変身を欲せよ。おお、つねに炎に感激せよ、
その炎のなかで変容を誇るかに物は君から遠のく。
地上を統(す)べる、かの企図画的な精神は
図形の高揚する弧のうちで、回転点をなによりも愛している。
閉ざして停滞するものは、すでに凝固のうちにいる。
みすぼらしい灰いろの保護色をよそい、身を安全と妄想するのか?
待て、遠くから最も固い何者かが、硬(こわ)ばることを警めている。
災いなるかな――、不在のハンマーが振りあげられる!
泉となってそそぐものだけ、認識は認知する。
そして嬉々として認識はかれを伴(つ)れ、はれやかな創造物の間をみちびく。
しばしば発端とともに終わり、終結とともに始まる創造の。
すべての幸福な空間は別離の子か孫であり、
かれらはその空間を驚嘆しつつ通ってゆく。そして変身したダフネは
わが身を月桂樹のように感じてから、君が風に変わることを願っている。
(生野幸吉訳)
「第二部・12」を理解するために、生野幸吉訳を追加しました。
図形の高揚する弧のうちで、回転点をなによりも愛している。
オルフォイスの世界の連関(ベツーク)は、純粋な図形(フィグール)となって見られる。「第一部・11&12」にはこのような関連があるようです。
(11の4連目)
星と星との結び合い、それは眼のまどわしなのだ。
とはいえ今しばらくは、図形を信ずることを
よろこびとせよ。それで足りよう。
(12の1連目)
われらを結びたがる精霊に幸あれ。
まこと、われらはさまざまな図形に生きる。
そしてわれらは真の一日と並び、
時計は小きざみの足であゆんでいる。
泉となってそそぐものだけ、認識は認知する。
「認識」あるいは「承認」でもよいが、これは神の承認ではないようです。
* * *
昨夜は、この詩篇に悩みつつベッドに潜り込み、気分を変えようと「ヴァレリー」(・・・・・・と言っても、この詩人からリルケは大きな影響を受けていますが・・・。)の詩集を読んでいましたら、なんとも驚きました。まるでわたくしの迷い児のような気分を導くかのようにこの詩に出会いました。これもソネットだということも嬉しい一致でした。
オルフェー ポールヴァレリー・旧詩帖より
天人花の木叢の下に、オルフェーを俺は心に構成する、
驚異の人だ・・・・・・純粋な虚空円形劇場から 火が落下する。
火は 禿山を 荘厳な戦捷牌の相(すがた)に変え、
其処から 神の鳴り響く行為(しわざ)が天に立ち昇る。
若しこの神が歌うなら、絶対至上の風景を崩壊させる。
太陽は 不動の石の運動の恐怖を眺める。
未だ嘗つて聞かぬ嘆きが、聖殿の 諧調的な
黄金の 燦々と耀く高い光の壁を 喚起する。
神は歌ふ、光の眩い天空の縁に坐って、オルフェーは。
巌は 動き、よろめいて、妖精と化した石は 一々(ひとつびとつ)
碧空に向かって熱に浮かされて 新しい重さを感じる。
半(なかば)裸体の大寺院の夕暮が 光の飛躍を水に涵(ひた)して、
神その人は、金色の光の中で、竪琴の上に、偉大な
賛美歌の無限の霊に我とわが身を序列して融合させる。
「虚空円形劇場」とは青空のこと。「火」とは太陽の光。
その炎のなかで変容を誇るかに物は君から遠のく。
地上を統(す)べる、かの企図画的な精神は
図形の高揚する弧のうちで、回転点をなによりも愛している。
閉ざして停滞するものは、すでに凝固のうちにいる。
みすぼらしい灰いろの保護色をよそい、身を安全と妄想するのか?
待て、遠くから最も固い何者かが、硬(こわ)ばることを警めている。
災いなるかな――、不在のハンマーが振りあげられる!
泉となってそそぐものだけ、認識は認知する。
そして嬉々として認識はかれを伴(つ)れ、はれやかな創造物の間をみちびく。
しばしば発端とともに終わり、終結とともに始まる創造の。
すべての幸福な空間は別離の子か孫であり、
かれらはその空間を驚嘆しつつ通ってゆく。そして変身したダフネは
わが身を月桂樹のように感じてから、君が風に変わることを願っている。
(生野幸吉訳)
「第二部・12」を理解するために、生野幸吉訳を追加しました。
図形の高揚する弧のうちで、回転点をなによりも愛している。
オルフォイスの世界の連関(ベツーク)は、純粋な図形(フィグール)となって見られる。「第一部・11&12」にはこのような関連があるようです。
(11の4連目)
星と星との結び合い、それは眼のまどわしなのだ。
とはいえ今しばらくは、図形を信ずることを
よろこびとせよ。それで足りよう。
(12の1連目)
われらを結びたがる精霊に幸あれ。
まこと、われらはさまざまな図形に生きる。
そしてわれらは真の一日と並び、
時計は小きざみの足であゆんでいる。
泉となってそそぐものだけ、認識は認知する。
「認識」あるいは「承認」でもよいが、これは神の承認ではないようです。
* * *
昨夜は、この詩篇に悩みつつベッドに潜り込み、気分を変えようと「ヴァレリー」(・・・・・・と言っても、この詩人からリルケは大きな影響を受けていますが・・・。)の詩集を読んでいましたら、なんとも驚きました。まるでわたくしの迷い児のような気分を導くかのようにこの詩に出会いました。これもソネットだということも嬉しい一致でした。
オルフェー ポールヴァレリー・旧詩帖より
天人花の木叢の下に、オルフェーを俺は心に構成する、
驚異の人だ・・・・・・純粋な虚空円形劇場から 火が落下する。
火は 禿山を 荘厳な戦捷牌の相(すがた)に変え、
其処から 神の鳴り響く行為(しわざ)が天に立ち昇る。
若しこの神が歌うなら、絶対至上の風景を崩壊させる。
太陽は 不動の石の運動の恐怖を眺める。
未だ嘗つて聞かぬ嘆きが、聖殿の 諧調的な
黄金の 燦々と耀く高い光の壁を 喚起する。
神は歌ふ、光の眩い天空の縁に坐って、オルフェーは。
巌は 動き、よろめいて、妖精と化した石は 一々(ひとつびとつ)
碧空に向かって熱に浮かされて 新しい重さを感じる。
半(なかば)裸体の大寺院の夕暮が 光の飛躍を水に涵(ひた)して、
神その人は、金色の光の中で、竪琴の上に、偉大な
賛美歌の無限の霊に我とわが身を序列して融合させる。
「虚空円形劇場」とは青空のこと。「火」とは太陽の光。