子どもを叱るとき,その叱り方というのはいろいろとあると思います。
叱るタイミング。
叱る環境。
叱る言葉。
叱る表情。
叱る立場。
その時の状況によって使い分ける技量が必要です。
今回は,そんな中にある,叱り方の一つとして。
「叱る」きっかけとなる,ある事件にあとに,先生がこう感じたとします。
・切に,子どもの心にメッセージを伝えたい。
・叱るというよりも,これをきっかけとして道徳的な話をしたい。
・叱る対象の子だけでなく,できるならクラス全員にしたい話がある。
そんなときは,
先生の体験談に変えて叱る
という叱り方があります。
子どもをめぐる事件で,子どもを叱るはずのものなのですが,先生の体験談に変えて話をします。
例えば,
じゅんくんが遊んでいて,ぶつかったはずみで学級の机を壊してしまったのですが,じゅんくんは言い出せず黙っていました。
その後,別の子の話から,じゅんくんが机を壊してしまったことがバレました。
そんな事件があったとします。
すでにじゅんくんは,居たたまれなくて,今にも泣き出しそうな顔をしています。
クラスのみんなは,じゅんくんに厳しい視線を送り,雰囲気が悪くなっています。
ここに,先生が追い打ちをかけてじゅんくんを叱ると,状況はさらに深刻になることは間違いないでしょう。
そんなとき,ふと視点を変えて,先生が話し出します。
「実は,先生も昔,自分がした悪いことを言い出せなくて,黙っていたことがあるんです。」
子どもたちは「えっ」という表情です。
「黙っている間,本当に耐えられない気持ちでした。悪いことをしたということは,自分で分かっているから,なおさらつらいんです。」
先生は,自分の体験談を話しているんだけど,その姿は今回のじゅんくんに重なっています。
「正直に言いだす勇気が,どれほど大事なものかを痛感しました。そのことがあってから,先生も少し変りました。」
子どもたちは,先生の話を聞きながらも,じゅんくんの胸の内を想像し,少し寛大になろうかとするでしょう。
じゅんくんは,直接的には叱られていないけど,先生の言葉は強く胸に突き刺さります。
こんな場面では,先生の体験談が子どもたちの心に届きます。
体験談だから,うわべだけでなく,感情もこもっているからです。
叱られる子の身になり,クラス全体の心情を想像する。
そこに,自分の体験談をもってきて,子どもたちよりは多くのことを経験してきた人生の先輩という立場から,親身に話をする。
また,一味違った叱り方ですね。