何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

お猫様の御相伴に与るワン

2016-11-14 19:20:05 | 
もう惰性としか云いようのない状態にもかかわらず、それでも新刊のチェックは怠らず読み続けているのだから、やはり「料理人季蔵捕物控」シリーズ(和田はつ子)は、何か読者を惹きつけるものがあるのだと思う。
それが、真似ようと思えばできそうな料理なのか、江戸の町屋の人情なのかは、読む者により異なるのだろう。が、私にとってのそれは、主人公・季蔵の、心を病む恋人の回復を願う優しい心にあるような気がしている。

とにかく、このシリーズの愛読者たちが読み続ける理由が、捕物の推理を期待してのことではないことは、確かだと思う。
そのようななか出版された待望の31巻「江戸あわび」(和田はつ子)は、大方の予想を裏切り、犯行動機もアリバイ工作もなかなかに秀逸なのだが、なんとこれが、ものの見事に「オリエント急行殺人事件」(アガサ・クリスティー)の焼き写しだから、参ってしまう。

「参ってしまう」と言いながら本作を楽しく読んだのは、お猫様がお召し上がりになるアワビ料理が美味しそうだった事と、無花果の天ぷらから上高地を思い出した事によるものだ。

現在世界的な猫ブームだというが、江戸時代にもお犬様ならぬお猫様ブームはあったのだろうか。
本作は、「にゃんこ屋」に集う愛猫家たちの忠義?の物語だが、その顛末は本作もしくは「オリエント急行殺人事件」に譲るとして、「にゃんこ屋」の女将が考案したお猫様のための「アワビ粥」がスゴイ、凄すぎる、食べたい。
(『 』「江戸あわび」より)
『アワビを小さく切り、胆と軽く炒めておく。そこへ米を入れて、さっと炒める。
 昆布出汁を入れ、四半刻(約30分)ほどことこと弱火で煮る。
 仕上げに胡麻油を加え、塩で調理し炒り胡麻をのせて仕上げる』
『アワビの身と胆を炒める時は、菜種油で、仕上げの風味は胡麻油でつける』という気の使いようで仕上がった「アワビ粥」は、さすがの料理人・季蔵も『これほど磯の風味が豊かなお粥を私は他に知りません』という出来栄え。

お猫様のおこぼれに私も与りたいが、それよりも今は、ワンコの怒りの視線を強く感じて、辛・嬉しい。

ワンコ先生の、「コレストロール値と高脂血症の値が高い」というご指摘を受け、大好物のチーズとパンのお預けをくらうことになった ワンコ
家族の誰かがチーズトーストを食べていると、駆けてきて、決め顔でお座りをして「ちょうだい」アピールをしていたのに、真面目な我家はワンコ先生の指導を守り、ほとんどお裾分けをしてあげなかったね ワンコ
ドライフードを食べづらくなって以降は、ササミでとったスープでふやかしたフードや、カボチャペーストとあわせたフードを毎食心をこめて作っていたけれど、それとてアワビ粥には、遠く遠く及ばなかったね ワンコ
ワンコの視線が痛いよ
痛いけれど、ワンコの視線を感じることが 嬉しいよ ワンコ

ワンコ
「江戸あわび」を読んでいると、上高地を思い出したよ ワンコ
本書は、アワビだけでなく無花果の料理も色々でてくるのだけど、その中に無花果の天麩羅があったので、
上高地温泉ホテルを思い出したよ ワンコ
  
ホテル看板の前に広がる六百山と霞沢岳

最近では、夕食に出されることはなくなってしまったけれど、数年前までは、夕食の献立には必ず無花果があったんだよ ワンコ
それは長い間、無花果をまるごと天麩羅にしたものだったのだけど、無花果を調理しデザートとして出されることもあったんだよ ワンコ
いつも何かしらの形で無花果が出てくるものだから、無花果に謂れのあるホテルなのかなと思っていたぐらいなんだけど、
そういえば、最近、無花果の天麩羅が出なくなったな ワンコ
パリッとした衣のなかの、トロッとした無花果は、他ではない美味しさだったのだけどな ワンコ
何 ワンコ?
「自分を置いてけぼりにして、そんな美味しいものを食べてたのか」って怒っているんのかい ワンコ
怒りをぶつける為でもいいから、逢いにきておくれよ ワンコ

こんな風に、読んでいるうちにアチコチ思いが飛んでいく、「料理人季蔵捕物控」シリーズ。
それを、発想が広がると捉えるか読書が散漫になると捉えるかは人それぞれだが、私は次の巻がでるのを楽しみにしている。

追伸
小豆ちゃん ママさんにアワビ粥を作ってもらったら、御相伴に与らせてさせてくださいね。