ふくろう日記・別室

日々の備忘録です。

かたちだけの愛 平野啓一郎

2011-05-09 14:06:14 | Book


この小説は読売新聞夕刊に、2009年7月~2010年7月までの間に連載されたものに、大幅に加筆修正されたものです。
平野啓一郎の小説を久し振りに読みましたが、新聞連載という条件がこのような小説になったのだろうか?
連続テレビドラマに出来そうなストーリー展開で、以前の彼の小説とは異質な感がありました。

相良郁哉(あいらいくや):プロダクト・デザイナー
叶世久美子(かなせくみこ):タレント(または、美脚の女王) 本名「中村久美」
淡谷大三冶(あわやだいさんじ←あわや大惨事?):義足の製作者
原田紫づ香:臨海ひかりの病院の院長

思わず小説のキャストを書いてしまった(^^)。

写真家「ニック・ナイトが撮影した「エイミー・マリンズ」

「エイミー・マリンズ」とは義足のモデルのようです。

「エイミー・マリンズ: 逆境から生まれる機会」

小説を読んだ後で、ネット検索するということを初めて経験しました。たくさんヒットしますが、このくらいまでで。。。


物語は、叶世久美子が交通事故に遭遇し、その現場のすぐ近くのデザイン事務所にいた相良郁哉が救出および救急車の手配をしたことに始まる。
「美脚の女王」と称賛されていたタレントの叶世久美子が片足切断という不幸に見舞われる。
その彼女の再起をはかるべく、原田紫づ香病院長の指揮のもと、1つのチームが作られることになる。
原田紫づ香は、画期的な病院構想を実現させた女性で、その「臨海ひかりの病院」の設備のデザインを手掛けたのは相良郁哉でした。
そこに義足のベテラン技術者の淡谷大三冶、その他ドクター、家族、専属事務所長など。
「エイミー・マリンズ」のように、という方向に向かって、叶世久美子の再起への道が始まる。

相良郁哉と叶世久美子の恋。
叶世久美子の元愛人のいやがらせ、彼女の不幸を売り物にしようとした暴露写真集制作からの奪還。
そして、フランスのデザイナーからの出演依頼でパリの舞台に立ち、美しく歩くまでのストーリーでした。

「平野啓一郎公式ブログ」に書かれた東日本大震災の被災者の方々へのメッセージと共通するものがあります。

「かたちだけの愛」というタイトルはなにを言いたかったのだろうか?(以下、引用。)

『相手のなかに献身と身勝手さ、思いやりと独りよがり、奉仕と要求を、両(ふたつ)ながらに発見することであり、
 完全な身勝手さに愛がないのと同様に、完全な献身にもまた愛はないのだった。』

(2010年初版・中央公論社刊)



《追記》

同時進行で、古井由吉の「人生の色気・2009年刊」というエッセー集を読んでいます。(以下、引用。)

『いまに至る若い人たちの文学のはしりは「第三の新人」です。ほとんどの人たちが、消費型の文学だと思います。
 三島(由紀夫)さんを継いだ若い人といえば、島田雅彦さんが頑張っているくらいでしょう。
 三島さんは産業や文化の根っこにあるものに対峙しようとしましたが、「第三の新人」は
 出来上がったものを享受し巧みな技巧で表現するわけで、いわば、日本文化のセレブリティーの先駆けです。』

この本につきましては、後日書きます。