきとこなしたことになっている。
しかし先の台風災害でも「浸水想定区域外でも浸水した」、「避難所に住民が入りきれずたらい回しにあった」、「電源回復の見通しが全く違った」などなど、災害対策本部の「想定外」が次々と起こっている。
今回想定した複合災害も道路の寸断だけ。
志賀浦地区の住民684人が孤立したとの想定だが、一部住民が野球場から陸自、空自のヘリで羽咋市内へ、一部住民が安倍や漁港から海保の船舶で高浜漁港へ、そして建設業協会が道路を応急復旧して「孤立住民の移動完了」である。
避難住民からも、「うまく野球場まで来れたからいいものの・・・」と言われる始末だ。
今回は金沢方面のスクリーニングポイントを県立看護大だけではなく高松SAにも設け、汚染されてなければそのまま金沢方面の避難所に走る展開。
汚染されていたらバスは看護大に向かい、住民は体育館でスクリーニングを受ける。
簡易除染のテーブルに掛けてあるシートが裏表逆だったことが参観者の指摘で明らかになったそうだ、
スクリーニングや除染作業という、実際はかなりの緊張感の中で運営される場所が、形だけ整えればいいという意識で設営されているとしたら大問題だ。、
千里浜なぎさドライブウェーも30キロ圏内。
今日は空気が澄んでいたので目の前にくっきりと志賀原発が見える。
風向きが変わればすぐにここも避難対象区域だ。
毎年繰り返すが、単なる一企業の、一つの発電手段に過ぎない志賀原発。
しかも約8年8か月も稼働しない原発のために、住民は命の危機、ふるさと追われる危機にさらされている。
現地災害対策本部会議では、北電の担当者が志賀原発の状況を報告する前に、「この度は私どもの志賀原発が事故を起こし皆さまに大変なご迷惑をおかけしていますことをお詫び申し上げます」といった趣旨の発言をするが、迷惑をかけないよう早く廃炉にしてもらいたものだ。
実働部隊の皆さんの努力には敬意を表するが、それぞれの組織の上に立つ災害対策本部の椅子に座る皆さんには、このような馬鹿げた訓練をしなくてもいいよう、廃炉に向けた議論を是非進めていただきたいものだ。
以下、今日の調査行動を担った3団体が発表した抗議声明である。
ご一読を。
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抗 議 声 明
本日午前7時30分から志賀原発の事故を想定した石川県原子力防災訓練が実施された。東京電力福島第一原発事故後8回目となる防災訓練である。この間、私たちは再稼働前提の訓練に抗議すると同時に、福島第一原発事故の教訓を踏まえるなら最善の原子力防災は原発廃炉であると訴えてきた。地震だけでなく昨今の異常気象による複合災害、あるいは無防備と言えるテロ攻撃を想定するならば、廃炉はなおさら緊急の課題である。しかし、石川県はじめ関係自治体は今回も志賀原発の再稼働を前提とした非現実的で実効性のない訓練を実施した。強く抗議し、以下、問題点を指摘する。
1.複合災害で破たんする原子力防災
(1)異常気象に向き合わないマンネリ化した訓練
近年、巨大台風襲来による暴風と豪雨、大洪水、高潮、大規模停電、さらに豪雪による交通網の麻痺や災害級の猛暑など「異常気象」が常態化し、相次ぐ巨大地震、大津波の脅威も含め、現代社会は巨大自然災害の危機に直面している。これらの災害に起因する原発の重大事故、あるいはこれらの災害と並行して起こる重大事故に対して原子力防災は機能するのか。原発立地地域の住民はもちろんのこと、多くの県民の不安は一段と高まっているが、複合災害訓練はここ数年の訓練同様、「地震による道路の一部寸断」を想定するのみで、広域・複合・長期化する巨大自然災害に向き合う姿勢は全く感じられない。
(2)複合災害で被ばくは深刻化
政府は2015年に防災基本計画を修正し、複合災害時には自然災害に対応する「緊急災害対策本部」と原子力災害に対応する「原子力災害対策本部」の連携体制を整えることとし、複合災害への対応について検討を重ねている。基本的には差し迫った自然災害からの人命のリスク回避が最優先となる。当然の対応だが、結果として放射能からの避難行動は二の次となる。現行の計画でも住民に被ばくを強要するが、さらなる被ばくは避けられない。巨大自然災害と原発の重大事故による複合災害時、住民避難計画は破たんする。
(3)廃炉こそ複合災害対策
地震や津波は防げない。異常気象は国際的な気候変動対策が急務だが、直面する自然災害には防災・減災対策を講じるしか術がない。一方、原子力災害は人災である。大自然の猛威にさらされ続ける中、人命へリスクを減らすためにも志賀原発の廃炉は急務である。
2.くり返される再稼働前提の訓練
(1)再稼働路線容認の防災訓練
志賀原発直下の断層について有識者会合は全会一致で「活動層」との評価書をまとめたが、北陸電力は志賀再稼働の方針を変えず、原子力規制委員会の新規制基準適合性審査に臨んでいる。しかし、ここでも北陸電力のデータ不足が厳しく指摘され、「活断層」を否定する見通しは全く立っていない。こうした中、県は停止中のリスクが山積するにもかかわらず再稼働前提の訓練を繰り返している。北電の再稼働路線の容認、あるいは期待しているかのような県の姿勢からは、県民の安全・安心を守る決意が感じられない。
(2)向き合うべきは停止中の原発の危険性
停止中とはいえ、志賀原発ではむき出しの燃料プールの中に使用済核燃料が保管されている。冷却機能の維持は至上命題であり、そのための電源は欠かせない。ところが志賀原発では直下の活断層に加えて、1昨年は雨水大量流入事故、今年7月には非常用の高圧電源車の火災事故発生と、電源確保をおびやかす「あってはならない事故」が相次いでいる。特定重大事故等対処施設(いわゆるテロ対策施設)もいまだ整備されていない。サウジアラビアの石油施設へのドローン兵器による攻撃は全ての原発施設にとって他人事ではない。複雑な国際情勢下、志賀原発への攻撃を単なる空想として切り捨てることはできない。核燃料の撤去こそ必要な防災対策であり、撤去までの間は停止中の原発の重大事故を想定した訓練を実施すべきである。
3.実効性のない訓練の繰り返し
(1)新たな安全神話をつくる「スムーズな避難」
今回の避難訓練も住民の参加はごく一部である。避難指示の伝達漏れはなく、避難指示の前に避難所で待機する人もいる。避難バスも事前に配車され、自家用の避難車両も少なく、スクリーニングポイントでの渋滞も起こらない。課題として残るヨウ素剤の配布は今回も実施されなかった。こうした中で毎回確実に実現する「スムーズな避難」は、重大事故でも避難できるという新たな安全神話をつくることになる。
(2)課題から逃げまくる非現実的訓練
住民へのヨウ素剤の配布、服用指示は重要な課題であるが、いまだ必要な住民への配布が可能かどうか検証はできていない。観光客など一時滞在者、特に近年増加する外国人旅行者への情報の伝達、避難、ヨウ素剤の配布等も懸念される。UPZ圏内の住民避難は、訓練ではあらかじめ風下エリアが決められているが、実際は緊急時モニタリングと連動した迅速、的確な行動が求められる。いまだ実践的な訓練は行われていない。防災業務従事者の被ばく対策や交代要員の確保も重要な課題である。加えて半島先端地域固有の課題もある。この間の訓練同様、今回も取り組みやすい項目をつまみ食いするだけの訓練に終始したと言わざるを得ない。
4.繰り返して指摘する!「今こそ常識に立ち返れ」
一企業の、電気を生み出す一手段に過ぎない志賀原発のために多くの県民の命や暮らしが脅かされ、財産を奪われ、ふるさとを追われる危険に晒され続けている。このような異常な事態を放置し、さらには覆い隠すかのように防災訓練が繰り返されている。避難させるべきは住民ではなく核燃料である。北陸電力は人災である原子力災害を防止するため、直ちに志賀原発の廃炉を決定せよ。活断層上にある核燃料を速やかに撤去せよ。
2019年11月4日
志賀原発を廃炉に!訴訟原告団
社会民主党石川県連合
石川県平和運動センター
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