24日は熊本県庁阿蘇地域振興局をからスタートし、阿蘇の世界農業遺産認定に関わる7か所を訪れる。
阿蘇地域振興局では、世界農業遺産を担当する農林部から農業遺産認定に至る経緯や、認定された「阿蘇の草原の維持と持続的農業」の概要について説明を受ける。
日本最大の2万3千haの広大な草原を平安時代から続く野焼きによって維持しているところが最大の特徴。世界各地でおこなわれる焼畑との違いが生物多様性の維持の大切なポイント。
狭い部屋での説明となったのは、地域振興局内に昨年の阿蘇地域の豪雨災害の対策室が置かれ会議室が埋まっているため。視察先の移動途中でも至る所で災害の爪跡を見る。
続いて阿蘇の外輪山であか牛を飼い、草原の維持再生のため、野草たい肥のよる農業にも取り組む町古閑牧野組合長、草原再生シールの会の会長も務める市原啓吉さんから現地視察に同行してもらい説明をうける。
後継者問題、ボランティアの活躍も含め、牧野維持の工夫や苦労を聞く。
野焼き作業では時として身の危険も生じる。
JAが運営する農産物直売所へ。
草原再生シールで商品を差別化。
シールを貼ったものから売れていくという。
昼食は今日の視察全行程に同行してもらった県職員の方のお薦めであか牛のステーキ丼。
霜降りの牛肉が評価される牛肉市場の中で、ヘルシーなあか牛の認知度をいかに高めていくかも世界農業遺産の活用を巡る大事な課題。
農業遺産の文化面では阿蘇神社周辺にたくさんある湧き水を生かした「水基(みずき)」がある。
街並みも整備され始めている。
はな阿蘇美という施設を視察。
地元農産物を使ったレストラン、売店、バラ園などがある。赤字続きの施設だったが、経営者が変わり一気に黒字転換。人気の施設になたという。
今回の視察の重要なポイントである公益財団法人「阿蘇グリーンストック」へ。
世界農業遺産を支え、活用を図る民間団体である。
野焼きのボランティアの受入や修学旅行の受入、あか牛オーナー制度、さらに調査・研究活動もおこなう。
能登にも佐渡にも農業遺産を支える民間組織があるが、財政規模やスタッフ体制も含め規模が違う。
ある意味、能登よりも「先進地」である。
説明を受けた場所は古民家を移築した施設で、研修やボランティアの宿泊施設としても使われる。
視察先の最後は、当初の予定では大観峰。受け入れてくれた熊本県庁担当者がぜひ阿蘇の雄大な自然と草原を満喫してほしいという計らいだが、あいにくの朝からの雨で見晴らしは最悪。
急きょ予定変更で阿蘇山の火口へ案内してもらうことになった。
ようやく山頂に到着し、車を降りると硫黄の臭い。
風向きの関係で煙がこちらに向かってくる。
のどに違和感を感じる。
「火山ガス注意報発令。直ちに避難してください!」
残念ながら火口は見れなかったが、ジオパークにも認定されている阿蘇の大自然を体感して、この日の視察を終えることになった。
能登半島では道路の拡張、名所の改修など自然の営み生物多様性ってこれでいいのか!?とつい考えてしまいます。世界農業遺産を観光につなげてはいないだろうか
経済優先でなく、従来の能登の里山里海の営みをもっと大切にしたいですね。・・・阿蘇の世界農業遺産 大変参考になりました。 有難うございます。
実は、すでに阿蘇は能登の3倍近い1700万人もの観光客の入込があります。ドライブで通過する人が多い中、いかに宿泊を増やすかが課題とは言ってましたが、それより現下の最大の課題は大草原の維持にあると明確に認識しています。明治大正期と比べ草原の面積が52%に減少していることにも大きな危機感をもっています。
大草原は野焼きという人の営みを通じて維持されるわけで、グリーンストックが募集するボランティアが5500haの野焼きを応援しています。アクションプランではボランティアのさらなる育成や企業や金融機関も絡めた財源の確保、専門の牧野再生の請負組織の設置も検討していくことになっています。
他地域の取り組みから学ぶべきことはたくさんあると痛感します。