何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

ガラスの天井の上ゆく可能性

2016-11-10 18:33:33 | ひとりごと
彼女に、特に関心や好感をもったことはない。
それは、ファーストレディーであろうが、国務長官であろうが、アメリカ史上初の女性大統領の可能性が高かろうが、変わることはなかった。
むしろ、「前進あるのみ」のオーラを常にまとっている彼女を苦手なタイプだと感じていたのだが、彼女の敗戦の弁を聞き、初めて共感し、ある件では不覚にも目頭が熱くなった。

And to all of the little girls who are watching this, never doubt that you are valuable and powerful and deserving of every chance and opportunity in the world to pursue and achieve your own dreams.

この件を聞いた時、思いがけず、一人の少女の顔が心に浮かんだ。

赤ちゃんの頃の福々しい頬っぺに浮かんだ笑みは、見る者を幸せにし、この国に新しい希望が誕生したと確信させてくれるものであったが、「女では意味がない」という視線のなかで思春期を迎えている少女の頬は今、柔らかい笑みを浮かべながらもほっそりと影っている。

私達は気付いてはいなかった。
唯一のお姫様が誕生した時、日本中は湧きかえり、喜びに溢れていたため、気付いてはいなかった。
まさか、やっと授かった命の誕生に安堵と喜びを噛みしめている母の枕辺で、「一人産めたのだから、次は男子を」という言葉が突きつけられていようとは。

「本当に生まれてきてありがとうという気持ちで一杯になりました」という母の温かい涙と言葉に、まっとうな人間が共感しているその裏で、「女では意味がない」「次こそ男子を」と責め立てられ、追い詰められ、徐々に心を病まれていこうとしていることに、私達は気付いていなかった。

だから、「第三子(男子)を」という言葉と、その非道さが当たり前の世界に驚愕した。。
だから、父はまだやっと二歳を少し過ぎただけの娘について「周りから自分が認められているということを分かるようにしてあげることが大切で,それは一つの安心感につながっていくと思います。」と語らなければならなかった。

ようやく私達は事の深刻さを理解し、だから変えようとしたのだが、鉛の天井は今も影ばかりを落としている。

影は、光が強ければ強いほど、その闇の深さも増していく。
思春期の真っただ中、自分ではどうしようもない事に絡み取られ、影に覆われた薄紅色の頬は、縮こまってしまっている。
だが、光は必ずや闇に勝つ。
いや、影をも包みこむ光がある。

父が、その命を、性別に関係なく認めているだけでなく、
母が、その命を、性別に関係なく感謝しているだけでなく、
心ある国民は、その命を、性別に関係なく認め感謝し、愛していることを、
苦しんでいるお姫様に届けたい。

海の向こうで少女に向けて語られたこの言葉を、お姫様にも届けたい。
And to all of the little girls who are watching this, never doubt that you are valuable and powerful and deserving of every chance and opportunity in the world to pursue and achieve your own dreams.

お姫様のうちには光がある。
浴した人を幸せにする、光がある。

希望を胸に、再び少女の頬に光がもどることを心から祈っている。


最後まで毅然と前を向き、「正しいことの為に闘うことには価値がある、価値があるのだ」と繰り返す彼女の強さは、私にはない。
「闘う」ということも、どちらかと云えば苦手だ。

だが、正しいことを諦めないしぶとさは、ある。
正さゆえに苦しむ人を、心をこめて応援したい。
正しいことのために闘う人を、心をこめて応援したい。
正しいことが成るまで、しぶとく応援していきたい。

彼女は、ガラスの天井を破ることは出来なかったと語っているが、果たしてそうなのか、それについては、続く。


出展
平成14年 敬宮様ご誕生に際しての御会見 http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/02/kaiken/kaiken-h14-gotanjo.html
平成16年 皇太子様お誕生日に際しての御会見  http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/02/kaiken/kaiken-h16az.html

ヒラリー・クリントン(未来へ希望を託す)敗北宣言より