4/15(日) 昨日の土曜日は一日雨となった。久々に完全休養日として一日家にいることとした。酒精で疲れ果てた体を休めようという魂胆でもあった。
とは云いながら、暇である。借りている本を捲るが、これにも疲れた。そこで、奈加野の店主に頼んで仕入れてもらった「桜鯛」の料理を早々と始めることにした。
鯛は二本で、700gと800g程の大きさにしてもらった。鯛飯を作る予定なので大きな鯛だと、土鍋に収まらない。
一本は鯛飯にそのまま使う、もう一本は刺身とアラは煮付けにする。奈加野のオヤジが云うには、出汁を使えとのこと。上手い具合に、面倒な鱗取りはオヤジがしてくれていた。中々、気の利いた善いオヤジである・・・。
私流であれば、昆布・酒・塩・醤油に具を入れてそのまま炊くのだが・・・。この日は、オヤジの言を入れて、昆布・カツオブシの出汁をとって、これを煮汁に使うこととした。
先ずは、鯛を軽く素焼きしてから、刻み人参・干し椎茸・油揚げ・昆布を入れた土鍋に寝かせた。丁度一杯一杯の大きさであった。始めちょろちょろ、中パッパとわけの分からん呪文を唱えながら、炊き始めたのであった。
もう一本の方を、三枚に卸して身を刺身にする。片身はオヤジお薦めの皮付きを湯通しした刺身に、もう片身は皮をひいた刺身にする。三越前の”木屋”で仕入れた刺身包丁が、久々の出番となった。
兜を出刃包丁で割、骨を断ってアラ炊きを作る。日本酒を煮立て、砂糖・醤油に生姜を少々。大根と残っていた筍も一緒に煮る。
さて、鯛飯の具合は如何であろうか?鍋の方から湯気が盛んに立ってきた。少々オコゲの臭いもしだした。火を止めてじっと我慢、10~15分ほど耐えた。
鯛本体の周りの飯を、具を除けながら突付いてみる。なっなっ、なんと飯が柔らかい?柔飯は嫌いなんだ!これはならじと、蓋を戻して再度火を付けたが・・・。
結局、鍋底の飯が焦げただけで、柔飯は何ともならんかった。かくして、今春早々の桜鯛飯は、50点の出来栄え・・・嗚呼、失敗。それでも、丁寧に丁寧に骨を取り、鯛の身をほぐし、具と混ぜ合わせたのであった。
今度は5月の産卵期、近場に寄ってくる”のッ込み鯛”を購って、再度のチャレンジをするしかないようだ。
五月の鯛といえば、若かった頃に小宮係長に連れられて初めて鯛釣船に乗船、富津港から出た日のことを思い出す。前夜から釣り宿に泊り込み、明け方前に出漁した。「眠いですね~係長」などと云うと、『こんなものは、ふつう普通』と、つり好きな係長は笑っていた。
もう、40年近くも前になろうか・・・。沼津の友人Mに、長男が生まれた後のことだった。鯛が釣れたら、彼に届けようと勇んでいたが、僕たちは坊主であった。昼前、港に戻ると他の釣り舟の釣り人が大きな鯛を手にしていた。あの時の、穏かだった海と真っ青だった空の色が浮ぶ。
「口惜しいですね、係長」と云った。その小宮さんが、亡くなられてから久しい。沼津の友人Mとも、久しく顔を合わせていない。ひとつ一つの物事に、ひとつ一つの出来事が、思い出がある。余りにも多すぎ、余りにも在りすぎるのかもしれない・・・。