私は毎日学級通信を出しています。
B5サイズで,そこにはその日の授業での印象的だった子どもたちの活躍や,思わず笑いたくなるおもしろい1シーン,明日の連絡などをコンパクトにまとめていました。
この学級通信は,私が数少ない自慢できる仕事の一つでもありました。
どんな忙しい日でも,高学年担任であろうと,毎日続けていたからです。
そして,うれしいことにその中身もなかなか好評でした。
子どもたちにも保護者にも。
しかし,ある日クレームが来ました。
私は時折,その通信に子どもたちの日記を載せていました。
その日の際立っていい日記を1つか2つ。
お手紙で来たクレームの内容はこうでした。
「うちの息子の日記がずっと掲載されないのですが。読んでいても,そのことが不愉快で…」
と,その保護者の方の不満を表す文章が続いていました。
「うーん…」もちろんその子の日記が載らないのは,日記がよくないからでした。毎日,ほんの数行で,内容も乏しかったのです。
私にとっては,理不尽なクレームでした。
しかし,自信をもっていた学級通信を非難するものだったので,相当なショックを受けました。
本音を言えば「お宅の息子さんの日記を読んだことありますか!こんな…」と言いたい気分でしたが,そこは冷静になりました。
そして,反省もしました。
確かに日記の載らない子は悲しいでしょう。保護者も。いい日記を書かせていないのは担任の私なのです。
お手紙を返しました。
「この度は,貴重なご意見をいただき,ありがとうございました。学級通信の件,担任としても気づいていない至らない点があり,○○さんのおかげで…」と,精一杯のお礼と,謝罪をしました。
「同様に不快に感じる方が多くいるのであれば,学級通信をつくること自体を考え直そうと思います。」
とまで書きました。
そして,先輩の先生方にも相談しアドバイスをもらい,かつ次の日の学級通信でもその件を紹介しました。
そしてさらに…
数日後,必ずこちらからクレームの保護者に連絡をする!
ということを実践ました。
本当は,クレームを言ってきた保護者とは,その場でその件を解決したら,もうその後はできるだけ関わりたくないと感じてしまいがちですよね。
私のこのときの場合も,とりあえずその子の日記をすぐに載せる,日記の内容がよくなるよう指導する,不公平にならないよう掲載された子の回数を記録していく,ということを改善策としてやっていくことを示して,とりあえずの落着を見ました。
でも,私自身は納得のいかない部分も正直にいえばありました。(私もとても未熟者だということですが)
もう○○さんとは,あんまり関わりたくない,とも思いそうになりましたが,そこはぐっと踏ん張ろうと思いました。
重要なのは,先生と保護者のいい関係を築くことです。それを忘れてはいけない。
そこで,その子の日記を掲載したその日,そしてクラス全体に日記指導をしたその日,さらに学級通信を続けて2週間ほどたった日,こちらからその方に電話をしました。
「その後,学級通信をご覧になられて,いかがでしょうか。今日は,クラスで日記の書き方を…」
これで,保護者の方も,すっかり落ち着いてくれたように感じました。
先生と保護者の間にあった,気持ちの悪いしこりのようなものも解消されたように感じました。
この対応の仕方にも,先生の謙虚な姿勢を感じてくれていれば幸いです。
実際,私はとても謙虚な気持ちになりました。
そして,さらにこの対応をすることで,立場が逆転したようにも思います。
クレームを言ってきたときは,保護者が先生に圧力をかけるような関係があります。
それが,こちらから頻繁に連絡をすることで,逆に先生が先手を取れるようになります。
そんな相手には,保護者もまたクレームを浴びせる気にはならないでしょう。
やはり,肝心なことは,クレームの中身がどうのというより,それをきっかけとしてよりよい教師と保護者の関係を築こうとしていくことですね。
どんな場合も。