8月号、風のあとさき172に載った、「新盆」に、三冊目の本「この胸に光は消えず」の出版記念に兄が沙羅双樹を植えてくれた。
祇園精舎の鐘の音 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 聖者必衰の理をあらわす
母がこの一文を詠うように口ずさんでいる平家物語の冒頭の一節と知ったのは高校に入ってからで、沙羅の白い花を見ていると、遠い日々が昨日のように思い出され、まさに人の世の儚さを「ただ春の夜の夢のごとし」と続くこの一文に、涙がこぼれそうになる。
この世の一切のものは変わり、生まれたものは必ず死んで行く。どんなに愛していようとも、別れは必ずやってくる諸行無常とも、愛別離苦とも、悲しいけれども動かし難い真実のことばの前に、打ちのめされている感じがする。
今年は、7つ違いの妹と兄の新盆になる。一年も経たずに相次いで亡くなり、私は取り残されたようような寂しさをどうすることも出来なかった・・・・
この妹の死を兄に告げることができなかった。兄もまた重篤なな病に臥していたからである。・・・小康を得た時、兄は私の話を聞いていたが、さり気なく窓の向こうに視線をやると涙をこぼした。「兄さん芳子の分も生きてよ」・・・しかしその兄もこの世にいない。
もうすぐ二人の新盆、生かされている自分を大切に、感謝の気持ちで生きようと決め、妹の願い兄の願いであったと思うから。
祇園精舎の鐘の音 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 聖者必衰の理をあらわす
母がこの一文を詠うように口ずさんでいる平家物語の冒頭の一節と知ったのは高校に入ってからで、沙羅の白い花を見ていると、遠い日々が昨日のように思い出され、まさに人の世の儚さを「ただ春の夜の夢のごとし」と続くこの一文に、涙がこぼれそうになる。
この世の一切のものは変わり、生まれたものは必ず死んで行く。どんなに愛していようとも、別れは必ずやってくる諸行無常とも、愛別離苦とも、悲しいけれども動かし難い真実のことばの前に、打ちのめされている感じがする。
今年は、7つ違いの妹と兄の新盆になる。一年も経たずに相次いで亡くなり、私は取り残されたようような寂しさをどうすることも出来なかった・・・・
この妹の死を兄に告げることができなかった。兄もまた重篤なな病に臥していたからである。・・・小康を得た時、兄は私の話を聞いていたが、さり気なく窓の向こうに視線をやると涙をこぼした。「兄さん芳子の分も生きてよ」・・・しかしその兄もこの世にいない。
もうすぐ二人の新盆、生かされている自分を大切に、感謝の気持ちで生きようと決め、妹の願い兄の願いであったと思うから。