昨日(9月19日)の私の一般質問の答弁を何回かに分けてアップします。
まず、芸術祭のバリアフリー問題についてです。
※正式な議事録ではありません。引用は慎重に願います。
<北野質問>
一点目は芸術祭におけるバリアフリーの問題です。
芸術祭序盤、市内外から多くの方に来場いただいています。市民の皆さんも回覧板で案内が回ってきた前売りのパスポートを購入し、開会を待って各会場を熱心に回っている方が多くおられます。市外からもリュックを担いで歩き回る若者、電動レンタサイクルで軽快に作品会場を回る若者の姿が見られます。これまで珠洲ではあまり見られなかった光景です。
一方で、市民の皆さんとなれば足が不自由で杖を手放せないお年寄り、押し車につかまりながらゆっくりと移動するお年寄りも多くおられます。市外からもいわゆる熟年夫婦とお見受けできる方の姿もあります。
地域全体をフィールドとして開催する奥能登国際芸術祭は、海岸の岩場、砂浜、空き家や舟小屋、あるいは遊歩道を歩いて、歩いて、こんなところにアートが、との驚きの作品もあります。都会の美術館と同じレベルのバリアフリーを実現するのは困難であることは理解できますが、結果として足が不自由な方はパスポートを購入したのはいいけれど、見れる作品、見れない作品があることも現実です。
市長は「今回の芸術祭を通して珠洲市が再び外に向けて大きく開かれていくことを確信しています」と述べました。珠洲市が外に向けて、特に海外に向けて開かれていくことはとても大切なことです。その割には案内看板含め受け入れ態勢は決して十分ではないわけですが、こうした海外からの来場者を含めた、あらゆる人に開かれたバリアフリーの思想、そして具体的なハード、ソフトの受け入れ態勢が求められていたのではないでしょうか。
昨年3月議会で、私は障害者差別解消法の施行を前に何点か質問をしました。障害は個人ではなく社会にあり、社会の側が変わらなければならないという障害者権利条約や障害者差別解消法の基本的な理念を紹介し、市の対応を問いました。総務課長からは「本市の全職員が同法の趣旨を理解し、差別が解消される社会の実現に努めなければならない」との認識が示され、対応要領を作成し、「職員研修の機会を通して、本法律の趣旨を全職員が理解するよう努めてまいりたい」との答弁もあったわけです。
そこでまず以下4点お聞きします。
昨年4月施行の障害者差別解消法は国や地方公共団体に対して不当な差別的取り扱いを禁止し、障がい者に対して合理的配慮をおこなうことを法的義務としています。奥能登国際芸術祭は実行委員会方式による開催とはいえ、財源は本市の負担金、国からの補助金、交付金が中心を占め、組織的にも市長が実行委員長を務め、事務局も本市職員が中心を担ってるわけです。芸術祭にも障害者差別解消法は原則適用されるものと思いますが見解をお聞きします。
2点目、旧飯塚保育所など改修に合わせてバリアフリー対応したところもあれば構造的、あるいは地形的に限界ありというところもあるわけですが、芸術祭各作品展示場のバリアフリーの実施状況についてお聞きします。
バリアフリーへの対応がほとんどできていないことについて、総合ディレクターの北川フラム氏や諸々の業務を委託したアートフロントギャラリーにそういう認識がないのかなと心配になり、よその芸術祭について若干調べてみました。昨年の瀬戸内芸術祭では、ガイドブックには記載されていませんが、ホームページに会期終盤の日付でしたがバリアフリー情報がアップされています。各作品のバリアフリー対応の有無、バリアフリー対応のトイレの場所一覧、そして貸出用車いすの配置場所と連絡先一覧です。
先般開催された北アルプス国際芸術祭でもホームページのQ&Aのコーナーで、高齢者や障がい者の鑑賞に関する問い合わせに対して「鑑賞できます。場所によっては難しいかもしれませんのでお問い合わせください」との回答があり、さらに障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の提示による料金優待」との記載もあります。
昨今、美術館での障がい者割引は常識と言っていいでしょう。ちなみに石川県立美術館は、身体障がい者手帳や療育手帳、精神障がい者保健福祉手帳を所持する方、そして付添者も一人までは企画展、コレクション展含め無料です。21世紀美術館は2割の減額となっています。多くの映画館でも障がい者割引があります。まして奥能登国際芸術祭はハード的な障害で見れない作品があるわけですから割引は当然でした。料金設定についての説明があったとき、高校生や小中学生の割引や各種優待手続きの記載をみながら、障害者割引に思いがいたらなかった自分を恥じながらいま質問をしてるわけですが、要するに業務を委託したアートフロントギャラリーの問題ではなく珠洲市の意識の問題だったわけです。
そこで質問の3点目として、会期後半に向け、ハード的な対応は困難であっても、情報発信を含め障がい者の方にもっと対応できることはないのか、お聞きをしたいと思います。
このバリアフリー問題、実行委員会の皆さんは初めての芸術祭開催でてんやわんや、問題意識はあっても手が回らなかったのかもしれません。都市部の施設内で展開される美術展ではなく、多くの作品展示が屋外、あるいは屋内であっても空き家や納屋などを活用する芸術祭では仕方ないんだという思い込みも、もしかしたらあったかもしれません。反省すべきは反省し、修正すべきは修正しながらいくしかありませんが、今後の継続開催を念頭に入れるなら、より深く主催者側としての思想が必要ではないかと思います。
歴史を振り返ると、アートが公共空間に飛び出したのはすでに明治時代からのことですが、バブル期の街中の彫刻、さらには都市再開発の中でのアートの活用、さらに都市部から田舎の空間へとアーティストが活躍するフィールドは時代とともに変化し、拡大してきました。しかし、美術館を飛び出し、創作活動の空間が広がるのと比例し、アーティストの自由な想像力がいかんなく発揮される環境が拡大したかと言えば決してそうではありません。美術館やギャラリーの中という空間の制約からは解き放たれたかもしれませんが、逆に言えば美術館という器に保護されることもなく、個々の作品に建築基準法や消防法、国定公園法、景観条例、屋外広告物条例など様々な法令の網がかかります。バリアフリー対応もその一つです。展示場所の周辺の駐車場確保や交通安全への配慮、さらに防犯対策や破損による被害対策などもあります。美術館内の展示室と比較し、屋外の公共空間では格段に多くの制約があります。
自由な創造力を発揮し、ある意味、既存の価値観を打ち破ってこそのアートですが、諸々の制約がある公共空間での作品展開となると、どこかで折り合いをつける議論も避けられません。アートだからとどこにでも、どんな作品でも受け入れるのは憲法の拡大解釈と同じだと警鐘を鳴らすキュレーターもいます。アートと公共空間の関係はどうあるべきか、思いがあればお聞かせいただきたいと思います。
答弁(泉谷市長)
初めに、芸術祭における障がい者への対応に関するご質問についてでありますが、作品展示会場のうちラポルトすずや日置ハウス、道の駅すずなりなど一部の会場では、バリアフリー対応のトイレやスロープが設置されております。また、旧保育所など公共施設にはスロープなどが設置されており、部分的にはバリアフリー対応措置がなされておりますが、そのほかの多くの会場では、段差や階段での入場、さらには急な坂道など障がいがある方や高齢な方々にとっては、入場しづらい作品展示会場が多くあるのが現状であります。
こうした会場のうち、市職員や市内外のサポーターが配置されている会場では、段差の注意喚起を促したり、時には入場時に手を貸したりと可能な範囲で対応を行っているところであります。残念ながら、海岸周辺や旧のと鉄道跡地の作品に関しましては、障がいのある方々にとって入場しづらい状況となっております。
瀬戸内国際芸術祭においても、各作品展示会場のバリアフリー対応の状況を一覧にして公開するなどの対応をなされており、こうした取り組みなどを参考に対応していきたいと考えております。
今後、30日余りの会期を残す中で、今一度、作品展示会場の状況を確認し、障がいのある方々にとって必要な情報を事前に提供できるよう、関連情報の発信や提供に努めてまいりたいと考えております。
3年後に芸術祭を開催する際においても、特に屋外や歴史のある建物を活用した作品展示に関しては、十分なバリアフリー対応ができないことが予想されます。
今回、開幕直前ではありましたが、芸術祭運営にあたってバリアフリー関係団体の皆様とどのような対応が可能かを協議してまいりました。結果としてハード面での対応には限界があり、障がい者が求める関係施設の情報を適切に提供することが重要かつ現実的な対応であるとご教示いただきました。あわせて「心のバリアフリー」、いわゆる周りの人たちの声掛けや心遣いが最も重要であるとのことでありました。
奥能登の特徴ある景観や古民家が醸し出す独特の空間などを活かし、本市の魅力を最大限に引き出していただけるアート作品が今後も展開されることを期待し、その中で障がいのある方々に、ハード面での課題を納得いただいたうえで芸術祭を楽しんでいただけるよう、運営面での工夫と強化を図って参りたいと考えております。
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